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19.いつもの日課

気まぐれトーカ。

目が覚めると、そこは見覚えのある天井が見えた。



「……見覚えのある天井だ」



どうやら何時ものように俺は師匠によってのされ、寝室まで運ばれたようだ。

まわりには師匠の姿はない。師匠も冒険者なのでおそらく先に仕事に向かったのだろう。

顔面がやたらヒリヒリする。気絶する直前の記憶がぼんやりと浮かんでくる。



「はぁ… いい線いってたんだと思ったんだけどなぁ」



何時もの日課で行う師匠の訓練。さっきの訓練のことを思い出しながら自分で反省点を考えていく。

今まで何度か師匠の癖を見抜いて懐に入ろうとしてきたが、入る前に気絶させられていたので出来なかったが、今回は癖を付いて見事に懐に入ることが出来た。しかし、師匠に躱されてしまったのだ。


懐に入って確実に木剣を叩き込む作戦だったが、まったく反応できずに躱され、気絶させられてしまった。っていうか何で毎度毎度気絶させられるんだろうか?



自分から頼み込んだことなので鍛えてくれていることは嬉しいのだが、毎度毎度気絶させられるこっちの身にもなってほしいものだ。



俺はふと外を見る。寝室に取り付けられた窓から陽の光が差し込んでいる。



今は昼頃だろうか?寝室の窓から見える太陽から時間を予測する。

完全に陽が昇り、太陽が真上に近いところまで登っている。ちょうど昼頃か。



今日もまた午前中は気絶させられたようだ。

俺はため息を一つついてベットから降りて身支度を始める。



いつもの訓練で午前中はつぶれるので午後から冒険者ギルドで依頼を受けてこなし、その帰りに今日の晩飯を狩猟して帰るのがここ三年間の日課だ。



俺は訓練着を脱いで、ベットの下に置いてある籠に入れる。自作で作った木製ハンガーに掛けてある冒険者用の服に着替える。メルキドの武器屋で買った軽いブロンズ製のショートソードと皮の胸当てを装備する。腰に予備の武器である短剣とポーチを付ける。



ポーチには傷薬である赤色のポーションと魔力の補充に使う青色のポーションの小瓶が四本と火起こしのための火打石などの冒険者の最低限装備が入っている。



身支度を済ませ、忘れ物がないかを確認する。

腰のところを手でたたきながら「短剣よーしっ!」「ポーチよーっしっ!」と口に出しながら確認をする。短剣を引き抜いて刃こぼれがないかを確認して鞘に収める。同様にポーチの中もしっかり確認する。



「おっといけない!」



俺は一つ忘れ物をしていることに気が付いた。

俺は急いで寝室にある洋服箪笥(自作)の中から一本の剣をとる。

いや、剣と呼べるような者ではないが。短剣用の鞘に納められている剣の柄を取り、引き抜く。



そこにはあるべきはずの刃がない剣だった。この剣には刀身部分がなく、柄のみの剣なのだ。

この剣は師匠から「御守りとして持っておけ。」と言われ冒険に行くときは身に着けてから行け!と義務付けられている剣だ。



こんな刀身部分のない剣で何をすればいいのか分からないが、師匠からは肌身離さず持っておくように言われているので、冒険に行くときは必ず持って行っている。師匠曰く、この刃のない柄のみの剣は古代遺産の“魔剣”の一種らしい。



名を【無名の魔剣】と言うらしい。

師匠によると持ち主の意思や思想によって能力が発現し、刀身部分と魔剣の真名が分かるらしいが、今のところ貰ってから二年が立つが変化の兆しがない。正直邪魔だ。




◇◇◇



この世界の魔剣とは主に二種類に分けられる。



一つが古代遺跡から発掘された剣や太古の超魔法文明時代に製作された剣が現代まで伝わっている剣などが古代遺産産の魔剣だ。

この魔剣は一つ一つが強力な能力を有しており、現代の文明レベルでは生成不可能とまで言われている。

それに魔剣の中には意思を持っており、魔剣の認めた者しか持つことができない魔剣もあるらしい。かつてこの世界を魔王から救った勇者の持っている聖剣もここに属する。


もう一つが現代の鍛冶師によって作り出される魔法剣だ。

鍛冶師が作った剣に付与術師が魔法を剣に封じ込めたり、付与することによって魔法剣と化す。

主に火属性の魔法剣が多く、一般的に魔剣と言われたら後者である魔法剣のことを指すそうだ。


前者の魔剣は珍しく高位階級の冒険者や十二使徒クラスの猛者くらいしか持って居らず、また数も少ない。



そして俺が師匠から貰った魔剣は前者の古代遺産(アーティファクト)産にカテゴリーされている。


古代遺跡で極稀に『無名の魔剣』という魔剣が遺跡で発掘されることがある。

この魔剣には刀身がなく、なんと剣の柄の部分しかないのだ。それになんの魔法も付与もされておらず、

魔法剣の製作段階で破棄されたものだろうと考えられていた。


しかし、ある冒険者がお守り代わりに持ち歩いていたところ、その『無名の魔剣』が変化したのだ。

変化した魔剣はその冒険者固有の魔剣となり、冒険者は絶大な力を得たのだ。


そして冒険者は英雄となった。


その冒険者の英雄譚に憧れ、誰もが『無名の魔剣』を手に入れたが、誰も無名の魔剣から進化させることができなかったのだ。今までで無名の魔剣を所持者の中で魔剣が進化を遂げたのはその英雄が手にした一本のみなのだ。


そのため、この『無名の魔剣』は素質ある者しか扱えない、もしくはその冒険者の作り話なのではないのか?と様々議論が飛び交っており、何のために製造されたのか?それともただの失敗作なのか?などの疑問が多く残る世界の謎の一つとされている魔剣なのである。



◇◇◇



俺はそんなお荷物状態の柄しかない剣を腰のショートソードと同じように装着する。

見た目は完全に二刀流使いの剣士に見れるだろうが、俺は本業は魔法戦士で回復術師も兼業している。



ぶっちゃけ剣より魔法の方が得意だが、師匠は魔法が苦手なので師匠から剣術と戦闘術、冒険知識を教えてもらい、冒険者ギルドの受付嬢であるミーアさんから魔法の手引きをしてもらったのだ。



そのおかげで十歳にしてDランク冒険者まで上がることができた。

Dランク冒険者はベテラン冒険者であるCランクのワンランク下の階級だが、実質上級者領域(ベテラン)に入っている中間階級(ミドルランク)だ。


それと、回復術師を兼任している理由はたまたまギルドに怪我をした冒険者が運び込まれた所、俺が治療魔法で冒険者を治療した所、ミーアさんから驚かれ「治癒魔法が使えるなら職業欄に僧侶か回復術師としてギルドに登録できるわよ?」と言われ、冒険者ギルド登録当時は無記載にしておいた職業欄に『回復術師』の職業を登録してもらったのだ。



剣に魔法に治癒といった万能型になった俺は様々な冒険者から勧誘されたりしたが、明かにカモにしようと企んでる連中やヤバい雰囲気を纏った冒険者が多かったので師匠と一緒にパーティを組んでいる設定にして勧誘を断った。


ちなみに師匠はメルキド支部でも屈指の実力を持つBランク冒険者らしい。



なんでも登録初日に魔の森に現れたワイバーンを単独で討伐してきたため、一気に飛び級でDランクに昇格後、その後の昇格試験を受け見事合格し、現在では最速のBランク冒険者としてメルキドで有名になっている。



そんな冒険者のパーティメンバーなので今では勧誘されることがなくなり、助かっている。



このことを師匠に話すと「別にかまわないよ」と言ってくれたので良かった。



俺は昨日の狩りしている時に偶然遭遇したゴブリンを討伐していたので討伐部位である耳を切り取って袋に入れて保存していた。今日はこのゴブリンの討伐報酬を貰いに、あとついでに採取系や簡単な討伐系の依頼がないかを見に、冒険者ギルドに向かうことにした。

※気持ちの整理がつき始めましたので削除しました。



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