2-11.アイリスの努力、そして過去
気まぐれトーカ。
※アイリスの努力回と少しだけ過去触れます。
※誤字報告と訂正していただきありがとうござます!
無事に訂正することが出来ました!( ^∀^)
2019.4.9 18:56
※文章を書きなおしました(一部)
2019.5.2 16:53
「まず手のひらに魔力を集めて、ゆっくりと手のひらに凝縮していくイメージで…」
「こ、こうですか…?」
アレクとアイリスは王都へと繋がる街道を歩いていた。
二人は偶然の出会いから始まり、アレクはアイリスに魔法を教えながら歩いていた。
アレクはアイリスが必死に唸りながら魔力を練っている姿を見ていたが、まったく魔力が集まる気配がない。と、いうより体内の魔力がピクピクとしか動いていないのだ。
どうやらアイリスは、いままで魔力をまったく使ってこなかったために魔力の感覚を掴めないでいるようだ。
「んー… アイリス、また手出して」
それを見かねたアレクがアイリスに声をかける。
「ま、またですか? 別にいいですけど…」
アイリスが右手を差し出してきた。その手を取って握る。初めて握手したときは、警戒されていたが今はすでに警戒心も解けているようでスムーズにことが進んだ。
俺はアイリスの手を握って自分の魔力を送り込む。
送り込んだ魔力でアイリスの魔力に刺激を与えるためだ。
俺の魔力でアイリスの体内の魔力に刺激を与え、強制的に動かす。俺の魔力を手を通してアイリスの体内に送り込み、そしてアイリスの体内の魔力を俺の方へと引っ張る。
「あ、あ… ちょ、ちょっ… はぅ…」
これをやられると、凄く酔うのだ。
魔力が少ない人にやったら、嘔吐するまで酔ってしまう。しかしアイリスは体内の魔力が人より多いため、この程度で済んでいる。若干色っぽい声を出しているのが、耳福だが… いや耳に毒だが。
「どうかな? これで魔力の感覚掴めそう?」
俺は二、三度 アイリスの魔力を操作して体中の血管を通して魔力を巡回させてみた。
俺も初めて魔力の感覚を掴む時に、ミーアさんにやられて凄く酔ったものだ。吐きかけたし。
「ハァハァ… はい… 大丈夫だと、思います…」
フラフラじゃないか… 少し激しく動かしすぎたかな?
そう思っていたらアイリスが魔力を集中し始めた。どうやら今度はうまく魔力を操作できているようだ。徐々にだが魔力が手のひらに集まってきているのが分かる。
俺は今のうちにアイリスを魔眼で見る。
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【名前】アイリス
【人族/女性/15歳】
【称号】-------
【闘級】2,470
※武力670 気力100 知力330 魔力1,370
【属性】無・風・光
【技能】
剣術Lv.4
状態異常耐性Lv.1
魔力操作Lv.0 (New)
魔力制御Lv.0 (New)
【贈与】剣術《極》
【加護】魔導神の加護
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感じた通り、魔力が多い。まったく使われたことのない魔力なのに、既に1,000を超えている。努力すれば誰にでも超えることが出来るが、生まれつき備わっている魔力量なのだろう。それに魔導神エルリュアの【加護】まで持ってる。【贈与】は剣術《極》か。武力も高基準の数値だし、おそらく問題ないだろう。それに出生の秘密が酷い。その中でもここまで綺麗に真っすぐ育つのは奇跡に近い事なんだろうな、いや知らないからこそか――――――…
俺がアイリスのステイタスを見ていると、アイリスから声がかかった。
「あ、あの… 集まりました!」
俺はアイリスの手のひらを見ると、そこには野球ボールくらいの魔力弾が出来上がっていた。随分と頑張って溜めたようだ。いきなり、そんなに大きな魔力弾作るってさすがは【加護】持ちだわ。
「よし!じゃ、そこらへんの木に向かって発射!」
「は、発射ですか… え、えいっ!」
アイリスが魔力弾を発射する。
発射された野球ボールくらいの大きさの魔力弾は、アイリスの手のひらから離れ近くにあった木に着弾し、爆ぜて消滅した。どうやら成功のようだ。
「うん!完成しているね。それが無属性魔法の初級技『魔力弾』だよ。ただの魔力を集めて撃つだけのシンプルな魔法」
アイリスは自分の手のひら見て、黙り込んでいる。表情を見ると、驚きを通り越して感動しているようだった。そんなに魔法が使えたことが嬉しかったのかな…?
「で、できた… やったあ!私、魔法が使えたよおお!!」
「おめでとう!この調子で頑張って覚えていこう!」
「はい!アレクさん ありがとうございます!」
もう成人だと言うのに、年甲斐もなく、その場ではしゃぎまわっている。
そんなに嬉しいのかな…? 俺にとっては既に忘れてしまった感動だ。 だけど、アイリスが喜んでいる姿を見るとほっこりとした気持ちになる。協力してよかった。
「よし、じゃ!今日中に魔力制御と操作覚えるために、いっぱい魔力弾作って発射していこう!」
「はい!アレクさん! 私がんばります!」
初めて魔法が使えた感動の余韻に浸りながらも、アイリスは必死に頑張った。
その甲斐もあって、アイリスの【技能】に新しく出てきた魔力関係の技能のレベルが上がっていた。
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【技能】
魔力操作Lv.0 → Lv.1
魔力制御Lv.0 → Lv.1
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まだまだ初心者レベルの制御に操作だったが、使えるようになって数十分で技能の数値に影響を及ぼしたことを考えると、かなり頑張ったのだろう。俺が少しお花摘みに言っている時にも必死に魔力制御して魔力弾作っては発射を繰り返していたし、本当に嬉しかったのだろうな。
その後もアイリスはひたすら、魔力弾を作り続けた。
◇◇◇
もうじき陽が沈むだろう。
辺り一面、暗くなってきた。空は夕日色に染まり、陽が沈もうとしていた。
(これ以上はさすがに危ないな。俺はともかく、アイリスは休ませないとキツいだろう)
俺とアイリスは、森の中の街道を歩いている。昼間は安全な街道だが、夜は魔物の巣窟と化す。俺はまだまだ元気だが、アイリスは違う。昼間からひたすらに魔力弾を作っては発射を繰り返していたので魔力枯渇状態にまで陥っていた。倒れはしないが、ふらふらな足取りになっていた。
この状態で夜の暗闇街道を歩き続けるのは危険だ。俺はともかくアイリスには魔力回復の休息が必要だと判断し、今日は近くの木の根元でテントでも立てて野宿することにしようと判断した。
「アイリス、今日はここら辺で野宿しようか」
俺はそう言って、ふらふらな足取りのアイリスの返事を待たずして野宿の準備を始めた。
まずは街道から少し離れた森の中に入って、草が生えておらず地面がむき出しの場所を探す。見つけたら、そこで点火の魔道具を使って火を起こす。俺には火属性がないので、魔道具を使わないといけないのだ。
火を起こしたら、次は野営テントを異空間収納から取り出して設置を始める。
アイリスが「私も手伝います」と手伝おうとしてきたが、俺はそれを制して休んでいるようにいった。相乗以上にアイリスは精神も肉体も疲労している。ここは素直に休んでもらおうと思っての行動だ。
ほんの数分で野営のテントは完成した。
ちなみにこのテントはファミリーロッジ型テントと言われる。家族キャンプでよく使われるハウス型のテントだ。
四本の釘を互いにクロスさせて支柱を支え持ち上げる。大体大人四人は入って寝れるくらい大きなテントだ。それにこのテントの素材は魔界で手に入る『ベヒモス』から採った灰色の皮で作っているため、並みの魔物ではびくともしない耐久性を持っている。さらに隠蔽付与もかけているので完璧な仕様だ。
「変わった形の野営具ですね」
この世界にもテントは存在している。そのとんどがドーム型と呼ばれるシンプルな定番のテントだ。
俺も初めてテントを作った時はドーム型にしていたが、魔界の修行中は師匠と二人で寝ていると狭く感じたので、作り直してファミリータイプのテントに変えたのだった。
「まぁ珍しい形のテントだけど、機能は充実しているよ。中に入って休むといいよ」
前世の記憶を持った転生者が作るテントだぜ? 魔法なんて公式チートも羨む最高の力がある世界だ!当然自重なんてもんは、それは魔法に対する侮辱だ!よって自重はしていない!俺のやりたいように、こだわりのままに作り上げた逸品だ!
中にはキッチンから洗面所、便所、浴槽完備などなど、必要な物を全て揃えた特別移住型テントだ!
このテント一つで人が生きていく上で必要な『衣食住』の〝住〟が全て揃っているのだ!
俺は居空間収納からアイリスの大荷物を取り出して中に運ぶ。
俺についてきてアイリスもテントの中に入ってくる。
「今日はここで寝泊まりしてね」
「え、え、ええーーー!! な、なにここ!?」
フッ さすがのアイリスも驚きを隠せないようだ。
ちなみに外見と中身では広さと大きさが違う。これは師匠に頼んでつけてもらった空間拡張魔法を組み込んでいる影響だ。大体広さは十畳の広さ16.2平米の広さを誇る。大体一人暮らしのマンションの広さだ。
「とりあえず、ゆっくりとするといいよ! そこの角部屋は浴槽になってるから、浴びたければ浴びるといいよ。ほいじゃ、俺は外で用事あるからゆっくりしていてね」
固まったままのアイリスを放置して、俺は外に出る。当然、夕食を作るためだ。
まぁ中に設置されているキッチンを使っても良かったのだが、中ではアイリスがもしかしたらシャワーに入るかもしれないし、あの大荷物の中を整理するかもしれないので、外に出ている方が何かと無難だと持って外で用意することにする。
異空間収納から、これまた手作りの火の魔石で作った特製ガスコンロを取り出す。
魔力を流して火を発生させ、その上にフライパンを置いて温めておく。
異空間収納から卵や肉、炊いて入れておいたお米を取り出して下ごしらえをする。
今日の晩飯メニューはシンプルに焼き飯にしよう。具材とお米を温めておいたフライパンに入れて焼くだけのシンプルな料理だ。これだけだと味気ないので、これまた作っておいたお味噌汁ならぬ、野菜スープをお椀によそって完成だ。
またまた異空間収納からテーブル一つと椅子二脚取り出して並べる。
俺の異空間収納の中身は偉大だ。基本的に何でも入っている。食材から家具、魔道具や日曜大工セットなどなど、基本的に必要となりゆるものは全て収納しているのだ。
そうこう色々と作っている間に、アイリスがテントから出てきた。
どうやらシャワーを浴びてきたようで、服は着替えていた。
寝間着ではなく普通の普段着を着ているあたり、平民なのだろうなと思う。
この世界で寝間着を持っているのは貴族様くらいなものだ。俺も一応持っているが、正直着たことはない。だって、寝ている間に魔物が襲い掛かってくるんだもん。魔界の修行中は常に戦闘着を着て寝てたし、そもそも安全に寝れる場所なんて存在しなかった。
「アイリス、一緒に食べようぜ!」
俺はテントから出てきたアイリスに声をかけて一緒に食べるように促す。
「いえ、私お金あまりもっていないので。それに学園までの旅路の保存食も持ち合わせていますから… それに至れり尽くせりで本当に申し訳ないです」
「気にしないで!それにもう料理作っちゃったから、一緒に食べようぜ」
「で、でも… 本当にいいんです」
アイリスは首を横に振っている。
まぁ気持ちは分からなくもない。今日であったばかりの人に、ここまで至れり尽くせりされたら戸惑うし、本当にいいのかなって不安に駆られるのだろう。
「魔法を教えてもらって、それにこんな素敵なテントで寝泊まりさせてもらえることだけでも大変ありがたいのに、さらにご飯をごちそうしてもらうなんて。 そんなにいっぱいじゃ、恩大きすぎて返しきれないです」
本当にいい子だな、と改めて思った。このままだとせっかくつくった料理が冷めてしまうので、強引にでも食べさせようかと思ったが、それじゃなんか可哀そうっていうか俺が最低人間になりそうなのでやめた。
「それじゃ、貸し一ってことでどうかな?」
「貸し一、ですか?」
「そう!貸し一だ! 俺が凄く困ってたら、その時に助けてくれ!それだけでいい!」
「で、でも…」とやはり踏ん切りがつかないようだった。腕の引っ張り合いをしても埒が明かないのは明白だ。なので、少し強引な意見で黙らせますか… 心苦しいけど。
「俺が良いって言ってるんだから、大丈夫さ! それに同じクラスメイトになるかもしれない人への先行投資だと思ってよ!まぁ学園に入って同じクラスメイトになれたら仲良くしようね!ってことで!」
と、強引にアイリスを椅子に座らせて食べるように促す。
始めは緊張して本当にいいのかな、って不安がっていたけど、ようやく食べてくれた。
それも「おいしい、おいしいです!」と連呼しながら食べてくれてよかった。これで作った甲斐もあったってもんだ!
食事がすんだ後、アイリスが自分のことを色々と話してくれた。
アイリスの家は元奴隷一家だったそうだ。しかし、この国は奴隷制度を廃止している。闇奴隷商人から売り払われた両親から生まれたのがアイリスだそうだ。当然ながら奴隷が生んだ子は、奴隷になるしかない。アイリスも八歳までは奴隷として畑作業をさせられていたらしい。
しかし、奴隷生活も突然終わりを迎えた。
アイリスたち家族を所持していた主人が捕まったのだ。当然、奴隷だった者たちは解放されたそうだ。
奴隷から解放されて自由になっても、やはり生きていくためには働くしかない。
対して強くなかった両親にできたのは畑仕事だけだった。そのため、一家総出で畑仕事をして暮らしていたが、アイリスが十三歳の頃に才能が開花したのだ。
強い魔力に【加護】、それに戦闘向きの才能を秘めた【贈与】。
本来、五歳の時に貰え知るはずだった【贈与】だったが、アイリスは奴隷だったの奴隷の首輪によりみることが出来なかったのだ。それに両親ですらステイタスの見方を知らなかったのだ。
たまたま村を訪れた冒険者が彼女を見て、鑑定したのだ。それが才能の開花に繋がった。
家族は大変喜んだ。だけど、こんな劣悪環境じゃアイリスの才能を無駄にしてしまう。
そこで両親は今まで必死に稼いできたお金で、アイリスに王都の学園に通わせることにしたのだ。
アイリスには一人の妹と二人の弟がいる。両親とアイリス、妹に弟たちと共に家の畑を耕して生計を立てていた。だが、それはぎりぎりの生活で、贅沢とは程遠く無縁の生活をしていた。
家族みんなで稼いだお金を自分一人だけのために使うなんて出来ない、私はここで働いて生きる!と反論したが、家族みんなに押し切られ、学園で太寿してくれ!と家を追放当然で追い出されたそうだ。
アイリスは何度も両親やまだ小さい妹や弟たちのことが心配で、何度も口に出していた。
本当にそのことで頭がいっぱいいっぱいのようだ。
俺は前世は医者で比較的裕福な家庭で育った。
それに転生してからも冒険者という仕事で見事に大金を稼いだ。それに師匠と出会うことで俺は生きる力を身に着けることが出来て、今では贅沢な暮らしができるようになった。
俺にはアイリスの苦しみを理解してやることが出来ない。
口先だけで「大変だったね」とは誰でも言えることだ。しかし、この言葉アイリスに果たして言って良いことなのか、それは俺でも理解できる。
そんな口先だけの言葉だけをかけるなんて、そんな酷いことは絶対にしてはいけない。
そんな俺にできることは、ただアイリス自身が納得できるようにしてやる。ただそれだけだった。
『アイリスを助けてあげたい』
そんな御大層な事ではないが、少なくても協力してあげたいとは思った。
「こんな暗い話聞かせてごめんなさい。どうか忘れてください」
と言って食器を片付け始めた。俺は名にも言い返すことが出来なかった。
その日は二人で食器を洗って、テントに入って寝た。
アイリスは魔力枯渇状態一歩手前まで消耗していたので、すぐにぐっすりと眠ってしまったが俺は寝付けずにいた。どうしてもアイリスの昔話が胸につっかえて眠れなかった。
俺はテントから出て、外に置いてある椅子に座って夜空を見上げた。
真っ黒な暗闇に、月明かりが輝いて辺りを照らしている。星も大小関係なくキラキラと輝いていた。
「…俺って、本当は不幸じゃないのかもしれないな…」
俺のつぶやきは夜風に流され、誰の耳に届くことなく夜空に消えていった。
ここまで読んで下さりありがとうございます!( *´艸`)
暇つぶし程度に読んで下さると嬉しいです!(>_<)
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