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2-27.夢

気まぐれトーカ

その大声で訓練場に降りていた三人の動きは止まった。

アレクの剣はアイリスの頭の上で止まり、アイリスの剣はアレクの胴を捉えて止まっていた。

完璧な相打ち寸前で、二人の剣士は止まったのだった。


全員が大声を発した者を見る。

そこには泥まみれの制服を纏った黒髪の青年の姿がそこにあった。



流れる静寂。



「お、おい… あいつ誰だ…?」


その静寂を破ったのはランバートだった。

ランバートは中央でお互いに剣を相手に向けたまま止まっている二人に視線を移す。


「いえ… 私は知りません…」

「……(タイミング悪すぎだろ…)」


アレクとアイリスがそれぞれ剣を引く。


「とりあえず試合は引き分けだな」

「…そうですね。なんともおかしな終了になってしまいましたね」


アイリスがフフッと笑い、アレクもつられて笑い出す。


「ところでアレクくん、あの彼誰ですか?」

「ほえ?」

「だって、あそこの彼ずっとアレクくんのこと見てますよ」


よく見ると、赤面した顔で俺の方をギュッと見つめている。

男の赤面なんぞ、見たくはないんだけどな…。


「あぁ俺の知り合いだよ」


「へぇあいつ内のクラスに居たっけ?」

「…いえ居なかったと思いますよ」

「もしかして…アレクの〇〇じゃないのか…」

「えぇ!? アレクくんってそっち系だったんですか…」

「あぁ… かもしれねぇな」


アイリスとランバートが二人で話し合っていた。

なんか恐ろしい憶測が飛び交いそうな雰囲気だったので、その場を離れる。



アレクは訓練場の入り口で大声を上げた黒髪の青年のもとに歩み寄る。



「…強くなる覚悟は決まったのか?」

「はい!僕は強くなりたいです!」


即答か。男はそうじゃなくちゃいけないっ!



「…よしっ それじゃやるぞ!」

「え、え…ちょ、ちょっと!」


アレクが黒髪の青年の手を引いて訓練場の中央まで引っ張っていく。

中央ではアイリスとランバートがまだヒソヒソと話し合っていた。


「あ、そういえば… 自己紹介してなかった。 俺はアレク、平民出身のただのアレクだ。序列は七位 よろしくな!」


「よろしくおねがいします!ぼ、僕はロイスっていいます! ロイス=クルヘラです!序列は… 130位です…」


「え?クルヘラさんって…」


アイリスが食いついた。


「もしかして『ライル=クルヘラ』さんの息子さんですか?」


「あ、はい! 僕の父親です」


「やっぱり! よろしくおねがいしますね!ロイスくん!」


そういえば俺とアイリスは王都の来る途中でロイスくんの父親のクルヘラ商会の馬車を魔物から護衛して、王都までやってきたな。

やべ、少し忘れかけていた。よく覚えてたなアイリス…。


「あ、私も自己紹介してないですね! 私はアイリスっていいます!序列は八位です!よろしくおねがいします!」


「は、八位様…ですか…‼ よ、よろしくおねがいします!」


「この流れだと…俺も自己紹介しとかないとな。 俺はランバート=セグウェイ!ランバートって呼んでくれや!序列は十位だ!」


「え、Sクラスの方が三人も… よ、よろしくおねがいしますっ!」


みんながそれぞれ自己紹介を終えたあと、なぜか視線が俺に集まった。


「なぁアレク 何時知り合ったんだ?」


「そうですね… それ少し聞きたいです」


アイリス+ランバートの視線攻撃が痛い…。

じ――――――と見られるってこんなに怖いのか…。


「ちょ、その眼×2で見るな…。ロイスとはついさっき知り合ったんだよ。で、強くなりたかったら訓練場に来いよ、って言っただけだ」


「へーそうなんだー」

「へーそうなんですねー」


「あ、あの… お邪魔でしたでしょうか…?」


ロイスがビクビクし始めた。

ほらぁお前ら二人がそんな怖い顔してるからだ!


「あ、いえ!ロイスくん 強くなりたくて来たんだよね!なら私たちと一緒に訓練すればきっと強くなれるよ!」

「…だな!よーっし!ロイスぅ! この俺が鍛えてやるから、大船に乗ったつもりで居ろよ!」

「……泥船の間違いだろ?」

「なんだとアレク! てめぇやんのか!」

「よっしゃ!やってやらぁああ!」


アレクとランバートがいがみ合ってる間にアイリスがロイスと話をしていた。


「…なるほど。それでアレクくんがあの時走っていったのか」

「はい… アレクさんは僕のこと…そ、その助けてくれたんです。そして強くなりたければ来いと言われたので…」

「どうして強くなりたいの?」

「あ、えっと… その… ゴニョゴニョ…」

「…へー!凄く良い夢じゃない!」

「あ、いえ、その… ご、ごめんなさい…」




「おーい!ロイスー! とりあえずランバートが「腕見てやるからかかってこい!」って言ってるから、一本打ち合って来いよ!」



アレクがやってきて、中央を指さす。


指さした先ではランバートが「フッハハハハハハハハ!」と言いながら刃引きされた模擬戦用の片手剣を振り回していた。



「おーい!ロイスぅー! 早くかかってこい!ここでは実戦練習のみだぜ!」

「あ、はい! よろしくおねがいします!」


ランバートとロイスの模擬戦が始まったが、当然ながら序列十位と最下位の戦いだ。

いや戦いにすらならなかった。ランバートが軽く振った剣をロイスが受け止めようとするが、受け止めきれず吹っ飛ばされる。しかし、吹っ飛ばされてもすぐ起き上がってランバートに斬りかかるが、それをひょいっと躱されて終わる。


「…赤子の戦いですね」

「…だな」


ロイスはひたすら攻めまくる。

しかし、その剣速は非常に遅く、ランバートに軽々と避けられる。


=========

【名前】ランバート=セグウェイ

【人族/男性/15歳】

【称号】セグウェイ男爵家次男 

【闘級】4,360

【属性】無 土

【贈与】筋力強化《強》

=========


=========

【名前】ロイス=クルヘラ

【人族/男性/15歳】

【称号】

【闘級】290

【属性】無

【贈与】錬成

=========


魔眼で軽く鑑定をする。

ランバートはさすがと言うべきか、同世代ではやはり優秀な部類な入るだろう。

闘級も4000を超えている。それに剣戟と相性のいいギフト持ちときた。


対するロイスは、はっきり言えば論外。

どうやって合格したんだレベルだ。闘級も1000を超えていないっていうか三分の一以下だし。

ギフトも戦闘系というより商売系に向いている『錬成』ときたものだ。


こりゃ勝負になるわけないな…



「ハァ…ハァ… ま、まだまだ…行きますっ!」

「よっしゃ!その意気だ! かかってこい!」

「うおおおおおおおお!!」


ロイスは根性だけはあるようだ。



その数分後、ロイスはぐったりしてしまった。


「…さすがに体力の限界かな…」


俺とアイリスが二人が戦っていた場所に向かう。

ロイスはどうやら気を失っているようだった。

疲れすぎたか…。


「ランバートどうだった?」

「…まるっきりダメだな。剣の腕も論外、正直なんでこの学園に受かったのか謎だ」

「私も見てて、そんな感じがしました」


ランバートとアイリスは同じ感想のようだ。

かく言う俺も同じ感想だ。どうやって受かったんだコイツ…。


「あ、だけど根性だけはあるな!」


まぁそれは見てて解る。

ボロボロになってもランバートに挑んでいくあたり、ロイスは少なくとも強くなる可能性は秘めている。


「今日はこれで終わるか… とりあえずロイスを保健室に運んで今日は解散ってことにしますか」

「あぁ俺も賛成ぃー! 腹減ったわ」

「私もロイスくんを保健室に運びますね」


アレクとアイリスはロイスを連れて運んで保健室へ向かうことになって、ランバートは「腹が減った」と言って寮の食堂に戻ることになった。


「じゃ!俺先に寮戻るわ! アレクぅ!明日戦おうぜ!」


と言い残してランバートはさっさと寮に走り去っていった。



「…さてと」


ロイスをおんぶして、俺とアイリスは保健室に向かう。

保健室は第一校舎にある。第一校舎は講堂のすぐ横で、俺たちの教室がある校舎だ。



「…アレクくん」


「んー?」


「ロイスくんのことどう思うの?」


「んー… 正直言えばロイスに武官科は無理だと思う」


「…そうですよね。できれば今すぐにでも辞めさせるべきだと思います。 だけど…」


「だけど…?」


「ロイスくんには誰にも譲れない『夢』があるんです! それもとびっきりの!」


「なんじゃそりゃ… ロイスの夢って何だ?」


「んー… 秘密です!」


「なんじゃそりゃ! 教えてくれよ!」


「ロイスくんから聞いてくださいっ! だけど、本当に素敵な夢だと思いますよ!」


「…余計気になるだろー!」



俺とアイリスは喋りながら保健室に向かって歩き始めた。

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