2-35.圧倒的実力差
(´▽`*)気まぐれトーカになります!
( *´艸`)暇つぶし程度によんでネ!
「ハハハハハ!くたばれ無礼者の平民風情がぁあ! これが我が最強の魔法!【暴風炎乱舞】だぁあああ!! 消し炭になるがいいわぁあ!!」
上級風魔法【暴風乱舞】とサザーンの持つ火炎の付与がされた魔法剣から繰り出された炎魔法の合成魔法が大きな巨大な炎の竜巻となってアレクへと襲い掛かる。
“すすすす、凄すぎます! 今年の一年生は優秀な者が多いと聞きましたが!まさかBクラスに思わぬ伏兵が隠れておりました!さすがの序列7位とは言えアレク選手でも、これはひとたまりもありません! 誰がこんなことを想定したでしょうか!まさかの大番狂わせだぁああ!! アレク選手絶体絶命のピンチ!”
「おおおお!すごいぞぉ!!」
「さすがわザウバーン侯爵家の次期当主だ!」
「これでこそ貴族だあああ!」
「す、凄いぞサザーン!!」
実況の声に釣られて観客たちも一斉に沸きだす。アレクとサザーンの決闘戦は明らかにアレクの圧勝気味で終わると誰もが思っていたが、ここにきてのサザーンの切り札の魔法。それは実況も観客の度肝を抜くには十分すぎるインパクトある魔法であった。
学園内にある全ての訓練場・闘技場には安全対策が取られている。一定以上の被害を受けると外に弾かれる・致命傷を受けたと判断されたら外に弾かれる、という安全対策がしっかりと取られているのだ。それは当然観客席に座っている生徒たちにもきちんと用意されている。
闘技場と観客席の間には魔法障壁が展開されており、障壁にぶつかった魔法は『魔力霧散』の付与により魔法が無効化されるのだ。そのため、サザーンやアレクがどんなに高威力・広範囲の魔法を放とうとも観客に被害が及ぶことはないのだ。
「リア!いい加減に話しなさいよ! 確かに安全対策が取られているとはいえ、あの規模の魔法を受ければ死にはしないだろうけど、なにかしらの障害が出る可能性が高いのよ! ちょっとアルもトニーもリアを説得してよ!」
アクアリアによって行く手を阻まれているセシリアが副会長のアルフレッドと会計のトニーに助けを求めるが、二人とも動こうとしない。トニーはおろおろとしており、アルフレッドに至ってはニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら闘技場を見ている。
「だからセシリア姉さん! アレクくんなら大丈夫ですって!」
セシリアを止めているアクアリアが必死にセシリアに言い聞かせようとするが、一向に聞き入れようとしないセシリア。それもそのはず、セシリアはこの学園の生徒会長であり、学園の代表なのだ。学園で起きたことは生徒の自己責任だが、セシリアはアクアリアと同じくらい責任感溢れる人なのだ。目の前でケガ人が出ることが分かっている決闘戦を止めずにはいられない質なのだ。
「セシリア! 俺もリアの意見に賛成だ。おそらくあのアレクって奴は大丈夫だろ」
一向に動きを止めないセシリアにアルフレッドが声を掛ける。
「アル! 私は生徒会長として生徒の安全と秩序を守る責任があるのです!」
「だからそこをはき違えるなよ。 生徒同士のトラブルに介入するのは認められているが、訓練や模擬戦・決闘戦によって生徒が負傷した場合はそれはすべて生徒の自己責任だ。それがこの実力学園の校則だろ?」
「…っ‼ だ、だからといって!みすみす負傷するのを見守れって言うの!」
「なぁリア、なんでアイツが大丈夫ってわかるんだ? その根拠はなんだ?」
「あ、えっと… なんて言えばいいのかな。 そのアレクくんは凄く頼れそうな人なの」
「なんじゃそりゃ… あのアレクって奴と同じクラスなんだろ?話したことはないのか?」
「…入学式の後に一度だけ話したことあるけど、それっきり話したことないの… 話しかけようとしてもいつの間にかアレクくん、パッとその場から消えるようにいなくなっちゃうの」
「余計分からなくなってきたぞ… それでなんで大丈夫って根拠に繋がるんだ?」
「分からないけど…なんとなくアレクくんから凄く懐かしい雰囲気を感じるんだ。それに凄く…落ち着く。まだよく知らないけど、どこか何かが引っかかるの… と、ともかく!アレクくんなら大丈夫!そう私は思うの!」
あまりにも必死に話し始めたアクアリアにセシリアも動きを止める。聞いた張本人のアルフレッドも良く分からないといった感じになったが、まぁアクアリアが言うなら大丈夫なんだろうと納得した。それにアルフレッドはアレクから感じる異様な感じに気づいていたのだ。
(リアは鑑定を持ってねぇけど、それを直感で補う人を見る眼は持っている。まず間違いなく相手を読み違えるようなことをする奴じゃない。 それに…あのアレクって平民出身の奴、どこか異様な雰囲気を纏ってるんだよな… 明らかに纏う雰囲気と闘級が嚙み合ってねぇ。あの雰囲気は歴戦の戦士が纏うソレと同じだ… 一体何者なんだあの平民は…)
アルフレッドは王族に珍しく野生人のような人なのだ。
なに王城は息苦しい、なに王都には刺激が少ないと半年以上森や危険地帯を歩き回る根っからの野生人なのだ。冒険者としての顔も持っており、王都では第一王子のアーサーよりも有名な存在なのだ。今は学園に通っているが「学園を卒業したら正式に王族を辞めて冒険者として生きていく!」とまで言い出している王族にしては珍しすぎる珍獣のような王子なのだ。
それゆえにアルフレッドは優れた五感能力に野生の感ともいえる直感を持ち合わせているのだ。一目見れば相手がどこまでやれるか把握することが出来る。さらに鑑定技能も持って居り、アルフレッドは自身の経験と技能から裏打ちされたある意味確信ともいえる判断力を持っているのだ。
それゆえに今絶体絶命のピンチに立たされているアレクの姿を見ても助けるべきだ、とまったく感じないのだ。どこか謎の安心感を持てる奇妙な奴だと感じているのだ。
「…リアのお気に入りの平民くんがどれだけやれるか見てみようぜ」
「……アルがそういうなら、信じます。 一応トニーくん治癒魔法の準備だけはしておいてね」
「あ、分かりました会長!」
「ちょ!お気に入りって何よ!お気に入りって!!」
※※※
(さすがに、ちょっと吃驚したわ! まさかここまでの魔法を放てるとは…)
アレクは炎を纏ったまるで台風のような魔法が差し迫っているにも関わらず、のんきにサザーンのことを考えていた。確かにサザーンの実力は相当なものだったが、まさかここまで大規模な魔法を発動できるとは全く思ってなかったのだ。
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【名前】サザーン=フォン=ザウバーン
【称号】侯爵家当主候補
【闘級】3.620
【属性】無 風 水
【贈与】魔力強化《強》
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サザーンを改めて軽く鑑定するが、前回初めてあった時より闘級が跳ね上がっている。
講堂裏で初めて会った時の闘級は2000ポッチしかなかったのに、今は3000を超えている。あれから努力を重ねたのかな、と思ったがどうやら違ったようだ。
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【贈与】魔力強化《強》
所持者の魔力を一定時間強化する。
強化後は著しく魔力が低下するが、休養取れば元に戻る。
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【贈与】の効果で上級魔法を放てるようにまでなっただけのようだ。
それも時間制限付きの強化のようだ。
「ハァハァ…これで、終わり、だぁああ! 自分の愚か、さを知って、後悔するがいい… 思いあがった平民風情がぁあああ! アーハッハッハッハッハッハ‼」
ゼェゼェと荒い呼吸をしながらも自分の勝利を確信したザウバーンが勝利の雄たけびとばかりに高笑いを決め込んでいる。確かに並みの生徒じゃこの魔法で一発K.O.だろうけど、Sクラスの生徒でこの魔法にやられる奴はいないと思う。
そもそも魔法発動までに長ったらしい詠唱を必要としている時点でまず阻止されますね。っていうか詠唱の暇すらもらえないよ。Sクラスの必須条件として最低限無詠唱で魔法放てるようにならないとまず実践じゃ使い物にならないね。
あの初授業やその後の授業で合成魔法を使ったアイリスにアクアリアでさえも無詠唱で合成魔法を使って見せた。アイリスはまだぎこちなく少し発動まで時間がかかったが、それでも僅か十秒ほどで発射まで可能な段階まで完成させた。それに比べザウバーンは詠唱にたっぷりと三十秒以上かけ、さらに詠唱終わってからも魔力制御に十五秒、発射できる段階まで軽く一分は必要のようだ。
まず実践、そもそも模擬戦じゃ使い物にならない大技だ。
まぁ見世物としては及第点じゃないかな。
「……やっぱり飽きたわ…」
ここでようやくアレクに動きが見えた。
いままでずっと決闘戦始まってからずっと腕組み状態で仁王立ち姿を決めていたアレクが始めてその体制を崩した。崩した後も棒立ちの状態であったものの、脇に挟んであった木刀を右手で持った。
ゆったりとした動きに実況も観客席にいた生徒たちも「アイツ何やってんだ?」と疑問を浮かべる。早くその場から逃げろと心配する者や一体何をする気なのかと期待の表情を受けべる者など三者三様の反応が見て取れる。
しかしその生徒たちを意にも返さず棒立ちのまま木剣を下段に構える。
一体何をするつもりなのだと全員がアレクの一挙手一投足に気を配る。
次の瞬間、アレクが初めて剣を振るった。
ゴォオオオオオオオ―――――――――――――!!!!
と凄まじい空気を斬る音と共に下段から一気に木刀が振り上げられた。
その一撃から生み出された強烈な斬撃は寸前まで迫っていたサザーンの炎・風じ上級合成魔法を軽く消し飛ばした。いや斬り裂いたというべきか、一瞬にして跡形もなく消し飛ばしてしまった。
“…は?”
「「「「……は?」」」」
唖然、望外、存外、慮外、意想外…
実況者・観客者全員の度肝を抜いた驚嘆の一撃であった。
それは打ち破られたサザーンも同じ表情だった。
「な、ななな… 何を、した…!? ば、化け物か…!?」
驚きのあまり呂律の回っていないサザーンの質問にアレクがぶっきらぼうに答える。
「…飽きたから斬った」
「な、なっ‼ そ、そんなことできるはずがないだろっ‼ ほら吹きもいい加減にするがいい!なにか卑怯な手を使ったんだな!魔道具か!古代遺産か! 貴様のような卑怯者に私は負けるわけにはいかないのだ! 次期当主として貴族の矜持を護なればならないのだ!」
ただぶっきらぼうに答えただけなのに勝手にサザーンがヒートアップしていく。
それを興味なさそうに見るアレク。
「き、貴様のような平民風情がそんな貴重な古代遺産を持っていていいはずがない! 貴様のような平民が!無能が!家畜以下の存在が!私のような由緒正しい家柄の者が!侯爵家の次期当主で私が! 貴様のような下賎の平民ごときに負けるわけにはいかないんだよ!」
「……もう十分お前の底は知れたわ…」
「な、なんだと!? き、貴様!まだ私を愚弄するのか!この不敬者がぁ!」
「俺は貴族じゃないから、お前のいうその貴族の矜持って奴も、由緒正しいお家柄ってのもまったく理解できないし興味も沸かないんだわ。 ただ少なくとも、お前が見栄や誇りに拘ってる時点でお前に未来はないな」
「ぐぬぬ… またしても貴族を侮辱する言動…っ‼ ゆ、赦されないぞ!」
「見栄貼るのも結構、虚言吐くのも結構…お前の大切な貴族としての誇りを持つのも好きにすればいいさ… それをバカにする気はないよ? だけどな、平民だからといって差別している時点でお前の底は知れてんだよ」
「…っ‼ き、貴様ぁああああ!!」
「お前は確か『Sクラスに入りたい』って俺に突っかかって来たよな」
「そ、それがどうした!」
「別にそれはいいことだと思うよ。向上心があって非常によろしい! だけどな…自分より弱い者従えて、身分が低いだの下賎などと相手と同じ目線に立って考えようともしない視野の狭いお前がSクラスになれると本気で思っているのか?」
「わ、私は貴族だぞ! 由緒正しき家の次期当主だぞ! わ、私は偉いんだ!偉いのだぞ!」
「……まぁこれだけ言ってまだ気づかないとはもうお前には悉く飽きたわ」
強くなれるチャンスは与えた。
しっかりと道は示したつもりだ。
しかしこのバカはそれを捨てた。
強くなるための鍵を捨てた。
そんなバカに構ってやるほど俺は暇じゃない。
救ってやるほど聖人じゃない。
もうコイツは――――――――――強くはなれない、永遠に。
「そういえばお前は俺のことを『化物』だといったな?」
「そ、それがどうした卑怯者が! どうせ卑怯な手段でも使ったのだろう!」
「フフフ…あぁバカらし。 俺の序列は覚えているかどうか知らねぇが、俺は序列七位だぞ? つまり俺より強い者があと六人もいるんだぜ?」
「…っ‼」
「俺を化物と例えた時点でお前の底が知れた。 Sクラスに所属することだけを目標にしている者に、この先の未来はない‼ それがお前の限界となり蓋となり扉だ! その扉を開けるための鍵をお前は捨てたんだよ!」
「だ、黙れええええええええ!!!」
「もうお前は強くなれない! 一生な!」
「黙れと言っているんだ!この平民風情がぁあああああああ!」
「強くなりたかったら――――――――――――」
「黙れれれれれええええええ!その口を閉じろろろろろ!!!」
サザーンが手に持った魔法剣を発動させて斬りかかってくる。
その眼は血走っており、アレクに対する憎悪や殺意が漏れ出ている。
しかしアレクは動こうとせず木剣をあろうことか異空間収納に閉まってしまった。
「しねぇえええええええ! 平民風情がぁあああああああ!!!!」
サザーンが無防備なアレクに斬りかかる。
観客たちも実況もヤバい!・やられる!と思った。
が、しかし…
「自分の在り方を見つめ直すんだな… このオォバカヤロォー!!」
サザーンの振り下ろされる剣を寸前で躱しカウンターでサザーンの顔面に目掛けて拳を放つが、サザーンはそのカウンターを避け切ることが出来ずモロに顔面に命中し、そのまま壁まで吹き飛ばされる。
ボコォ――――――ンッ‼
いい音立ててサザーンが壁にめり込みそのまま気を失い沈黙した。
「視野の狭いお前が上がってこれるほど、Sクラスは甘くはないっ‼」
“し、試合終了ォオオオオオ‼ しょ、勝者は! 圧倒的実力差を見せてくれたSクラス所属、序列七位の…アレク選手のショーーーーリィイイイ!!!”
「「「「「「おおおおおおおおお!!!!!」」」」」」
実況の試合終了のコールと勝者の発表、観客たちの大きな大歓声の中、アレクの初決闘戦は幕を閉じた。
バイト終わったの18時…
執筆始めたの19時
執筆終わったの21時
一話に約3時間かかった…。
みなさんどのくらいで執筆しているのでしょうか…?
私のこれは早い方なのか、それとも遅い方なのか分からないわ…。




