23.潜在能力の発揮
※執筆途中の文章を投稿してしまい、申し訳ございませんでした。現在は書き終わっております。本当に申し訳ございませんでした。
※追加記載と編集しました。 (3/9 21:17)
気まぐれトーカ!
次回予告!主人公死んでもらおうかな…笑
俺はすでに大群の魔物たちによって周囲を包囲されていた。
覚悟を決め、敵のど真ん中へとその身を投げ出した結果だ。傍から見れば自殺行為に等しい動きだっただろう。しかし、多数の敵とやりあうなら敵のど真ん中でやるのが一番理想的だ。
数が多い分、相手は味方の邪魔をしてしまうリスクがあるためうかつには動けない。それに囲めるからといって一度に大群が襲ってこれるわけでもない。せいぜい10匹程度が限度だ。
誰かこそ俺は飛び込んだ。それに今の俺は普段の俺とは違う気がする。普段の俺なら絶対に焦っている状況だ。しかし心は自然と落ち着いている。周りにはシャドーウルフやゴブリン、オーク、トロール… 様々な魔物たちの混合群によって取り囲まれているのにだ。
周囲を観察すると、小型の魔物が戦闘に先頭で取り囲んでいるようだ。幸いなことに数が多いため、レッドグリズリーやオーガなどの大型魔物が小型の魔物たちに邪魔されて包囲網に入れないようだ。まぁそれも時間の内だろうが。
俺は即座に魔眼を使い、魔眼の地形把握能力でこの辺り一面のみに集中させる。敵の行動と騎士団の行動を常に監視しながら、取り囲んでいる魔物たち一匹一匹の筋肉の動きや配列、表情や気配からある程度の行動動作を推測する。
魔物たちはどうやら誰かが飛び掛かるのを待っている状態だ。
シャドーウルフたちはいつでも飛び掛かれるように後脚に重心を乗せている。
ゴブリンどもは表情があって動きや考えが読みやすい。今している目は明らかに俺に対する怯えだ。俺が一瞬で仲間の影狼を瞬殺したことに恐怖を感じて怯えているのだろう。
周囲を冷静に観察していると、魔物の一匹がついにしびれを切らした。
一匹のシャドーウルフが後ろから飛び掛かってくる。当然ながら魔眼能力の地形把握能力で脳内で立体映像として見えている。
俺はポーチから投擲用のナイフを四本取り出し、一本を後ろを見ないまま飛び掛かってくる影狼に手首のスナップのみで投擲する。影狼と俺の距離はだいたい三メートルくらいだ。この距離なら手首のスナップで十分届くし、外すことなど万に一つもない。
投擲したナイフは見事に影狼の眼に命中し、痛みと突然視界を奪われたことでその場でのたうち回る。しかし、さすがは野生の獣、いや魔物か。すぐに起き上がり再度、襲い掛かってくる。どうやらナイフ一本では牽制程度の効果しかないようだ。
その一匹の影狼の突撃をかわきりに次々と魔物たちが飛び掛かってくる。
しかし俺は慌てず、冷静に分析していく。
どうやら一番速く俺への攻撃到着が予測されるのは右斜め後ろの影狼のようだ。
俺は左手に持っていた投擲ナイフで一番速く到達するであろう影狼に投擲する。
予備動作なしで投擲されたナイフは見事に影狼に命中し、その場でのたうちまわり一瞬動きが止まる。
あくまでこれは牽制と動作妨害だ。後ろから襲い掛かってくる奴を対処していれば前のやつらに隙を与える事になる為、まずは邪魔な排除から始める。
次に俺に到着が予測されるのが正面の奴らだ。
正面からはゴブリンが錆びた剣や棍棒を振り回しながらやってくる。動きは単純でわかりやすい。上からの振り下ろしと横への振り回しだ。そんな幼稚な攻撃が今の俺に当たるはずがない。転生してきた頃ならおそらく反応出来なかっただろうが、今でははっきりと剣筋まで見える。
俺は前方のゴブリン目掛けて走る。
許容限界ギリギリまで魔力を纏った身体強化は凄まじく、一瞬でゴブリン同士の間に躰をすり込ませる。すり抜ける直前で右手に持っていたショートソードを一閃。即座に二体のゴブリンの首を跳ね飛ばす。
すり抜けた先にも当然の如くゴブリンが居る。しかし、突然目の前に現れたことにビビったゴブリン数体の動きが止まっていたので一緒に首を跳ね飛ばす。
首の亡くなったゴブリンはその場で倒れ始める。
倒れる速度は約0.8秒か、遅すぎる。
脳内地図で、すぐ後ろから影狼が三体襲ってくるのがが分かったので、倒れかけていた首のない小鬼の遺体を蹴り飛ばして影狼にぶつけて動きを妨害する。
影狼に見事に命中する。突拍子の無い突然の妨害により影狼たちは、躱すことが出来ず、その場で転んだり、怯んだりして動きが一瞬止まる。
一瞬でも動きが止まればそれは隙だ。
その隙を逃すほど俺は優しくはない。
即座に次の行動に躰を動かす。
前方に左手に持っていた残り投擲ナイフ三本を投げ、前方を牽制しつつ後ろにバックダッシュして動きが止まっていた影狼三体を右手の剣で確実に仕留める。
次々と魔物たちが襲い掛かってくるが、冷静に状況を把握して、最善手を打ちながら対処を行う。攻撃動作に入る前に動きを阻害したり、死体を蹴り飛ばしたり、確実に隙を作って突いていく。
こんな芸当が出来るようになったのは間違いなく師匠との訓練の賜物だ。
普段から恐ろしい敏捷性と判断能力で襲いかかってくる師匠の攻撃と比べると断然遅い。
それからも次々と襲ってくる魔物に対して一つ一つ確実に攻撃を躱し、敵の動きを先読みして行動を阻害し潰す。隙を作っては確実に首や胴体を両断していく。
それは今までに味わったことのない体験だった。
躰が思った通りに動く。視野が広がり相手の動作までもはっきり見える。作った隙も瞬きほどしか無いが、それさえも確実に突ける敏捷性もある。
辺りは俺に切り刻まれた魔物達の死骸で埋め尽くされているのに心は落ち着いているのだ。そんな風に考えていても魔物の攻撃が止むことはない。
確実に対処していく。中には逃げ出そうとする魔物もいたので空いている左手でミーアさんから教わった初級風魔法の《ウィンド・カッター》で仕留めていく。
魔法は詠唱することによってイメージを明確化し、発動させるが、イメージがしっかりとしていれば無詠唱で魔力の流れさえ掴めれば使用できるのだ。それに何より《ウィンド・カッター》は最も使いやすく、また燃費も良く、効率の良い魔法なのでずっと愛用している。
師匠から教わった戦闘技術とミーアさんからの魔法指導で身に着けた魔法。三年の努力が今十分発揮されている。
しかし喜びの感情すらも沸かない。それは邪念であるため、今この場では必要ない感情として無意識に断絶されている。
頭の中は常に冷静な分析と周囲の状況判断、敵の動きや攻撃到達予測、攻撃速度や被害分析といった様々な情報を即座に理解、最適判断、対処推測、実行する。
それらが可能になったのは、俺が極限の集中状態に入れているからこそなのであった。
◇◇◇
極限の集中状態 それは――――
余計な思考や感情が無くなり、その者の実力をフルで発揮できる状態。
日常で入れる集中状態とは違い、集中を超えた極限の集中状態のことを言う。
師匠との訓練を初めて一年ほど立った時には、俺はその言葉を師匠の口からきいた。
「普段のアレクくんは、ボクとの訓練で、集中して相手の挙動に意識を向けて対処する方法をとっていると思います。しかし、それはあくまで初歩的なことなんスよ。」
「……俺ようやく初歩的なことできるようになったんだ… へー…そー…」
「そう一々落ち込むな。素質のあるやつでも数年は修行して会得できるモノだ。それを一年ちょっとの訓練で身に着けることが出来た。凄まじいセンスでスよ。」
「ちなみにそのことを俺の故郷では『氣の感知』と呼ばれているモノです。何となくの気配や相手の挙動の感知、そういうモノから発せられるエネルギーを統合して“氣”っていわれてる。それをアレクくんは無意識で感知してました。本当に素晴らしい戦闘センスっスね」
正直嬉しかった。なんか自分の努力が実ったような幸福感を感じる。
はぁ頑張っててよかったぁああ!
「けどそれは初歩的なモノっす」
……上げて落とす。鬼ですか?あ、鬼でしたね。
「人は本来持っている潜在能力を発揮できないんでスよ。氣の感知、それもいわば人の本来持っている潜在能力の一種なんス。人の気配をより強く感じる力、普段は出せない許容限界の力を超えた力、俗にいう火事場の馬鹿力って奴ッス。それは全て人の理性が押さえつけているモノなんでス。」
俺は、この話を知っている。確か人は本来出せる100%の力は出せない。どんなに鍛えた人でも80%が限度だって話だ。命の危機が迫った時に人は初めて100%の力を出せるという。地球に居たころに、消防士が家事現場で落石に会い、一人落石の下敷きになった話がある。その消防士はなんと片手で250kg以上あったと言われる落石を持ち上げどかし、自力で脱出したっていう話だ。
人は成長と共に原子反射と呼ばれる乳幼児期に視られる反射がある。これも人間が生まれながらに備わっている反射であり人間の本能だ。しかし大人になるにつれて消えていく反射だ。人間心理学のお偉いさんのお言葉をお借りして言うと“人は生まれながらに未熟だ”という言葉がある。
つまり言いたいことは、人は人間本来の力を制限している状態ってことになる。それは理性であり、肉体の許容上限が存在しているから無意識に理性が押さえ込んでいるモノだと俺は習った。
だがもし、本来の力である本能を百パーセント発揮することが出来れば、凄まじい力となるだろう。
感情豊かで、自分を律し、制御する理性があり、生物本来備わっている本能を自在に操作できればそれは史上最強の生物となる完璧な生物だろう。
もしかして、この異世界ではそれが可能なのか?
「さっすが!そのお医者さまと呼ばれるだけあって理解が速くて助かりまス!それを疑似的に発揮できる状態が極限の集中状態と呼ばれるモノなんでス。」
「これからの訓練は、それを発揮できるようにするための訓練に変えます。アタシは全力でアレクさんを殺しにいきます。死なないように注意してくださいね」
え?ちょっとまて… 全力で殺しに行きますだと!? 普段から俺を殺しに来ている奴のセリフではないな。
そう頭の中でボケていると、師匠の姿が掻き消えた。次の瞬間俺は近くにあった木に打ち付けられていた。
「…な、なに…が…おき、た……」
後頭部に激しい痛みが襲い、身体が一ミリも動かす地面にズリ落ちる。師匠の姿は木刀を振り抜いた姿だった。俺は一撃で伸されたんだろう。それ考えているうちに俺は気を失った。
これが地獄の訓練の始まりであり、現在でも続いている日課の始まりだった。
◇◇◇
そんな事を思い出しながら、自分の状況を考える。間違いなくこの状態は入っている。
初めて入れた状態だ。
いままで師匠との訓練では入れなかった状態だ。
少し一体だけ集中してみれば、動く時に微妙な力の入り具合や筋肉の動きや配置で次の攻撃の映像がわかる。凄まじい観察眼だ。
周りではすでに恐れをなしたシャドーウルフやゴブリン達が一目散に逃げだしている。敵に背中を見せて逃げ出すとは獣失格だな。わざわざ深追いする必要はない。
俺は贈与:吸引を使って背中を向けて逃げ出す魔物たちを自分の方に引き寄せる。その数7体。ほぼ全方位から飛んでくる奴を躰を駒のように回転させ斬る。これで粗方、小型の雑魚魔物たちの処理は終えただろう。次はこの魔物集団の要である大型魔物の処理だ。
豚人、人食い鬼、血塗れ赤熊…
脳内地図でも数えきれないほどの数がまだ残っている。通常個体から変異種、おそらく上位種も混じっているだろう。
これだけ仲間がやられても逃げ出さないあたり、こいつらは何かしらの目的があって集まっている集団だと予測できる。
当然のことながら、統率者が居るだろう。そして統率者を操る黒幕の存在も考えられる。このクラスの魔物達を従えられている時点で黒幕の実力がある程度推測出来る。間違いなくとんでもない実力の持ち主だろう。今の俺では勝てないレベルだ。
冒険者ギルドで定めている討伐ランクで例えるならAランク相当の魔物がほとんどだ。闘級も軽く8000を超えているような化け物魔物だ。
そんな化け物魔物を従えている奴なんかとぶつかる訳には行かない。何としてもぶつかる前に撤退しないとまずい。しかし、いかんせん数が多過ぎる。まずはこの邪魔な奴らの数を減らすことが先決だ。
目の前から大量の大型魔物たちが襲い掛かってくる。一撃一撃が致命傷になり、下手すれば即死レベルの被害を受けるだろう。確実に躱して、反撃を叩き込んでいくしかない。俺はひたすら戦いつづけた。




