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26.絶望は突然訪れる。

※気まぐれトーカ。



「なんだ?偉く魔物どもの反応が消えていってると思ったら…」


後ろから突然声をかけられた。さっきまで後方には何の反応も気配すら無かった。

しかし、確か後ろから声が聞こえた。知らない声だ。重苦しいプレッシャーと共に突然背後に現れた。


バッと後ろを向く。そこには真っ赤な髪に角が一本生やした、武者鎧を着た男が居た。しかしその男の纏っている雰囲気(オーラ)が明らかに別格のソレだった。コイツはやばい、今すぐ逃げなければいけないと本能が訴えてくる。


しかし俺の躰は一切言うことが聞かなかった。男は深紅の眼で俺を睨みつけている。


「ガキが少しイキがってくれたようだな?」

その声には怒気が含まれており、桁違いの威圧と共に俺の躰から自由と思考一瞬で奪う。

躰が動かない、今すぐにでも逃げ出さなければいけないのに。まるで金縛りにあったように完全に動きを封じられてしまった。


男は右腕を軽く振ると、俺の躰は一瞬で吹き飛ばされ、十メートルほど離れた木に叩きつけられる。ぶつけられた衝撃で一瞬意識が飛びそうになるが何とか堪えて身体の痛みに耐えながら相手を見据える。


「せっかく魔物がいい感じで集まってたのに、よくも減らしてくれたなクソガキ!おかげで作戦が台無しじゃねぇーかよ!」


良い感じで集まってた…?作戦…?クソ…なんのことだ…?そもそもコイツは何者なんだ?

痛みでどうにかなりそうな苦痛を我慢して必死に頭を働かせる。さっきの攻撃で背中を打撲した程度だ。まだ体は動かせる。さっきまで俺を縛っていた威圧は男から離れたことにより多少はマシになった。今のうちに逃げ出さないと次こそ殺される。


逃げるために、脚に魔力を集中し始めたときに目の前から声をかけられた。


「あぁ?何逃げようとしてんだ?」


さっきまで十メートルほど離れた距離にいた男が一瞬で目の前に立っていた。疾すぎる。

男が蹴りの動作に入ったので急いで防御態勢を取ろうとしたが、防御(ガード)の構えすらすることが出来ず蹴りをモロに受けて弾き飛ばされる。左腕からバキバキッと嫌な音が聞こえる。そのまま別の別の木にぶつかってようやく躰が静止する。


痛みで今にも意識が飛びそうだ。だが、意識を失えば間違えなくもう目覚めることはないだろう。集中していた魔力も霧散していた。急いで魔力を集めようとするが、男の存在ばかりに気を取られすぎたためか、目の前に迫るレッドグリズリーの腕に反応がわずかに遅れた。


気づいた時には手遅れだった。

レッドグリズリーの一撃は俺の左腕をしっかりと捉え、爪で肉を切り裂きながら力任せに振り切られた。グシャッと嫌な効果音と共に左腕に今まで感じたことのない激しい痛みが襲う。


レッドグリズリーは「やっと攻撃が当たった!」とばかりに次々を腕を振り下ろしてくる。まるで今までの攻撃をすべて躱されていた恨みを一気に晴らすべく、繰り出された攻撃だ。近くでは男が俺のことなど興味なさげに何か考えている素振りをしている。その近くにはオーガやホブゴブリンより一回り大きい小鬼王の姿も見える。


俺はここでやっと思い出した。

初めて魔物の集団を感知したとき一つだけ恐ろしく禍々しい反応があったが、その反応の主こそあの男のことだったのだと、魔物の集団の一番最後列に合った反応だったので完全に意識から抜け落ちていた。一番に脅威だと考え行動しなければいけなかったことを忘れていたのだ。


時間稼ぎを限界まで行い騎士たちの生存率を上げることばかり考えて招いた結果だった。明らかに自分での判断ミス、騎士の撤退時間や生存率と言ったことばかり気を取られたことにより招いてしまった墓穴だ。


今更気づいても時すでに遅し。あっという間に魔物に囲まれ、レッドグリズリーの遊び道具になって弄ばれていた。鋭い爪で体中を引っ掻き回され、至る所がぐちゃぐちゃになって鮮血が舞っていた。一番被害の大きい左腕は既に感覚は無く、ぐちゃぐちゃに潰されていた。むき出しになった筋肉でギリギリ繋がっている状態で今にも千切れ落ちそうだ。


弄んでいたレッドグリズリーが、まったく反応しなくなったことに面白さを感じなくなったのか、俺を掴み上げボロ雑巾のように投げ飛ばす。地面に打ち付けられるが、もう痛みすら感じなかった。


いい加減に殺してくれとまで思ったが、いつまでたってもトドメを刺してくれない。ひたすらボロ雑巾のように投げられては、拾われ、投げ飛ばしては拾う。完全に玩具だ。まだ体も成熟しきってない小さな体はレッドグリズリーの大きな手ですっぽりと収まるくらいに小さい。ちょうどいいくらいのボール感覚なんだろう。初めて手に入れた玩具ではしゃぐ童のようだ。


何度目かの投げ飛ばしで意識が完全に飛びそうになる。

意識がある中でずっと遊ばれてきたのだ。ここで意識を失った方がどんだけ幸せだろうか?もう抵抗する気力も魔力もない。ましては躰は既にその機能をほぼ失っている。体中ぐちゃぐちゃだ。投げ飛ばされ地面に叩きつけられるたびにグチャッで音が聞こえてくる。


転生してわずか三年目で終焉を迎えるとは思ってなかった。

前世では三十手前で死んだが、異世界では十歳で息絶えるとは… 早死にもいいところだ。


またレッドグリズリーに持ち上げられ、投げ飛ばされる。こんどは地面ではなく木に命中し、木に倒れ込む。当然のことながら起き上がる気力もない。されるがままだ。


もうすでに左腕の感覚が無くなっていた。いや、体中の感覚が消失している。

骨も折れ、神経すらも切れて、筋肉や脂肪と言った身のみでくっ付いている状態だろう。

目の前にはまだまだハイオークやオーガと言った上位種の魔物どもが残っている。


こちらを血走った眼で見つめてくる。そこには悪意はなく、純粋な捕食者の眼だ。レッドグリズリーが遊ぶの辞めて、捨てるのを待っている。遊び飽きて捨てたところで食べようと考えているんだろう。


俺はただの獲物、餌に成り下がったんだな。


「……もう… 疲れたよ…」


わずかにかすれた声がでる。今までの自分の行為を振り返って考える。俺は精一杯の抵抗をした。騎士たちの逃げ切る時間は十分に稼げたはずだ。雑魚ならともかく上位種相手に勝てないことは初めからわかっていた。俺じゃこいつらに傷すらも付けられない。それほど圧倒的までの実力の差。


すでに満身創痍だ。


もう立ち上がる体力すらも残ってないし、立ち向かう気力もない。

助けに入る前から分かっていたことさ。俺がやっていたのは勇気ではなく、蛮勇だ。俺は勇者でもない、ましては屈強な戦士でも歴戦の勇士でもない。ただの子供に宿った哀れな男だ。


絶対に敵わない敵に立ち向かうこと、その先にあるのは絶望で死だ。

何一つ違わないただの冒険者の末路。


悔しいな… 勝ちたかったな… 何で俺こんなに弱いんだろう…


涙がポロポロ落ちてくる。必死に訓練してきた。この世界では甘えなんて通じない純粋な弱肉強食の世界だと教えられ、やめた方がいいと止められていたはずなのに俺はここに来た。


いや来た事に対して後悔はない。俺が選んだ道だ。当然、選んだ責任は俺にある。

そもそも止めてくれたミスラ様に責任があるわけがない。笑顔で送り出してくれたことに対して感謝しないといけない。創造神やほかの神々もそうだ。俺が強くなるために最大限の支援をしてくれた。だけど俺はその支援を使いこなすことが出来ず、危険だと知りながらも忠告を振り切ってきたんだ。



俺に後悔する資格はない。



俺を木に吹っ飛ばしてくれたレッドグリズリーがトドメだとばかりに腕を振り上げている。

狙いは頭かな?当たったら即死だな。今度こそ殺してくれよ。生殺しはもう御免だよ。

奥では不気味な禍々しい雰囲気を纏った男が「こんなもんかよ」と呆れ顔だ。


はぁ、躰がまったく動かねぇ… 


レッドグリズリーの腕ようやく頭目掛けて振り下ろされる。


俺はそれをただ呆然と見ながら今までのことを思い出していた。


あの日、最後に見た朱莉の悲しそうな横顔。 その後の葬式で見た朱莉の綺麗な顔。

クラスメイトどもの憎たらしい顔。 必死に勉強して医学系大学に入学したこと。 無事医者になってから初めた講演会や創設した委員会。 死んでから神界でのこと。 異世界に転生したこと、転生して初めて相談相手になってくれたミーアさん。 それに戦闘技術や強くなるために訓練を付けてくれた師匠との出会い、訓練でひたすらボコられた記憶…


はは!これって走馬灯か? 


こう思い返すと俺本当に無駄な努力してきたな。


何一つ達成できてやしねぇーや。何一つやり遂げてない。


全部中途半端で終わってしまっている。


ただ学んだのは本当に大切なものは失って初めてわかる。それだけだったな。


あぁ… 二度目の人生、まぁこれでよかったんじゃないかな? 


そう思えてくるよ。








けど、けどよ… やっぱ悔しいな…。



転生しても朱莉に会うことすらできずに終わっちまったよ。

騎士たちは無事に逃げ切れたかな? これだけ時間を稼いだんだ、それにあの男は逃げ出した馬車を追う気配すらなく、何かずっと考え込んでいるみたいだ。


あの男の実力は完全な未知数だ。

男が馬車を追いかけなかったことは、本当に助かった。


俺今思ったら!結構英雄的な最後じゃね?

明かにあの馬車は貴族みたいなお偉いさんが使う馬車だった。それを守ってきた騎士たちも俺は救ったんだ!疑似的にとはいえ貴族を助けたんだぜ!人を助けて死んだんだ!俺ある意味英雄じゃないか!


俺すげぇ!異世界に転生したんだから!最後はカッコよく死ねるなんて男の鏡だぜ!


ハッハッハッハ!




けどよ… なんか虚しいよ。


やっぱり悔しいよ…。


結局は何もできてないじゃん。何も成し遂げてないじゃん。騎士たちが無事に逃げ切ったことすら確認できてないじゃねぇーかよ。それに、目的達成できてない…。


せめて、朱莉に会いたかったな。俺頑張ったんだよって… 褒めてくれるかな…? 


いや、きっと転生して、王族なんていいところの生まれになれたんだ!


俺のことなんて覚えてないだろう。いやたとえ覚えていたとしても、俺がこの異世界に来たことは知ってはいないだろう。それに人なんていつかは忘れる生き物だ。きっと忘れられるだろう。


覚えてなくてもいい、別人だと思われてもいいから…俺のこと褒めてくれないかな?



って何考えてんだ俺? 最後を着飾ろうって必死だな。

結局、何も成長してないし、変わってもいない。


地球の頃と同じだ。

ただ終わった後に気づいて、泣いて、絶望すして、後悔する。

何一つ変わってない、ただの情けない雪村幸樹だ。





――――――本当に情けない奴だよ。



あぁ… わかってるさ。俺は何も変わってないただの情けない奴だって…。



――――――認めるのか? 醜い奴だと。



何が醜いんだよ!俺は精いっぱい頑張ったじゃないか!



――――――醜いさ。本当は誰かに認めてほしかったんだろ?そのために努力してたんだろ?「朱莉のため!朱莉のため!」なにが「朱莉のため!」だ。ただただ自分の罪から逃げたいだけの自己満足だろ? 「俺はこんなに頑張った!だから、きっと赦してくれる!」誰が赦すかよ!ただ自分が赦されると勝手に解釈して無駄な努力してきた卑怯者が。本当に醜いわ。



……さぃ



――――――本当は誰かに認めてほしかったんじゃねぇーの? だけど残念!お前みたいな醜い奴なんざ誰も認めねぇーよ!



……黙れ…。



――――――汚い物には蓋をする。まさにそうだな! お前は見て見ぬふりしたもんな! 苦しくて助けてくれ!と言わんばかりのあの朱莉の横顔振り切って逃げたもんな!



……うる、さぃ…



――――――そんな醜い男が自分だけが助かるなんざ夢見てるんじゃねぇーよ!その涙は誰のために流してんだ?



うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!



――――――どーせ!自分のために泣いてるんだろ?自分可愛くて、俺は頑張った!って自分を慰めて、自分をカッコよく終わろうと考えているだけなんだろ!本当に醜い、キモい奴だな!



うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!



――――――図星突かれて泣きべそか? 今更、お前が何を願おうが、どーせ死ぬお前に未来はない。過去もない。全部消えるだけだ。



うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!




気が付くと、いつの間にか辺り一面真っ白な世界に俺は居た。


辺り一面何もない。まるで神界に居たときのような感覚だ。ここは何処だと考えていると、何者かの足音が辺りに響いた。何もない場所からコツコツと、革靴を履いて廊下を歩いているときになるような足音が聞こえてくる。その足音は、段々を俺の方に近づいてくる。


やがて、その足音の主の姿が見えてくる。


そいつは地球に生きてた頃の雪村幸樹とそっくりだ。

いや、事故死した二十九の俺に比べると若い。おそらく高校生時代の俺だ。


そいつが話しかけてくる。

正直さっきまでひたすらディスってきたのが自分だっとは考えたくもないし、なにより今は誰も話しかけてほしくない、声なんて聞きたくない。


頭を抱えその場でしゃがみ込むが、変わらずその昔の俺の姿に似た奴は話しかけてくる。

耳を塞いでいるはずなのに、なぜかそいつの声は頭の中に直接響いてくる。





「いい加減に過去に囚われるのはやめろ!アレク!」







本当にこの作品を読んで下さる読者の方々、ありがとうございます!

やっとアレクくんを殺すことができそうです(笑)


表現って難しいですね…。戦闘シーンとかうまく書けないからグダグダになってしまいそうです。なんとかうまいこと書こう!書こう!とし過ぎて編集を重ねすぎて文章が余計にわかりづらくなってる気がします。こんなグダグダな作品を読んで下さり本当の読者の方々には感謝しかないです!


頑張ってとりあえず目標は第一章完結まで持っていきたいと思います!

学園編や組織創設編、帝国編や、帝国革命戦争編と書きたいことが頭の中にあるのに、それを文章に起こすって本当に大変ですね。改めて小説を書いている人の苦労が身に染みてわかります。


これからも応援のほどよろしくお願いします!ここまで読んで下さった方本当にありがとうございます!

これからもよろしくお願いいします!( *´艸`)アリガトー^^♪


(2019/3/14 23:50)

総合評価:138pt ブックマーク登録:43件 総合PV(アクセス):7,559pv

本当にたくさんの方々の評価や登録ありがとうございます!リアル友人のなろう作家の方からPVの見方教えてもらったので、なんとなく書いてみたくなり書きました!(*´ω`)アッハッハ♪

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