28.起死回生
気まぐれトーカ。
※今回は謎の男目線です。
「チッ… マジであのガキやってくれたもんだな。ほとんど壊滅状態じゃねぇかよ!」
男は近くにあった手ごろな石の上で腰を下ろしながら周りを見ていた。
男の周囲はまさに死屍累々。数の寄せ集めとはいえ、大切な駒であった魔物のほとんどが壊滅させられている状態だ。あちらこちらに首や胴体を真っ二つにされた小鬼や影狼の遺骸がゴロゴロと転がっている。
それも、そのほとんどの死因が急所を一突きや首切断など、正確な一撃でどれも殺されている。
とてもさきほどの死に掛けのガキ一人でやったとは思えないほどの熟練度だ。
仮にこれをすべてあのガキが一人がやり遂げたというのなら、とても信じられないが少なくともココで確実に殺しておかねばならない脅威だ。年も十過ぎたころの成人すらしていない時点で既にこの実力だ。これ以上成長されると、必ず我々の大きな障害となる。
しかし、そのご本人は既に虫の息だ。ガキの命は既に風前の灯火、瀕死の状態だ。
どんなに卓越した技術や実力を持とうとも、今は既に半死半生だ。そんな状態でこの俺様や魔物の上位種であるオーガやレッドグリズリー相手に生還できるはずがない。あいつの運命は既に決まっているようなモノだ。
既にガキは遊び好きのレッドグリズリーに良いように玩具にされて、弄ばれている状態だ。あんなに派手に投げられてぶつけられているのに、まだ死なないとは恐るべき生命力だ。しかし、確実に奴の体内の魔素量は減っている。
生物は多かれ少なかれ、体内に存在する魔素量で生命力が図れるのだ。
それも、この世界の生物は皆すべて魔素によって生命活動を維持、活性化しているからである。
俺様は当然のことながら魔力探知を扱える。あのガキにも、わずかに魔力の残留因子があり、息があることは分かっているが、すでに消えかけの残り火だ。あと数分もすれば確実に消え去るだろう。
男の足元にはさきほどまで少年が使っていたと思われる根元でぽっきりと折れた片手剣が落ちている。
品質を鑑定するまでもなく、そこらへんの安物であることがわかる。こんな安物ではせいぜい下位種の小鬼くらいまでしか刃が通らないだろう。それにとても連戦に向いている品質の武器ではない、すぐに血糊や油で使い物にならなくなる。
こんな武器で数百体にも及ぶ小鬼や影狼の下位種の魔物をその手で斬り殺したというのが、あの少年の凄まじい技術の凄さを物語っている。しかし、さきほどにも述べたように、どんなに卓越した技術であっても最後にモノを言うのは武器の品質であり耐久度だ。
こんな安物のお粗末な武器では魔物の上位種であるオーガや血濡れ熊、レッドグリズリーの皮膚は貫けない。よくここまで戦ったものだと逆に称賛に値する。
「せっかく邪香木でいい感じに魔物が集まってやがったのに、これで全部パァッかよ。まったく余計なことをしてくれるガキがいたもんだ。おかげであの方の作戦が台無しだぜ」
ここに集まっていた魔物は、そのほとんどが何者かによって仕掛けられた邪香木によって引き寄せられた魔物たちであった。
邪香木とは、魔素を吸って成長する特殊な樹を乾燥させてできる炭のようなものだ。
その香りは魔物を集める効果がある。本来の使い用途は、魔物が少ない場所で数本の邪香木を燃やして魔物を集めるために使われる。
扱いが非常に難しく、魔物が大量にいる場所で使うようならあっという間に辺りを囲まれてしまう。それほどまでに危険な代物であるが、魔物が少ない地域では魔物からとれる上質な素材を手に入れるためには必要不可欠な必需品である。
そんな邪香木が大量に燃やされていたのである。
その効果はすさまじく、あっという間に数百匹の魔物がその場に集まったのである。それを偶然発見したのがこの男だったのだ。
男はこれを利用し、人間界拠点の最前線防御都市である城塞都市メルキドを攻め落とすつもりであった。それが男に与えられた役目である。
「チッ… 次の作戦考えることにすっか」
男はチラッとレッドグリズリーに玩具にされている少年を見る。ボロ雑巾のように投げ飛ばされ、叩きつけられ血泥にまみれた少年の姿が映る。そこに生気は感じられない。もう死んだな、そう思わされるような光景だ。
男は次の作戦に向けて、魔物が集まりそうな場所を目指して歩き出す。
ここに残っている生き残りオーガなどの魔物は邪香木の香りによって釣られた魔物で、ほっておいても香りが切れればすぐに散り始めるだろう。それに元々どこぞの他人が勝手に集めた魔物を横取りしてまで使うのは、男のプライドが許さなかった。
しかし、あの方復活のためにはやむを得ないと思っていたため、はじめはこれを利用した作戦でメルキドに攻め入ろうとしていたが、少年の獅子奮迅のおかげでほとんどが壊滅状態。すでにこの群れは使い物にならなくなってしまった。
これは幸いと、また一からやり直すことに決めたのだ。
今度は自分の手で魔物を服従させ、自分の手で魔物暴走を引き起こさせるために。
最後に少年の生死を確認しなければならない。もうすでに必要もないほど、弱々しい気配しか感じないが、あの少年はここで殺しておかねばならない脅威そのものだ。
もうすでに必要なしと踏んでいた魔力探知を行う。これも念の為に行うことだ。あの少年は明らかな脅威だ、ここで確実に殺しておかねばならない存在だ。あの状態で生きていることなどありえないだろうが、念には念を入れよ、確実に死んでいるかどうかこの眼で確認するために行った。
少年の体内の魔素は消えかけている。しかし、まだ消えてはいない。
レッドグリズリーが木にもたれ、意識を失っているであろう血塗れの少年にトドメの一撃をかますべく腕を振り上げていた。これで確実に死ぬな、そう確信し前を向いて歩き出す。
男が前を向いて魔力探知を切ろうとしたとき、それは起こった。
背後から凄まじいほどの魔力が感じられたのだ。この魔力の質からして今にも死にかけていたはずの少年の魔力質だ。レッドグリズリーがトドメを刺そうとしていたはずだ。それがなぜ、これほどまで濃密で凄まじい魔力波長を放っている?いや、放つことが出来るのだ?
「…ありえない」
死に掛けの少年が発せられるレベルの魔力波ではない。ましてはこの魔力の質はケタ違いに重たく、そして冷たい。
男はすぐさま後ろを振り向く。
そこには瀕死の状態で意識を失っていたはずの少年が立ち上がり、目の前に居たレッドグリズリーやオーガといった上位種をその手で斬り殺し終えていた。真っ二つ、首チョンパ、急所に正確な一撃、どれも瀕死だった少年が成し遂げられるはずがない。
そもそも少年の周りにはまだ数十匹の魔物が居たはずだ!
しかし、男が振り向いた時にはすべて斬り殺されていた。
人が首を振り向く速度は、個人差もあるが大体、目の瞬きと同じ約0.3秒だと言われている。しかしそれは常人であったらの話だ。この男は常人ではない、ましては人ではない。そんな存在が振り返る速度など常人の域であるはずがない。その速度は約0.1秒以下だ。ほとんどタイムラグなど存在するはずもない瞬間的なことだ。
しかし、その速度をもってしても少年が数十匹の魔物を瞬殺する光景を視認することはできなかった。尋常ではない速さであるが、そもそも色々とおかしい。
そもそも奴にはもう武器が無かったはずだ。奴の武器は既に折れて俺の足元に転がっていた。それなのに、今やつは剣を持ち、俺様以上の凄まじい魔力を纏ってその場で立っている。
しかも、その剣からは尋常じゃないほどの凄まじい魔力を感じる。
あれは危険だ、そう本能的に察知する。
その剣は明らかに別物だ。次元が違いすぎる。真剣魔剣の類と言われても納得できる。しかし、神剣などでは決してない、俺様以上の禍々しい雰囲気を纏った片手剣だ。
あんなもので斬られたら、どうなるか想像もつかない。故に危険だ。
やっぱり俺様自身の手でトドメを刺しておけばよかった。無能な遊び好きのサディストグリズリーに任せた数分前の自分が恨ましい。
男は少年を向き合う。その眼には何かを決断した決死の覚悟が灯っていた。
今度こそ目の前に立っている少年を自分の手で確実に殺す。その覚悟を決めた眼であった。
なんとこの作品、ついに10万字を突破しました!ラノベ単行本『約一冊』です!
正直ここまで書けるとは思ってなかったです。( *´艸`)
三日坊主な僕が、気まぐれでしか執筆しなかった僕が… 意外といけるものですね。
さて、第一章も残り2話で終わり予定です。(※絶対ではありません)
頑張って第一章終わらせて、第二章の学園編でヒロインと幼馴染を登場させたいですねぇ。
こんな気まぐれでしか投下されない小説を読んでいただき、ありがとうございます!
感想や評価まで付けていただき、本当に感謝感激です!これからも、これを励みに頑張って執筆していきたいと思います。ありがとうございました(´▽`*)
(2019/03/18)
総合評価:154pt ブックマーク登録:46件 総合PV数:8.543
本当にありがとうございました!




