2話
「そんな事より…」
「話す?言いにくいわよ…先輩呼び出そ」
「えっ‼この天気の中っすか…流石にそれは、むつさん鬼ですか?」
「昨日も今日みたいな天気だったじゃん。大丈夫じゃない?先輩来れるなら、あたしらも帰れるよ」
よし決まりと言うと、むつは電話を手にして何も見ずに番号を押していく。液晶に表示されていく番号は、携帯の物だか、むつはそれを暗記しているようだった。凄い、と思いながら祐斗はむつの指先を見ていた。番号を覚えているのも凄いが、人に無理を頼む図々しさと、そういう時の行動力はむつにしか無いだろう。
「あ、もしもーし?」
『お、早いな…もう話したか?』
「まぁだ。ってか、言えるはずもなく…先輩が話してよ。それも仕事でしょ?」
『まぁな…でもなぁ…言いにくくねぇか?だって、弟さん未成年だろ?未成年が未成年と一緒に出てきてるってなると…』
「まぁね。ってか、知ってたの?」
『あ?湯野さんの弟さんの捜索願いか?知ってた。お兄さんが、こっちに居るなら、来るかもしれないからって…でもな、お兄さんを頼って出てきたんなら、こっちにまで見掛けたら、何て顔写真送ってこなくてもって感じじゃないか?…まぁ、いいや。そっち行く。この天気じゃ帰れなくなってるだろ?ついでに送ってやるからな。待ってろ』
「はーい」
『…迎えにきてって素直に言えよ』
「お迎えに来て」
『…腹立つ‼まぁいいや、じゃあ後でな』




