2-21.入学式、そしてクラスメイト
気まぐれトーカ!
※ネタ切れ、また考えます。
入学式当日。
昨日は寮生活に必要な物資を色々と買って着て部屋の整理片付けを済ませたら、そのまま寝てしまった。
既に寮に住みこんでいる生徒は多く、特に地方からやって来た合格者は既に寮生活をスタートさせている。
「あぁいい天気だ…」
窓を開け、陽の光と新鮮な空気を部屋に招き入れる。
今日が待ちに待った入学式だ。必要な荷物は既に異空間収納に入れている。
部屋のクローゼットの中から制服を取り出して着替えていく。
学内の武器の所持は許可されているが、今日は入学式なので必要ないだろうと思い、異空間収納にしまう。
日常的に模擬戦や決闘戦が行われるので、武器の携帯は許可されているのだ。
しかし死闘や指定されていない場所での武器行使は校則違反とされ、厳しい罰が下るのだ。
着替えの最後に学園での自分の身分を示すS7バッジを胸ポケットに付けたら準備完了だ。
入学式に持っていくものは特にないし、普段から必要なものは片っ端から異空間収納に居れているので万が一もない。
部屋を出て鍵を閉める。
隣の寮部屋に住まうアイリスはまだ出てくる気配がない。
寝ているのかな?と思ったが、他人の部屋に、ましてや女子の部屋に入るのはどうかと思うので放置しておく。しっかり者のアイリスなので遅刻してくることはないだろう。
朝食をとるために一階の共同スペースにある食堂に向かうことにした。
まだ朝早いのか食堂は意外と空いていた。
今日の朝食メニューはパンと野菜スープといったヘルシーメニューから焼き肉などのがっつり系メニューまで選べる方式のようだ。朝から焼き肉定食などの重たいものは食べたくはないので、野菜定食を頼んだ。
誰も座っていない机について一人もぐもぐと食べ始めた。
みんな起床し始めたのか続々と食堂に制服を着た生徒たちがやって来て思い思いに食堂で朝食を取り始めた。
「わりぃ横いいか? 席空いて無くてな!」
「あ、どうぞー」
席が相手無かったので一緒に座ってもいいかと尋ねてきた青年が俺の向かい席に座る。
あ、朝食メニューまさかの焼肉定食かよ…。朝から重たいもの食べるねぇ。
「ありがとな!俺はランバート=セグウェイ!セグウェイ男爵家の次男さ!ランバートでいいぜ! あんたは?」
「俺はアレク。ただの平民出身のアレクさ。よろしくなランバート!」
茶髪でがっちりした体系のランバートはその外見とは違って意外とフレンドリーな奴だった。
話すといい奴で、平民だとか貴族だとかあまり気にしていないそうだ。
「それにしてもアレクはすごいな!」
「なにが?」
「だってその胸元のバッジ… 『S7』ってことはSクラスの第七席合格者ってことだろ?平民出身なのにやるなぁ」
「そういうランバートだって『S10』じゃないか」
ランバートの胸元には金色のバッジが輝いていた。そこには『S10』の文字が刻まれている。
「特待生クラスに入れるのは十人だけだろ。そこに入ってる時点で俺たちにそこまでの優劣はないと思うぜ」
「まぁ今年はかなりすげぇ奴らがいっぱい受験したらしいからな。その中に入れただけでも俺はツイてるぜ!」
俺とランバートが意気投合して話し合っているとアイリスがやってきた。
「おはようアレクくん! そちらのお方は?」
アイリスが朝食の入ったおぼんを持ちながら、俺たちが話している席にやってきた。
俺は横に座るように催促しながらランバートを紹介する。
「ランバートっていうさっき出来た俺の友達だ!同じSクラスの人らしいよ」
「らしいってなんだよ! 俺はランバート=セグウェイってんだ!よろしくな嬢ちゃん!」
「は、初めまして。私はアイリスって言います」
「アイリスも平民か? それにしても『S8』か! はっはっは!オレ負けちまったぜ!」
負けたと言いつつもどこか嬉しそうなだな。このフレンドリーさというか、どこか意気衝天な奴だな。その雰囲気にアイリスは付いていけてなくて困っていた。まぁ頑張って慣れろ、一応クラスメイトだ。
「じゃ!俺メシ喰い終わったし、先に講堂いくわ!他の奴らと会ってみてぇしな!」
「おう!あとで会おうな!」
ランバートはあっという間に食堂から走り去ってしまった。
「なんていうか凄くパワフルな人でしたね」
「あぁ… だけど良い奴だよ。平民だとバカにする貴族よりはマシだな」
「ですね! ん・・・っ‼お、おいしい! これ凄くおいしい!」
アイリスが野菜スープを一口飲んだら、凄くお気に召したようで夢中でスプーンですくって飲んでいた。
確かにこの野菜スープはどこかコクのようなものがあっておいしかったな。今度作り方教えてくれないかな?
アイリスが食べ終わるのを待って、二人で講堂へと向かう。
講堂は昨日、合格者セミナーが行われた会場のことだ。寮からもっとも違い建物だ。
講堂内に入るともうすでに何十人もの生徒がそろっていた。
左端から順にD→C→B→A→Sクラスと並ぶように椅子が配置されてある。
俺とアイリスは一番右端のSクラスの席に向かう。
「お?やっと来たかアレク!それにアイリス!遅かったじゃないか!」
元気よく声をかけてきたのは食堂で別れたランバートだ。
ランバートの周りには三人ほど男子生徒がいた。
「…君たちがランバートくんが言っていたアレクくんとアイリスさんかな?」
灰色の髪の毛をした中肉中背の男子生徒が話しかけてきた。
「おっと自己紹介がまだだったね。私はロベール=フォン=ブレッソン!気軽にロベールと呼んでくれ!ちなみに序列は第五位だよ」
「俺はアレクだ。序列七位のアレクだ。よろしくなロベール!」
「アイリスです。私は八位です。よろしくお願いします!」
「こう見えてロベールはあのブレッソン伯爵家の嫡男で次代の伯爵様らしいぜ! ゴマでもすっておこうかな?ハッハッハ!」
「やめてくれやめてくれ… 別に伯爵だの貴族だの平民だのは関係ない。ここでは強さのみが求められる神聖な学び舎だ。同じSクラスとして共に励もう」
ランバートの奴がゴマをすり鉢ですりつぶすような演技をしながら笑い、それをロベールが肩をぽんぽんと叩きながらやめろやめろと苦笑いしてる。なんともランバートの意気衝天っぷり…いや破天荒さには凄さを感じるよ。
楽しく談笑していると、講堂をさっきまで明るく照らしていた魔法ランプが消えた。
そして正面の壇上に明かりがともった。どうやら入学式が始まるようだ。
それぞれしゃべっていた人たちは自分の席へと帰っていく。
俺もアイリスも自分の指定された席に座って始まりを待つ。
みんなが静まり返った頃、壇上に一人の老人が壇上に設置された机の前に立つ。杖は付いてはいないが、毛根が後退し始めている白髪に白髭という初老のおじいさんだ。
どうやらこの人が学園長のようだ。
そしてようやく入学式が始まるようだ。
「ごほんっ! 初めまして今年の入学生諸君!ワシはウェリントン学園長である。 ワシは長々と話するのは好きではないのでな。これだけ言っておくとしようかの。」
そう言い残して、スゥーと息を吸い込んだ。
ま、まさか…っ!?
「ここでは実力がすべてじゃ! 強き者こそ偉い! 賢いものほど偉いのじゃ! だから貴様らは強くなれ! そして賢くなれ! 実力がすべてのこの学園で生き残って無事に巣立っていってくれたまえヒヨッコ諸君! 以上!」
入学式が行われている講堂は学園の中で一番の大きさを持っており、人が普通に喋るだけは隅々に声が届かない。それでもはっきりと聞こえるのはおそらく壇上の机に設置されている拡声魔法が付与されたマイクのようなものを使っているからだろう。
というか、見た目にそぐわぬ元気な人だなあの学園長。
学園長が自ら実力至上主義を語って終わっちまったぞ。
学園長の高々とした実力至上主義宣言から入学式は始まった。
着々と入学式が進んでいく。
「新入生代表の挨拶。 新入生代表アクアリア=フォン=アスラエル!」
司会進行の教職員が名前を読み上げる。
その声に返事するように一人の女性が壇上の横から姿を現す。
その女性の登場に壇上前に座っている新入生たちはそのあまりの美しさに目を奪われた。
学園指定の制服を着込んだ金色の髪をした女性が壇上の机の前に立つ。背中あたりまで伸ばした金色の髪をゆるふわパーマをかけたようなふんわりとした髪型に青色の瞳をした美しい女性だった。
【アクアリア=フォン=アスラエル】
世間知らずの俺ですら知っているこの国の第三王女にして文武両道に優れた有名人だ。
そして…幼馴染の転生体だ。
(ようやく会えたな… 朱莉…)
久しぶりに会った朱莉の姿。当然前世のものとは違う。声も容姿もまったく接点がない。しかし、アイツは間違いなく俺の知っている朱莉だと俺の魂が述べていた。
(幸せそうで良かった。それに、そんな美人さんに転生させてもらってよかったな)
朱莉の顔を見て確信した。
朱莉は今幸せそうだ、俺が邪魔するわけにはいかない、と。
俺が影から必ず守り通す、と。
アレクはひそかに誓いを立てた。
幼馴染の新入生代表の挨拶が終わった後、入学式は終わりを告げた。
次話!Sクラスの生徒全員とSクラス担当教諭の自己紹介を書きたいと思います!
全員紹介しきれなかったぁΣ(゜д゜lll)




