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2-31.ロイスの特訓

( ̄▽ ̄)本日二話目の気まぐれトーカです!

(*´ω`)ふふふふ♪


「ホントッ… 強いなぁアレクは」


観客席と訓練場を仕切る柵に背中を預けてへたり込むランバート。

外傷はないが、肉体疲労と精神疲労が目に見えてわかるほど表情がすぐれない様子だった。


「いやいや… ランバートも中々強かったぞ!」


これは本当だ。

あの自称Aランク冒険者のダズよりも確実に強いだろう。


「ははっ 嫌味にしか聞こえないわ… けど、なんかすげぇスッキリしたわ。 ありがとな」


負かした相手にお礼を言われるとなんか、その無図痒いな。


「なぁアレク… 今気になったんだけどよ」

「ん?」

「なんとなくだけど、アレクってめっちゃ強いだろ」

「…なんでそう思ったんだ?」

「いやぁアイリスとの模擬戦を見た時から、なんか変な違和感感じてたんだよ」


何が言いたいのか分らなかった。

アレクが首を傾げながら座り込んでいるランバートを見る。


「…おまえ本気で戦ってないだろ」

「……」

「…別に本気で戦えとか言うつもりはないし、今の模擬戦で身に染みてわかったから戦ってほしいとは思わねぇ。 なんとなくだけどよ、おそらく殿下よりもアレクの方が強いだろ。そのアレクがなんで首席じゃなく『七席』なのか俺には分からないんだわ」

「…俺の実力なんてたかが知れてるよ。ただ人より実践経験が豊富なだけさ」

「…まぁそれで今はいいや。強い奴と友達になれたのはラッキーだしっ!」


ランバートってこんなキャラだったかな。

もしかしてバカに見えて実は勘が鋭いタイプか?猫かぶってるのか!まさか、別人…!?


「…アレクぅ!おまえ俺のこと今疑ってるだろー!」

「な、なんでバレた!?」

「ふつうに顔に出てるわ! 気づかないのおまえくらいなものじゃないか?」


俺ってそんなに表情に出やすいのか…


「あ、今ちょうど気になったんだけどよ…」


「今度はなんだ…?」


「————————何の目的があってこの学園に来たんだ?」


「……そんなこと聞いてどうするんだ?」


暫くアレクとランバートの無言の睨み合いが続く。

しかしその睨み合いに終止符を打ったのは意外にもランバートだった。



「…やっぱいいよ。なんか話せないような内容みたいだしな。 それよりそろそろロイスが来るんじゃないか?」


ランバートの声にはっと現実に戻る。

学園の中心部にある講堂の上に設置された鐘がゴーンッゴーーンッと二回なった。本日の学園授業終了の合図を知らせる鐘だ。これが鳴ったという事は、ランバートの言う通りもうじき授業を終えたロイスがやってくるのだろう。


「そうだな。授業も終わったみたいだしロイスもそろそろ来るかな」

「今日は俺クタクタだから… ロイスの訓練にはアレクがやってくれよー」

「クタクタになったのは自業自得だろ!」

「そりゃ強い奴にあったら全力を出したくなるのが男ってもんだろっ!」

「そんなの知らねぇ―よ!」


些細な言い合いが始まりそうになるが、お互いがお互いに馬鹿らしくなって笑い出す。

さてそろそろ、授業を終えたロイスが訓練場にやってくるだろうと思い、今日のメニューを考える。


昨日のランバートとの模擬戦でロイスの実力はある程度分かった。

まったくもって基礎がなってない。そして何より弱すぎる。

貧弱、脆弱、虚弱… 

そんな言葉が似合いそうな奴だと分かった。


ロイス自身が強くなりたいと願っているので、鍛えてやろうと思ったのだが、考えていたよりも重症だったのでどんなメニューで鍛えていくか決めかねていた。ある程度基礎が出来ているなら、師匠が俺にやったような実戦形式でひたすら戦いを覚えるやり方をやってもいいのだけど、まったく基礎が出来ていないうちにやると、ロイスがつぶれてしまう。


「…さてどうするかなー?」

「なんだ?昨日みたいな模擬戦形式で叩き込めばいいんじゃね?」

「アホか!基礎も出来てない奴にそれをしても一方的に叩きのめされて終わるだけだ」

「それなら、ロイスにひたすら攻撃させてアレクが避けまくればいいんじゃね?」

「俺は別にそれでもかまわんけど、ロイスにはおそらく無理だな…」

「なんでだ? ロイスは弱いけど根性はあるぜ?」

「実戦形式である模擬戦はある程度の戦闘経験があってこそ必要になってくる訓練であって、まったくのゼロの状態のロイスにやっても意味があるのか分からないんだよな…」


昨日のロイスとランバートの模擬戦を見た限り、ロイスに戦闘経験があるとはとても思えなかった。片手剣を使っていたが、ただ振り回しているだけの印象を受けた。


さて、どうしたもんかな?



◇◇◇



「ハァハァ… す、すいません!遅れました!」


息を切らしたロイスが訓練場に入ってくる。

授業終了の鐘が鳴ってから十分後の到着だった。


「おせーぞロイス!」


ランバートがロイスに声を掛ける。


「す、すいませんっ!できる限り急いで走ってきたんですけど…」

「まぁいいや!今日は俺じゃなくアレクが相手してくれるから頑張れよ!」

「あ、分かりました! アレクさんよろしくお願いしますっ!」

「お、おう。よろしくな!」


さっきまで遅れ来て申し訳なさそうな顔をしていたのに、一瞬で晴れた顔になりやがった。


「と、とりあえず… 今日はロイスの才能を見せてもらおうと持ってな」

「僕の… 才能ですか?」

「そう、具体的には魔法と剣術かな。どこまでできるか見せてもらおうって思って」


ステイタス鑑定である程度の強さの予測は出来ているが、一応念のためにロイス自身がどこまで自覚をもっているかの確認を含めてやってもらう。


「え、えっと… その、僕…魔法使ったことないです…」


「「…はぁ!?」」


「僕は… そ、その…魔法使ったことない、です。ご、ごめんなさい」


魔眼で【闘級】部分だけに鑑定を絞って内訳を見てみる。

==========

【闘級】292

武力:6

気力:14

知力:270

魔力:2

==========


うん。分かってたけど、思ってた以上に本当に酷いな。やっぱりこいつは、武官科から文官科に転属科させてやる方が正しい選択では無いのか?


昨日のランバートとの模擬戦で一応【闘級】が少しだけ上昇しているようだが、あれだけ打ち合ってこれだけしか上がっていないってことはロイスに武力の才能が無いとしか思えないんだけど。一回真面目に『看破の魔眼』の本領発揮でロイスの【潜在能力】から【成長予測】まで全部計測してみようかな。



「じゃ、とりあえず… 回避の訓練から始めるか」


「回避の訓練ですか?」


ロイスが俺の言葉を繰り返して聞き返す。


「回避の訓練で躰の動作感覚と重心バランスを知る訓練だな。自分がどれだけ動けるか、まずはロイス自身で自覚してみることから始めようか。 俺がテキトーに魔力弾放つから、とにかく避けまくれ!」


「わ、わかりました!」


「じゃ、始めるぞっ! そらよっと!」


指先から空気を圧縮した空気弾のような魔法を発射する。大きさは視覚し、よけやすいようにドッジボールくらいの大きさにしている。ちなみに、この魔法に攻撃力はほぼ無いに等しい。当たっても少し後ろに吹っ飛ぶ程度だ。言うなれば突風に吹かれて転ぶ程度だ。


「ほいっ」

「そらっ」

「ほらよっと!」


一発目の魔法を軽くよけたロイスに向かって今度は三つ同時に放つ。

ロイスはそれをしっかりと躱していく。

まぁ躱せて当たり前の速度なんだけどな。


次は空気弾を倍の六個、先ほどより少しスピードを上げて時間差を少し付けて発射する。


「うわっ! あ、あぶなかった…」


これでギリギリの回避か。

例えるなら小学生レベルの回避能力だな。こりゃ先が思いやられるぞ…。


「次、大きさと速さ少し変えてドンドン撃っていくからな!とにかく避けまくれ!」


「はいっ!わかりましたっ!」


今度はゴルフボールくらいの大きさの魔力弾を発射する。威力はさきほどまでの魔力弾と同じくらいだが、速度だけは少し上げた。だいたい時速60キロくらいに設定してある。戦闘経験のまったくない大人でも普通に避けれるくらい速度だ。


それをひたすら撃ちまくる!


「うわっ!」

「うおっ!」

「あっ!」

「うぐっ!」

「ほっ!」

「うおっと!」


ロイスが声を上げながら、ひたすら避けまくる。

一応一発ずつ撃って、確実に避けてもらっている。

これは果たして回避の訓練になっているのかな?と自分でも思うが、これが今のロイスには必要なことだと思って続ける。



「これ訓練になるのか?」


ランバートが後ろから声を掛けてくる。

どうやら俺の訓練方法に疑問があるようだ。


「いや訓練にならないよ」


正直に答える。


「ならもっとしっかりした訓練してやれよ!模擬戦でもなんでもさ!」


「…ロイスにはまだ実践訓練は無理だよ。今はとりあえずショボすぎる動体視力や回避能力を段階的に鍛える方が大切だ。回避行動と並行して剣での防御練習もさせたいが、一発ずつでもあんな大げさな回避行動をとっている時点で、ロイスにはまだ無理な芸当だな」


ランバートがロイスの回避行動を見る。


確かに挙動が大きすぎる。いうなれば大袈裟なよけ方をしているのだ。普通なら最低限の動きで避けれるようにならないと、戦闘訓練では話にならない。



「おいロイス! そんな大袈裟なよけ方はいらねぇから!しっかり見て最低限の動きで避けてみろ!」


あまりにも酷い行動をとるロイスにランバートが指示を出し始めた。ロイスがどうやってよければいいのですか?と疑問を抱いているようなので実際にランバートがやってみせることになった。



「いいかロイス!よく見てろよ! アレク頼むわ」


アレクがランバート目掛けて魔力弾を発射する。それを的確に、そして確実に最低限の動きで回避していく。


首元に放った魔力弾を軽く首を捻るだけで躱し、右腕を狙って打った魔力弾を躰を少し逸らすだけで避けていく。


その行動を見てロイスが「すごいです!」と絶賛をランバートに送るが、正直これは出来て当たり前のレベルなので、褒められてもうれしくねぇよとランバートが返す。


「実際にやってみろ」とランバートとロイスが入れ替わる。それと同時にアレクが魔力弾を発射していく。


始めの大雑把で大袈裟な回避を取っていたロイスだったが、ランバートの回避を見よう見まねで同じような動きで避けようとする。


しかし、まだ少し動きに無駄がある。

特に顔元に放った魔力弾には過剰に反応してしまいがちだ。怖いのは分かるが、そんな大袈裟な挙動で避けると次に続けることが出来ない。


それは口頭で説明するより実際に体験して、経験した方がいいと判断し、強引にその状況に追い込むように魔力弾を放っていく。


顔元に放った魔力弾に過剰に反応したロイスがバランスが崩したところに魔力弾を放つ。


一発目はうまく躱せたようだが、バランスは崩した。


二発目、三発目と連続して放たれる魔力弾にさらに体制を悪くしていき、やがて避けきれずに被弾した。



「うわーっ!」


ロイスが魔力弾に吹っ飛ばされて後ろに転ぶ。

痛みはそれ程ではないが、突風で吹き飛ばされた程度には痛いだろう。


「うぅ… 当たってしまった」

「まだまだ甘いな。もう少ししっかりよく見て躱せ」

「けど、結構難しいですよ…」

「初歩中の初歩だぜ? 大丈夫だ。コツさえ掴めば自然とできるようになるさ!」

「はい!解りました! 次お願いします!」


あいつら輝かしい師弟関係を気づいている気がするが、まぁいいだろう。ロイスの期待に応えるようにさらに魔力弾を発射していく。


先程とは違い、こんどは顔元に放っても過剰に反応することなく、確実に躱す。少しづつだが、確実に成長していく。まだまだ初歩中の初歩の訓練だけど、何事にも積み重ねが大切だ。地味だと、必要ないだろうとバカにされても今のロイスには絶対に必要な訓練なのだ。今はひたすら避け続けることが大切だ。




ロイスの回避訓練を初めて大体二時間が経過し、陽が傾いてきた頃には、一度に魔力弾三発ずつ出しても最小限の動きで確実に躱せるようになっていた。


体の動作を感覚で把握し、的確な方法で確実に、最低限の動作のみで避ける。


動体視力、身体の動作確認と初日でだいぶ動きは良くなったものだ。


そろそろ武器の使った回避方法や武器を持ちながらの回避行動を教えようかと思ったが、一度に詰め込みすぎるのはどうかと思い、今日はこれで終わることにした。



「そろそろ終わりにするか。 ロイスの動きは良くなってきたし、明日から本格的な回避訓練に移れそうかな?」


「え! まだ初歩なんですか!?」


「「当たり前だ!」」


アレクとランバートの声が重なる。何を言い出すのかと思えば、強くなっていると自覚されては困るぞ。


ロイスはまだスタートラインにすら立ってはいない。全然ダメダメなレベルだ。今はひたすら基礎技術や動作を身に付けさせていくことに重点を置いて鍛えていくことにする。


あとはロイスの成長次第で訓練方法を臨機応変に変えていくしかない。完全に手探り状態でロイスの特訓が始まった。



「そろそろ寮に戻ってメシでも食べるか?」

「そうだな。俺も腹減ったわ…」

「分かりました!明日もよろしくお願いしますっ!」



ロイスの特訓はまだ始まったばかり…

これからどこまで成長していくのかはロイスの頑張り次第なのだ。

どんなことにおいても基礎って大切なんですよね。

勉強もそう、スポーツも武術も必ず基礎トレーニングは必須なのです。

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