第2話 初心者(ビギナー)
よろしくお願いします!
俺はシオリとパーティーを組む事になった。
早速、《EMO》にログインをする。
シオリによるとシオリはパーティーを組むのがコレで2回目だとか……。
「えっとシオリは……」
「カゲミツこっちよ」
俺が振り向くとそこにはシオリがいた。
相変わらず現実と似てない……。
まさかこんな少女が現実では小学生なんて誰も思わなかっただろう。俺もその一人だ。
少し不機嫌そうにシオリは俺の側に近寄る。
「どうしたそんな顔して?」
「なんか注目されてないかしら」
「あぁ……そりゃあPvP最強と言われ、最前線の時は最強の暗殺者って謳われた俺をシオリが倒したんだから注目は集めるよ」
シオリに負けた時の動画も上がってた。
そこから一気にコメントは炎上。
誰もが女性プレイヤーのシオリが俺を倒すとは思っていなかったのだろう。
散々、悪口書かれてたし。
「それより……シオリ一ついいか」
「何よ?」
「なんだその装備」
「…………変かしら?」
「……いや………………初期装備だよね?」
見間違えるはずがない。
シオリが装備しているのは全て初期装備。
レベルがない《EMO》ではスキルの次に装備が勝利に影響すると言われている。
それなのにシオリの装備は初期装備だった。
「昨日もこの装備だったけど?」
「えっ……」
確かにシオリのこの姿に見覚えがある。
安い皮で出来た鎧。
安い皮で出来た靴。
その他……安い手袋や鞄などがあった。
完璧に初期装備。
「まさかと思うが……シオリって初心者?」
「本格的に始めたのは最近ね」
「……モンスターと戦ったことは?」
「2回ぐらいかしら?」
「…………それで俺に勝ったと」
「そうなるわね」
何となく予想はしていたが……。
まさかシオリが本当に初心者だったとは。
だが、PvPで戦った時の動きは初心者などではなかった。あの動きは普通は上級者でも殆ど出せないほどの動き。それをシオリは俺に戦いの最中に見せた。ミスをする事なく。
もし仮にシオリがモンスターとの戦い方も覚えたとしたら……その時は俺を超える。
……断言出来る。
シオリは俺より強くなるだろう。
「じゃあ……ゴブリンでも倒しに行くか?」
「ゴブリン?」
「ほら、あの緑色の小鬼」
「……?」
おい……まさかゴブリンも知らないのか。
どんだけ初心者なんだよ。
「カゲミツどうしたの?」
「いや……シオリって無垢だなって」
「何よ無垢って……それより行きましょ? そのゴブリンって言うのを倒しに」
その後。
俺とシオリはゴブリン倒しに来ていた。
見渡す限りの草原。
生い茂る草木や花。
ここは最初の街『ビギニング』の近くにある縁岩の草原と言われているエリアだ。
緑岩の草原には初期モンスターしか実現しない。スライムやゴブリンと言ったところだ。
シオリの力を鍛えるには最適な場所だろう。
「それでゴブリンってどこにいるの?」
「もう少し行った先だ」
俺はシオリとパーティーを組んでいる。
だが、《EMO》はレベルが無いので、経験者もパーティーを組んでもデメリットがない。その為、俺は伸び伸びとシオリを育てれる。
「あとシオリ」
「なに?」
「俺、今回の戦闘は参加しないからな」
「……えっ?」
シオリは少し寂しそうな表情を見せた。
……可愛い。
いや……ダメだ。
可愛い子には旅をさせろと同じ事。
シオリには少しでも経験を積んで欲しい。
「危険になったら流石に助けるから」
「本当に助けるわよね?」
「必ず助けるから大丈夫」
シオリは「ふんっ」と言ってそっぽを向く。
顔をが赤くなっているのは気のせいだろう。
「ほら……いたぞシオリ」
俺はゆっくりと前の方を指差した。
その先には緑色の肌を保つ小鬼がいた。
数は見えるだけで三体。
「シオリ……岩の後ろにも二体いる」
「よく見えるわね」
「ま、まぁ……視力がいいからな」
シオリには内緒だが、俺はスキルを発動させている。遠くや障害物すら見通すスキル。
暗殺者専用スキル『インビシブル・アイ』
不自然に俺の目は輝いていた。
「さ、頑張れよシオリ」
「わかってるわよ!」
シオリはそう叫び俺の側を離れる。
ゆっくりとシオリはゴブリンに歩み寄った。
ゴブリンはシオリの姿をまだ発見してない。
今が不意を突く絶好のチャンスだろう。
俺がそう思っていると、
「……っ!」
シオリは真っ直ぐにゴブリンに突っ込んだ。
剣を構えて凄まじい速度でゴブリンに近寄り、ゴブリンの頭を横に吹き飛ばした。
騎士専用スキル『アクセルスラッシュ』
前方向に駆け出し敵を切り裂くスキルだ。
発動したら数秒間の内にシステムアシストが入り、高速で移動を始める。剣を振り下ろすタイミングは自分次第になるのが欠点。
しかし、シオリは見事にゴブリンの首を刎ねた。先ずは一体のゴブリンを倒した。
残りは目の前に二体と岩の後ろに二体だ。
「ゴァァァァァァッ!」
目の前にいる二体のゴブリンがシオリを見つけ、シオリに向かって威嚇を始めた。
シオリは怖じけることなく剣を構える。
その瞬間、ゴブリンは草原を駆け出しシオリに向かって飛びかかった。シオリは飛びかかってきたゴブリンに視線を向け、冷静に判断をして、そのゴブリンを避けた。
ゴブリンはシオリがいなくなった事により、バランスを崩しながら地面に着地する。
「はぁぁぁぁ!」
その隙を突いてシオリは剣撃を加えた。
ゴブリンの身体が真っ二つに切られる。
血飛沫を撒き散らしゴブリンは消え去った。
「次は!」
「ゴァァァァァァ!」
もう一体のゴブリンは仲間を目の前で二回も切られた事に少し怯えながらも、明らかに怒りを示して、シオリに攻撃を繰り出す。
右手に握られた錆びた剣をゴブリンは振る。
シオリはその剣を自分の持っていたロングソードで防ぎながら、ゴブリンの顔に目掛けて足を突き出し蹴り飛ばした。
(……やはりあの行動は見覚えがある)
どこか似ていると思っていたが、あの動きは完璧に俺の動きを再現しているモノだった。
シオリの奴め……俺の動きを覚えているな。
「ガァァァ!?」
シオリに蹴られたゴブリンは戸惑った表情を見せたが、倒れた所をシオリの剣が腹部に突き刺さり、見る見るうちにHPが無くなった。
透明になりゴブリンの死体は消える。
残るゴブリンは岩に隠れている二体のみ。
シオリは岩に隠れているゴブリンの側に駆け寄った。待ち伏せをしていたゴブリンは、シオリが視界に映った瞬間に岩の影から飛び出し、シオリに襲いかかろうとする。
だが、シオリはその行動を読んでおり、ゴブリンが飛び出してきた瞬間に剣を構えて、空中でゴブリンを身体ごと切り裂いた。
血飛沫を上げゴブリンは倒れ込む。
隣にいたゴブリンは悲鳴らしき声を上げた。
「終わりね」
戸惑うゴブリンにシオリがトドメを刺す。
片手剣専用スキル『クルスブレイド』
左右、上下の四連撃の斬撃がゴブリンに牙を立て、ゴブリンのHPは消え……消滅した。
ゴブリンを倒した報酬がシオリに配られる。
俺は何もしてないので報酬は無し。
「よくやったなシオリ」
「ふん……楽だったわね」
「ま、シオリなら楽だと思ってたが」
俺はそう言いながら短刀を抜き出した。
小竜景光の刃が眩い光を放つ。
シオリは俺がなぜ剣を抜いたか分からず、首を傾げながら俺の方を凝視している。
「シオリ……ここからが本命だ」
「えっ? 何言ってるの……」
シオリが俺に言葉を言いかけた時、「ドン」っと地面が揺れ、巨大なモンスターが俺とシオリの目の前に姿を現したのだった。
レイドボス『ブラックウルフ』
ゴブリンの血の匂いに呼ばれて出現する設定の狼の姿をした巨大ボスだった。
身長は俺の四倍近くはある。先ほどのゴブリンと比べると……虚しいほどの違いだろう。
「な、何よアレ! カゲミツ!?」
「ほぉ……ブラックウルフか……」
「なに悠長に感心してんのよ!」
「意外に珍しいんだぞ……コイツ」
俺は『ゴブリン・ロード』が出ると思っていたんだが、運がいいのか悪いのか……。
強さは圧倒的に『ブラックウルフ』の方が強い。この縁岩の草原で出てくるボスの中では、一番に強い相手ではあるだろう。
「さて……やるぞシオリ!」
「あぁ! もう分かったわよ! やればいいんでしょ! こんな奴……コテンパンにしてやる」
シオリもやる気を見せ剣を前に構えた。
緊急クエストのマークが表示される。
その瞬間……。
「ガアァァァァァァァァァッ!」
凄まじい雄叫びを黒狼は轟かせた。
次は短くなると思います。




