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それはロックオン警告なんてものではなく、ここに攻撃が来るぞというもっと分かり易い物だった。
躱す、躱す、躱す。 ミサイルも引き付けてマシンピストルで次々と撃墜。
合間にバトルライフルにスイッチして下へと攻撃。 敵の攻撃を掻い潜って基地の上空へ。
本来ならセンサーシステムで簡単に捉えきれない相手どころか作戦目的から逆算した優先順位の高いターゲットが表示されて自動でロックオン。
最優先はヨシナリ達に向けて景気よくミサイルをばら撒いているエネミー。
カブトガニのようなデザインのエネミーは背面に大量のミサイルを抱えており、それが密集して次々と上空に向かって打ち上げていた。 ホーコートは即座にバトルライフルを連射。
ミサイルという爆発物が剥き出しのエネミーはライフル弾の直撃を受けるとそのまま誘爆。
とにかく撃ちまって執拗にカブトガニを狙う。
流石に看過できなかったのか敵性トルーパーが直接叩きに空中に上がって来る。
レーダーと視界に次々と敵機の詳細情報が表示。
ボランティアID:VS-5478562。 タイプスレイブ、脅威度D
ボランティアID:VV-6682145。 タイプサクリファイス、脅威度C
脅威度E、E、D、C。 次々と脅威度と撃破優先推奨度という謎のパラメーターが表示される。
それに従って対処を選択。
D以下の相手はそこまで大した事がない事もあってマシンピストルで充分に処理できる。
C以上はしっかりと躱してくる事もあって行動予測を確認し、回避先をしっかりと見極めた後にバトルライフルで撃破。 攻撃を躱しながらその間隙を突く形で敵を削っていく。
攻撃の軌道だけでなく敵機の挙動までもが見える。
それにより視界が埋まるが、ホーコートの脳はその風景を何の問題もないと認識していた。
不思議な感覚だ。 なんでもできるような万能感もあったが、頭の一部は酷く冷めている。
敵を撃破した高揚もなく、敵の攻撃に対しても何の感情も浮かばなかった。
焦りも興奮もなく。 あるのは躱せるか躱せないか。
敵の高機動機が突撃銃を連射しながら突っ込んで来たが、躱しながらすれ違い際にニードルを撃ち込んでスタンさせ、突撃銃を奪い取ると蹴り飛ばしながら銃撃。
推進装置を破壊して墜落させた後、奪った銃を捨ててブレードを抜く。
マシンピストルとバトルライフルの残弾が心許なくなってきたからだ。
振り返ると味方が徐々に押し込んで来た事もあってそろそろ空中に留まるよりは地上のミサイル発射を担っているエネミーの処理を優先するべきだといった指示が表示される。
ホーコートは機体を急降下させ、基地の外へとミサイルを撃ち込んでいるエネミー群へと襲い掛かった。
「おいおい、マジか」
ヴルトムは敵陣を切り崩すホーコートを見て思わず呟く。
「星座盤」とはそこそこの付き合いで、ホーコートの事も知ってはいたが、パッとしないヒラのメンバーぐらいの印象だった。 だが、目の前の彼はその印象からは大きく逸脱している。
的確な射撃、機動で敵の攻撃を引きつけ、味方の進軍を助け、ヴルトム達が追い付いてきた所でやや強引に突破し、ミサイルを抱えているエネミーの排除を始めた。
シックスセンス持ちが不在という事もあってセンサー系の感度も余りよろしくない。
今回に備えてそこそこ良いのを揃えたつもりではあったが、シックスセンスに比べると数段劣る。
本音を言えばヴルトムもシックスセンスを買いたいと思ってはいたのだが、Pでしか買えない装備は中々に購入に踏み切らせてくれない。
――結局、暗視と動体に強い物に変えただけだったが。
当初の予定ではポンポンかヨシナリのどちらかが付いて来てくれる予定だったのだが、二人ともあの化け物みたいな敵の相手で忙しくてそれどころではない。
もしかしたら予定にない事が起こるんじゃないかと警戒はしていたが、開始数秒でここまで狂うのは流石に想定できなかった。 それに初手で襲ってきた敵は前の防衛戦の時に出て来た奴だ。
ランカーを次々と屠る本物の化け物でヴルトムとしては二度と会いたくない相手ではあったが、ヨシナリ達からすればそうでもなかったようだ。
あの連中は強敵を見ると嬉々として襲い掛かるのは何なんだろうか?
少なくともヴルトムから見た「星座盤」はそういった集まりだった。
付いて行けないと思いつつも勝てば美味しい思いができる事もあって離れる事が出来ないのだ。
「よし! 行け行け、突っ込め!」
頭ではそんな事を考えてはいたが、表には出さずに行けるぞと味方を鼓舞する。
弾をばら撒きながら徐々に戦線を押し上げて前進。
元々、通信設備は拠点の中でも陥落のハードルは低い。
代わりに落とした時のメリットもまた低いのだが。
元々、通信設備は他のエネミーへの援軍要請、通信妨害などを担っている事もあってイベント戦の時は数を減らしておかないと足並みを揃える際に邪魔になる場所ではあったのだ。
ただ、ダウングレードしたこのミッションではそこまでの人数が居らず、通信を妨害されたとしても問題は少ない。 その為、スコア稼ぎ以上の意味があまりなかった。
作戦会議でも発見した場合の陥落は任意となっていたぐらいだ。
「まぁ、今回に関してはそうもいかないんだけどな」
機体を加速させ、敵の防衛線を突破。
ミサイルを撒いているエネミーを捕捉と同時に弾帯付きの重機関銃の引き金を引く。
このミッションの為にわざわざ新調した銃だけあってそこそこの装甲で固めている印象のエネミーが次々と穴だらけになる。 元々、ミサイルを抱えている関係で装甲さえ貫ければ撃破は容易だ。
そしてエネミーは撃破数に応じて報酬が発生する。 つまりは――
「美味しい相手って事だよなぁ!」
薙ぎ払うように銃身を振り回し、吐き出された弾と熱せられた薬莢がこの闇と極寒の大地に散らばる。
次々と爆発していくエネミーを見れば中々に爽快な気持ちになった。
「はっはぁ! 最低でも銃の元は取るぞぉ!」
そんな事を言いながらひたすらに弾をばら撒き続ける。
大量のエネミーを殲滅する事が必要な展開になる事は読めていたのだ。
背面のバックパックには精製機能と大量の実弾を格納している。
その数、何と驚異の3000発だ。
銃身が保たなくなる事もあっていつまでもは撃てないが、大量にばら撒ける。
次々と爆散する敵機、一掃する快感にヴルトムは笑う。
誤字報告いつもありがとうございます。
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