【昔話 兵(つわもの)の掘る穴ー真実その4・前編ー】
結局、執事のロックと妻であるカリンには"グロー・ブバルディア"事、グロリオーサ・サンフラワーの事を教えたピーンでした。
そして、ロックが早馬まで使って知らせにきたのは、例の"取り潰し"が行われた領地の事でした。
『へぇ、ピーンの奥方殿は可愛らしいな。
とても子どもが6人もいるようには見えない。
紅茶も美味いし、ピーンはいい奥さんを貰ったな』
領主の私室である書斎にある、シンプルだが座り心地の良い椅子に腰掛け、グロリオーサがカリンにいれてもらった紅茶を飲みながら明るく言う。
ちなみにグロリオーサは風呂も借りて、服も来客用にあったシンプルな物に着替えていたが、太刀だけは腰に携えている。
王族の紋章が刻まれている冑金の部分には、(直ぐにでも一触即発な状態なりそうなのを防ぐために)グロリオーサの正体を教えてもらったロックが、気を回して飾りに見えるように、器用に布を領主の館に入る前に巻いてくれていた。
そして書斎に入ってからは夫人であるカリンにだけ、グロリオーサの素性を証明する為に紋章の部分を見せると、恭しく頭を下げて礼節をもって挨拶をした後に、領主夫人として直々に紅茶を支度したのであった。
しかし、グロリオーサの飾らない誉めことばに、領主夫人として大分落ち着きはあるが、馴れない人物にはまだまだ人見知りが出てしまう。
グロリオーサが一応は誉め言葉をくれたのが判るカリンは、それこそ嫁いできたばかりの娘のようにポッと頬を紅くして、俯いてしまっていた。
『あ、ありがとうございます、グロリオーサ、様』
やっとそれだけ口にして、領地の"賓客"となったグロリオーサに小さく頭を下げて、それきりで固まってしまう。
『カリンは6人産んでくれたけれど、初産が十代だったから、まだ三十路を過ぎたたばかりだからなぁ。
互いに一人っ子だったから、子どもは多い方が良いってのもあって、若い内に頑張ったんだ』
『旦那様っ!』
ピーンがイタズラっぽくグロリオーサに言うと、カリンが更に真っ赤になって俯くので、ロックがそれを諌める。
『あはははっ、多分うちのトレニアの方が年下なんだろうが、"可愛い"って抱き締めたくなるタイプの奥方殿だ。
奥方殿、紅茶をありがとう、美味かった!』
グロリオーサが愉快そうに言って、まだ熱いだろうに、茶をあっという間に飲み干した。
『―――グロリオーサ様、カリン様は可愛らしく見えますが、私よりも年上ですし領主夫人。
そんな抱きつくだなんて表現は、お控えください』
カリンは何時もは柔らかな態度で、心うちでは信頼出来る弟のようなロックが、この客人に関してはやけに冷たい事に、恥ずかしがっていた紅い顔も引っ込めて、驚いて顔をあげた。
『おっ?そうか、すまんな。
まあ、トレニアは女なんだが、可愛らしい女性と赤ん坊が好きなんでな。
特に奥方殿みたいな、艶のある黒髪に緑色が入ったような神秘的っていうのか?。
そういうのと"守ってあげなければならない"みたいなタイプが大好きなんでなぁ』
だがグロリオーサはこういったロックの対応が常套だと思っているのか、対して気にしている様子はなかった。
『成る程、庇護欲をそそる相手がトレニア殿は好みというわけだな。
中々の男前な性格とお見受けする…ロック茶菓子をくれないか?』
そしてピーンはどうしてもロックが賓客に対して、あまり宜しくない感情を持っているのが判るので極力間に入るようにして、準備してくれた茶菓子を頼む。
(もしもグロリオーサと力で衝突したのなら、負けるのはうちのロックと言うのが目に見えている)
しかし、また興味深い話を聞かされた。
鬼神と言われるような男に勝ったという女性、トレニア・ブバルディア。
グロリオーサは知ってか知らずか、トレニアの話を続けてくれる。
『ああ、自他共に認める"男前"な女だ。
主に魔法が得意だけれども、鞭も使って戦うし、冗談も判る良い奴だ。
子どもも大好きで、きっと、奥方殿とあったのなら6人も産んだという事を聞いたなら、尊敬の眼差しで見つめて、ついでに抱き締めるだろうな』
嬉しく楽しそうに語りながらもグロリオーサの瞳が、ほんの少しだけ翳ったように見えたのを、カリンは気がついた。
『あの、失礼かもしれませんが、トレニアさんは仲間の方で、たしか唯一女性でいらっしゃるんですよね』
また"抱き締める"という表現をするグロリオーサに、執事は静かに冷ややかな視線を投げ掛けるが、やはり鬼神は気にしてはいない。
カリンはロックの冷たい視線に気がつきながらも、男前だというトレニアという女性を気にかけて言葉を続ける。
『レジスタンスにいると言うことは…トレニアさんは自分がお子さんを持つという事を考えていない…のでしょうか?』
カリンは女性ならではの感覚で、その事に気がついて心配して言葉をグロリオーサにかける。
『―――カリン』
珍しくピーンが笑顔だが静かに、諌める調子でカリンに声をかける。
ピーンに言われて、カリンは結構デリケートな問題に口を出してしてしまっている事に気がついて、ハッとして小さな口許を押さえた。
『あ、申し訳ありません、領主様、それにグロリオーサ様』
直ぐに頭を下げる妻に、ピーンが苦笑いを浮かべる。
『いや、お前には領民の不満の窓口で、意見を引き出す役目頼んでもいるから、仕事の癖が出たのだろう。
カリンがそうやって仕事に取り組んでいてくれているから、私も助けられている。
そして、グロリオーサ…"グロー"にもその仕事で見るような片鱗が、カリンには伺えたという事なんだろう』
妻であるカリンに感謝の言葉を出しつつ、少しだけ気落ちした風にも見える友人"グロー"に目を向けた。
――領主が"賢者"であるという事もあって、領民から様々な相談事も寄せられている。
その中には仲は睦まじいのに子どもが出来ないといった夫婦ものや、余計な世話だと思われる、年配世代の口に出すのにも憚れるような物もある。
ここでは賢者の知識と限らず、若い頃に見聞した世間について学んだ事が大層役にたって、どちらかと言えば処世術の一部を活用して領民の気持ちを宥めて、解決に繋がるアドバイスをしていた。
しかし、稀に難癖をつけたいだけみたいなご仁もいるので、その時は領主夫人であるカリンが相手をする。
カリンは大人しい外見な上に話を聞くのが上手で、その人の本当の不満や本音を上手いこと引き出して、ピーンに知らせて解決に向かうように仕向けていたりもした。
ただ、そればかりではカリンの負担が大きくなってしまうので、ロックが静かに間に入って領主であるピーンが呼んでいると伝えたり、マーサが茶菓子を持ってくるついでに尋ね事をしたりして、上手いこと切り上げていた。
そうして人の"本当の気持ち"を慮る事を、領主夫人の仕事してこなしてきたカリンには、グロリオーサがトレニアという女性に対して"申し訳ない"という気持ちを抱えているのを見越してしまっていた。
妻の手腕で明らかにされた、グロリオーサ・サンフラワーの"悩み"にも、序でにといったわけではないがピーンは目を向ける。
『―――トレニアが子どもや赤ん坊が好きなのに、それを得る機会を奪ってしまっているんじゃないかって、最近、気がついたんだ』
そう言って、腰に携える太刀に手を伸ばしてグロリオーサはゆっくりと撫でる。
『―――別に秘密にしている訳じゃないし、大っぴらにしているわけでもない事なんだが、トレニアは"人の気持ち"を拾い、読み取ってしまう力がある。
本人もよく理由は知らないんだが、紫の瞳の血族は――トレニアは両方の目がそうなんだが、そう言った力があるらしい』
『成る程、それがトレニアという女性が"魔女"と言われる所以か』
――そして、グロリオーサという鬼神にも勝てた理由。
(幼馴染みだと言っていたし、トレニアが魔術が得てで、グロリオーサの行動が読めたなら十分に勝算はとれたのだろうな)
『ただ、紫の瞳を持って生まれてしまった"ブバルディア"の一族の人は、滅多に伴侶を得て子どもを遺す事がない、とも言っていた。
余りにも明け透けに気持ちが聞こえてしまって、夫婦になったとしても互いに耐えられなくなってしまうそうなんだ…あ、ありがとう』
スッとグロリオーサの前に、ロックが早々に空にしていた紅茶のお代わりを差し出していた。
グロリオーサから空のカップとソーサーを如才なく受け取り、新しい物を渡す。
『―――どうぞ、続きを』
グロリオーサの事は気にくわないが、執事にはトレニアという女性が少しばかり気にかかったらしい。
そんな思いやりに溢れた男前の女性なら、プライベートでは引っ込み思案の姉のように慕うカリンと友人になって欲しいと、ビネガー家の執事としてロックは考えていた。
ロックの気持ちはあくまでも"ビネガー家の執事"として、動いていた。
だが、理由が分からないが、固くなな様子だった執事の態度が少しばかり軟化した事に領主夫妻は、笑顔で顔を見合わせて"賓客"の話の続きを待った。
グロリオーサも話を待たせているのがわかっているらしく、一口紅茶を飲ん含んでから、話を続け始める。
『トレニア自身も両親は普通の瞳をしていて、家族でもトレニアだけがその瞳をもって生まれてきたらしい。
気持ちが聞こえすぎる為に、思春期に入る頃、何だか色々あって家を飛び出したって。
それからは、親の元から離れて、俺が子どもの頃世話になっていた姉上が住む田舎の教会で、特に小さな子どもの面倒をみながら暮らしていた。
子ども達には、凄くなつかれてて、とても幸せそうだった』
『そのただ子どもが好きで、まあ話を聞く限り腕っぷしの方にもトレニアは自信があったのだろうが…。
それがどうして、グローが立ち上げた決起軍に入る事になったんだ?』
とりあえず、ロブロウという土地ではグロリオーサを偽名の"グロー"と呼ぶことに決めた。
そして、彼の話を聞く限り力に自信があったとしても、子どもが好きなら最もそういった争いを避けうだろうとピーンは感じていたので、それを口にする。
『子どもが好きなら、私の偏見かもしれないが、争いなんぞも好まない性格だと思うんだがな。
そんなレジスタンスに入らずとも、田舎の村で慎ましやかに暮らしておく事も…それこそ子ども達の成長を楽しみに穏やかに暮らす事も田舎ならではで、出来ただろう。
心を読んでしまう力を、別に表にださずとも子ども達からも、その親からも信頼を集めて日々を過ごすことだって可能だったはずだ。
―――それとも、腕っぷしを見込んでグローが頼んだのか?』
ピーンがグロリオーサにそう考察を述べると、既に"グロリオーサ"の事情を聞いている妻と執事もそれに同調するように小さく頷いて、グロリオーサを見た。
ただ最後に言った言葉は、"グロリオーサが誘ったのか"という言葉にはハッキリと首を横に振っていた。
『―――トレニアは自分から志願してくれた。
本当は、幼馴染みの男3人でやろうとしていた。
アングレカムや、気障な…今は決起軍から離れているジュリアンも最初、トレニアが決起軍に入ることは戸惑っていたよ』
『何が、トレニアさんを決起軍に志願するきっかけとなったのですか?』
カリンが先を促すように、グロリオーサに言葉を向けた。
グロリオーサも、促しの言葉には従って話を続ける。
『―――トレニアが教会で世話する村人の子ども達がさ、数人が病気にかかったんだ。
病気事態は、珍しい病気なんだけれど、適切に早めに治療すればなんともなかった。
少し変わった治療方法をとらなくちゃいけなくて、それは国の補助で使える特別な施設に行くことだったんだ。
それさえ使えれば十分治せる病気だった。
あいつは、すぐに教会や役所にも掛け合った』
トレニアという女性が、決起軍というレジスタンスに参加している事。
その事実で病気の子ども達の顛末は、ロブロウの人々にもそれとなく察する事は出来たが、グロリオーサの話の続きを待つ。
『でも、その当時は妙に巧妙とも見えるやり口で、地味に弄られていた国の政策で、補助の適用が使うことが簡単には出来なくなっていた。
トレニアは俺から見たならば、とても迅速に動いていたし、出来るだけの事をした。
けれど、補助を受ける為にする申請手順にばかり時間を削られていって、結局子ども達は治療が間に合わない段階になってしまっていた』
話の顛末は予想は出来ていたけれど、6人の子どもを腹を痛めて産んだ領主夫人は、今度は悲しみの為に口元に華奢な指を当て、目を潤ませてしまう。
子ども達の不幸を領主夫人が心から悼んでいてくれるのが、大雑把なレジスタンスのリーダーにでも分かったので、目礼をするとまだまだ艶やかな黒髪を悲し気に左右に振っていた。
『一応王族の俺とか、籍は抜けているけれど姉上も、役所やら、それなりに掛け合ってみてはいた。
だけど、"国王が決めた事で"の調子で、頑なに申し入れは受け入れて貰えなかった。
トレニアは、理不尽な政策を取った張本人の家族でもある俺が、全く力になれなかったのに責めないのが、逆にしんどいのもあった。
いつもなら頼まれてた水汲み忘れただけで、俺が避ける方向を見越して二段蹴り決めるような女なのに』
冗談を言ったつもりらしいが、その様子が痛ましくて、誰も冗談に乗ってやることが出来ない。
『逆に"仕方ないよ"って、小さい子どもを宥めるように俺に言ってくれたんだ』
トレニアも傷ついただろうが、同じようにグロリオーサもその時傷ついていたのを"心を読んでしまう魔女"は判っていたのだろう。
『―――その無念さで、トレニアさんはレジスタンスに?』
カリンが更に労るようにグロリオーサに声をかけた。
グロリオーサは頭を横にも縦にも振らず、紅茶のカップを見つめて、その琥珀色した水面に浮かぶ自分の顔を情け無さそうに見つめて口を開いた。
『無念さもあったけれど、トレニアは何よりも"疑問"をもってしまってもいた。
今まで目も向けていなかった俺の"父親"らしい人が行っている、この国の政治を行う為政者がどんなものなのか、会いたいとも。
頭の良いアングレカムや、近所に隠れるように住んで賢者に話を聞いて少しずつではあるけれど、施策されていた政策が、国民が気がつかないように僅かではあるけれど、やがて困窮に繋がるものだと気がついた』
"このままじゃ、この国の人も、何よりも力の弱い子ども達がどんどん不幸せになってしまう。
せっかく生まれてきたのに、幸せになれない"
『色んな話を聞いて、考えられるだけ考えぬいたみたいだった。
最後に、トレニアが一番大切にしたい子ども達にどうしても皺寄せ繋がると結論を出した時、半ば強引に志願してきた。
アングレカムは凄く渋ったけれど、トレニアの強さと頑固さを知っていたから比較的に早くに受け入れていた。
ジュリアンとかは気障だけど、とことん優しい奴だったから、最後までトレニアが入る事には反対していた。
結局一騎討ちして、あっさりとジュリアンが負けてしまったから、トレニアは決起軍に加わった』
グロリオーサは渾渾と語るが、ピーンが目を丸くして驚くのを執事は見逃さない。
(トレニアという女性は"銃"の使い手にも勝ったというのか?)
渓流では掻い摘んで"ジュリアン・ザヘト"という幼馴染みと袂を別つ事になったと聞いて、何かがひかかっていたが、何が気にかかるのか解らなかった。
解らなかったが、渓流で立ち去る間際で"銃"と"賢者"と聞いて、領主邸に戻って、資料を漁れば最近活躍しているレジスタンスの中でも、決起軍の他には、俄に単独で現れては"活躍"はして、直ぐに姿を眩ます傭兵がいた。
本当に弱者と言われる者ばかり助けるという、"銃の兄弟"と呼ばれる傭兵の正体が、グロリオーサの幼馴染みであるジュリアン・ザヘトなのだと結びつく。
そして調べる限りでは、銃という凄まじい威力を持った"飛び道具"の武器の相手ですら"あっさりと勝った"という言葉に驚きを隠せない。
驚いている主を後目に、今度はロックが疑問に抱いた事を口に出した。
『―――グロー様は、トレニアという女性の方が参入するのに、賛成だったんですか?。
それとも反対をなさったんですか?』
相変わらず賓客にだけ向けるツンとした態度で、執事が尋ねる。
その質問に、目元を鋭くさせて賓客は執事を軽く睨んでから、直ぐに穏やかな目に戻して口を開く。
一方の睨まれた執事は、その瞬間に背筋に小さな滝を作ったが、その質問が考えていた以上にグロリオーサの琴線に触れるものだと知って、無神経だと思いつつも、僅かに自分に不安ばかりを与える賓客に"してやったり"という気持ちをもってしまっていた。
『―――俺は、トレニアの参入に関しては、賛成も反対もさせて貰えなかった。
選択は、受け入れるの1択しかなかった』
そこで言葉を1度切って、幾らか冷めた紅茶をグイッと一気に飲み干す。
ゴクンと喉を紅茶が通り過ぎる音と共に、トレニア参入時に言われた声がグロリオーサの頭に甦る。
"子どもといる時の《トレニアの笑顔が好きだ》と思ったんなら、あの時、子ども達を助けるのに役にたてなかったのが本当に悔しかったなら、私を決起軍の仲間にいれなさい!。
そして私の力を使えるだけ使って、国が傾くような政治をする奴等を暴けるだけ暴き出して、公平に誰もが幸せになれる国にしなさい!"
決起軍に仲間として参入する為には、アングレカム、ジュリアンを説得出来たとしても最終的にはグロリオーサの同意が必要とされるのが判っていた少女は、そう言って、昔、偶然だが勝てた幼馴染みにそう迫った。
その時のトレニアの声と顔は、がさつで単純な男でも判る程、取りようによっては、ある意味卑怯にも思える手段と言葉を吐き出す、そんな自分自身を恥じているのが判った。
でも、自分が恥をかいてでも、自分の力を使う事で気持ちが例えようのないほど傷つくかもしれないけれど、
"国を良くする為に動くレジスタンス"に参入して、活動したいというのが、とても伝わってくるものが確かにあった。
『トレニアは心が読めるだろ?。
俺が子ども達を助けられなかった事を、悔やんでいた事も見抜かれてもいた。
だからその事を言われたのなら、俺は参入を止めておけとかをどうこう言えなかった。
それにピーンが言っていたみたいに、トレニアはまず強かったからな』
彼女に"子どもといる時の《トレニアの笑顔が好きだ》と思ったんなら"と言われた事は、流石に言えない。
『その…グローさん達は、確か成人なさる前にそう言った"国の異変"に気がついていらっしゃったんですよね?。
そして、そういった活動をもう何年も続けていて、この国の中でも代表するようなレジスタンスになられた』
カリンがグロリオーサが、軽く消沈しているのに気がついて、話を切り替えるようにして、声のトーンも上げて話しかけた。
ピーンも、グロリオーサを明るくしようという妻の気持ちを汲み取り、少しばかり砕けた様子で言葉を繋ぐ。
『"代表するレジスタンス"というのも、なんだ表現がおかしいな。
しかし、代表する程の――国民がそう思える程の国に"反抗する勢力"が出ているのが周知にもなっているということは、国の傾きは、止められなくなっていると見ても過言ではないのだろうな』
長い腕を組み、背の高い分それなりの長い脚も組んで、国の領地を預かる領主は苦笑いを浮かべる。
"ロブロウ領主ピーン・ビネガー"は自分の国に対しては"憂える"というよりは、"諦めた"と言ったニュアンスを強めてそう語る。
『―――』
本来なら、領主と言えどもかなり不敬な事を言っているので、ビネガー家の執事として諌めるべきである執事のロックは何も言わない。
そして、無言のままで賓客であるグロリオーサの前に進み出て口を開く。
『比較的、保守的なロブロウの領地の領民すら、"先程の布告"を耳に入れてしまった現状では"領主ピーン・ビネガー"。
旦那様には、大きな信頼を寄せてくれてはいても、セリサンセウムという国には、それを越える不信感を持ってしまっている状況でございます』
―――賊の討伐を見事にこなされた"旦那様"であるピーンに、今日は日が暮れるまで好きなを絵を描いて過ごしてもらおう。
領主夫人のカリンと画策して、無事に送り出した数時間後。
国から、ある領地をとり潰したという示達とその詳細が記された物が、大きな伝達の魔法を使って、それぞれの領地の代表的な掲示板に浮かび上がった。
浮かび上がったものはピーンを含むこの国の領主達が、一昨日に内密に伝達されていた内容を、国が改めてはっきりと布告として、示達したものだった。
そして掲示板を見たロブロウの領民達は、他の領地の惨状を比べて自分達の現在の領主であるピーンが、布告のとして出された法の網目を掻い潜り、結構な領民への負担を減らしていた事も初めて知ることになる。
賊の討伐に続いて、国の無理難題から領民である自分達を守っていてくれた事実を知った事で、領主としてのピーンの評価はまた一段と上がってしまうことになっていた。
"大事では御座いませんが、至急お知らせしたい事がございます!"
ただ昂る領民の意識に、少しだけ危ぶむ気持ちを持った、優秀な執事は、"取り敢えず"とカリンに許可を得てから、休暇中の主へと連絡の早馬を走らせたという次第があったのであった。
『グロー様、紅茶のお代わりは如何なさいますか?』
先程、一気に空にしてしまったカップをもったままのグロリオーサにピーンが礼儀として尋ねる。
グロリオーサは少しだけ考えて、まだ風呂からあがって半乾きの黒髪の頭を横に振って断った。
『いや、もういい。有難う、ロック君』
空にしたカップを、頑丈そうな歯を笑顔の間から見せながらロックに返す。
『―――グロー様は、我が領主様の恩人でロブロウという領地の賓客。
私の事は"君"付けなどなさらず一使用人の一人として、どうぞ呼び捨てになってください』
相変わらずロックはロブロウの賓客には、礼節は持つが心を許す様子を見せない。
『―――それよりも、これから"グロー様"は如何なさるおつもりですか?』
最近年上のメイド達には、密かに人気でもある柔和だが整った笑顔で執事は、賓客に尋ねる言葉を続ける。
『先程も申し上げた通り、ロブロウの領民達は国には不信を抱いています。
しかし、領主である旦那様への信頼は厚いです。
ただ、一応絶対王政のセリサンセウム王国ではあるので、レジスタンスの活動をなさっているグロリオーサグロー様を賓客にしているのは如何なものか…と。
この"ビネガー家"を守るのが仕事としている執事は、思っているわけです』
政治で荒れてはいるものの、まだ"国"としては機能している。
その機能している物を壊す因子を、自分の主が必要もないのに"賓客"――匿うような形になっているのは、家を守る者として許せない。
無論、個人的な感情を含んでしまっている事は、ロックは分かっている。
『国を良くする為とはいえ、国に呆れている領民が多数いるとは言え、ロブロウでグロー様の本当の身分を大っぴらにするのは、剣呑な事だと私は思います』
滑らかに状況と現状をを口にし、最後に自分の意見を述べる。
ただ"剣呑"という言葉は、グロリオーサを思って言ったのではなく、国の代表であるレジスタンスのリーダーを匿うような状況になっている"旦那様"を思って出された言葉でしかなかった。
ロックの気持ち―――本音としては、当初のピーンの気持ちを更に素っ気なくさせたようなもので
"早くレジスタンスが国を平定してくれないだろうか。
早くロブロウという領地から、グロリオーサが出ていってくれないか"
という身勝手に近いものになっていた。
『何だか、ビシバシとアングレカムみたいな喋り方するなあ。
もしかしたらロック君は、血液の型は水の型か?』
皮肉られ、遠回しに"早く領地から出ていっても欲しい"旨を伝えられてもグロリオーサは一向に構わない態である。
それどころか、逆に今度は"純粋に自分の興味だけ"で、ロックに質問を返してきていた。
『―――はい、私の血液の型は水です。
それが、どうかいたしましたか?』
――頼んだ"君付け"は止めて貰えず、先程したきついと自分でも思える言葉の"これからどうする"という質問には答えて貰えない。
更には自分の血液の型を尋ねるグロリオーサに、執事はムッと心の中でしながらも、表には出さず丁寧にではあるが愛想というものが全くない返答をした。
カラカラと笑いながら、グロリオーサが、そうか、やっぱりな!と、頷きながら喋り始めた。
『何、占い好きのトレニアが言うにはだな…。ああ、その前に俺は土の型なんだ』
『あら、それなら領主様もですよ、グロー様。そうですよね、領主様?』
グロリオーサの血液の型を聞いて、カリンが合いの手を入れるようにうまい具合に言葉をいれて、自分の夫を見つめる。
夫であるピーンは腕を組んだまま、穏やかに微笑んで無言で頷いた。
カリンとピーンの反応をみて、グロリオーサは、じゃあ当たりだな、と至極嬉しそうに言ってから言葉を続ける。
『水の型の性格は細やかで気配りが出来て、土の型はよく言えばおおらかなんだが大雑把でガサツで、一見組み合わせたなら最悪そうに見えるらしい。
だが、いざ合わせてみると、互いが互いに足りない部分をカバーしあえて、最高の愛称らしいぞ』
『まあ、それは信憑性がございますね。ロックと領主様は本当にその通りです』
グロリオーサの言葉に、カリンが優しい笑顔を作り、それをいつもと領主夫妻に本当に細やかな気配りをしてくれる、信頼する執事に向ける。
理由は解らないが、賓客であるグロリオーサに冷たい態度をとる"ロックを心配している"という、カリンの眼差しに執事は気がついて、思わずうつむいてしまう。
(叱られるより、"心配される"方がロックの心には響くみたいだな)
妻の上手な"戒め"に、ピーンは組んでいた腕をほどいてて、考える時の癖で耳を触る。
(ある意味、常日頃からグロリオーサに対して、毎日説教をしてくれているようなアングレカムという人がいて助かったな。
お陰でロックの連れないし、もしかしたら不敬と罰っせられるかもしれない態度も、たいして悪い感情を抱かずにすんでくれている)
ピーンが執事と賓客のやり取りを眺め、どうやらロックの連れない態度は、微塵も鬼神殿の気持ちを害する事は出来ていない様子に、内心で苦笑いを浮かべながら、ひと安心する。
寧ろロックの手厳しい態度が、ごく親しい人を思い出せて、グロリオーサは元気になっているようにすら窺えた。
そして"グロリオーサに手厳しいアングレカム"という事から、思い浮かんだ事をピーンは耳に当てていた手を外しながら賓客に尋ねる。
『グロー殿。もしかして、アングレカム…殿から、迷子じゃなかった、仲間と逸れた時の対処を言われているのではないか?』
黒髪の男は、領主の質問にしっかりと頷いた。
『ああ、アングレカムから確かに言われているぞ。
確か…「大きく逸れた場合は、こちらから探します。
だから安全な場所で保護して貰えたなら、して貰って、決してグロリオーサはそこから無駄に動かないこと!。
名前を公表して貰えるなら、偽名を使いなさい、いいですね?。
重ねていいますが、安全な場所が定まったなら大人しくお世話になってじっとしておきなさい!」と言われてたな!』
グロリオーサがそう滑らかにいい終えた瞬間に、ほんの少しだけ間が空く。
そして間の静寂を同時に破ったのは、2人の人物の笑い声だった。
『―――くっ』
『―――フフッ』
グロリオーサが威張るようにして述べた、アングレカムによる"グロリオーサ・サンフラワーの迷子の際に行う処置"を聴いた、カリンとロックが堪えきれないと言った様子で、口許を抑えて笑いを吹き出してしまっている。
唯一ピーンが笑わなかった理由は、あのロブロウの凄絶な渓谷を"腹が減ったから、匂いに釣られて降りてきた"という出逢い。
併せてグロリオーサの人となりを話で聞いているうちに、冷徹な――ある意味保護者のように世話焼きのアングレカムが、鬼神のように強いが、大層世話のやけるグロリオーサに言いそうな事を、予想して、それが見事に的中したからである。
(ここまでくると、血液の型をどうこうというよりは、性分になるのだろうな)
『では、今のグローはアングレカムの"指示"に従っているとう事なんだな。
"安全な場所で保護して貰えたなら、して貰って、決してグロリオーサはそこから無駄に動かない"をしている。
そうやって待っていたならば、仲間が探しにきてくれるというわけだ』
ピーンが確認するように、グロリオーサが言った内容をまた復唱するようにいうと、確りと頷いた。
『ああ、そういう事だ』
グロリオーサが親指を上に向けて立て、歯を見せて笑った。
『迷子…ではなくて、仲間と逸れたなら、集合場所を決めておけばいいんだろうが、レジスタンスの活動で国中を国軍の目を逃れながら動いている身には、1ヶ所にじっとしているのは難しいかもしれないな』
そして何より"グロリオーサ・サンフラワー"という人物の存在感とカリスマ性は、留まっていたならその輝きはきっと"人"はそれに気がつかれてしまう事だろう。
その"輝き"は、眩く人の心を惹き付けるが、まだこの国の状態では万人が受け入れてくれるものではない。
『だったら、大人が逸れる"迷子"になるという珍しい状況を逆手にとって、"保護されている"と広めた方が、敵方の裏をかいているのかもしれん』
国軍も国の実権を簒奪しようとする、レジスタンスのリーダーで国王の庶子の一人で鬼神と称される男が、"迷子"になって"保護されてる"とは、敵対する国軍としても中々考え及ばない事だろう。
『―――あの、よろしかったら1つ尋ねていいでしょうか?』
何とか笑いをおさめ、瞳には笑った際に滲ませてしまった涙を指先で拭いながら、カリンがグロリオーサに質問をすることのへの許可を求める。
『ああ、奥方殿。答えられる事だったら、いいぞ』
明るく受け答える賓客に、カリンは「それでは」と小さく前置きをしてから、笑顔で口を開く。
『質問させて頂きますね。
あの、グロー様はそもそもどうして、迷子…仲間の皆さんと逸れてしまって、こちらのロブロウにいらしたんですか?』
領主夫人はこの質問をした時、"迷子になってしまった時の処置"のように、グロリオーサらしい痛快にも思えるわけがあるものとばかり考えていた。
――例えば"大きな野生の獲物を追いかけている内に"等の明るいもの。
しかし、この質問をした途端にグロリオーサの表情は"気まずい"といったものを表現する顔になる。
『―――それは』
『あ、答えにくい物でしたら、結構ですから』
一目で、豪快で豪傑な男なりに、迷子になってしまった理由に関しては答え辛いのものだとカリンは察して、直ぐに自分の質問を引っ込めようとする。
『―――いや、決起軍の仲間達から逸れてから、もう結構な時間…というか日数も経っているから、そろそろ俺も逃げ出した事から向き合わないと』
言葉もグロリオーサにしては珍しく濁ったが、苦笑いを浮かべた後の黒い瞳には、意を決したような強さの光がある
"腹を括った"ようにグロリオーサは話を始めた。
『そもそもは、俺が迷子というか、一人になったのは…トレニアと口喧嘩をしたからなんだ。
それで、トレニアを…情けない事なんだが泣かせてしまって』
"泣かせた"という言葉には、ロブロウの3人を今度は見事に驚かせた。
一般的に使われる"女泣かせ"とは違うのだろうが、グロリオーサはある意味"人を悲しませる"という事からは、縁遠い人物にも思えていた。
驚きながらもまた"興味"をそそられてしまったピーンが、脚を組み直しながら質問する。
『…トレニア殿と口喧嘩をしたとして…。
心を拾い読んでしまう能のある"魔女"殿と口喧嘩をしても、グロ―には勝ち目があるようには私には思えないのだが』
『領主様』
ピーンが勝ち目がないと言うと、これには珍しく妻の方から、領主であるピーンを諌める言葉をかける。
ただカリンが諌める言葉を出した理由は、"口喧嘩の勝敗"ではなく、夫であり領主である人物が、トレニアに対して悪気が全くないのを知りつつも"魔女"と表現した事だった。
女性に対して、"魔女"という言葉は誉め言葉として使われないこの世界で、賓客の親友で仲間である女性をそう言った言葉で表現するのは如何なものかと、女であり妻として口を出したのである。
『ああ、すまなかった』
ピーンは素直に女性であり妻である、カリンに言葉の非礼を詫びる。
カリンは何も言わずに目礼するのを見てから、ピーンは話を続ける。
『グローの話を聞く限りトレニアという人は、とてもしっかりとした女性のようだし、グロー…"グロリオーサ"という男は、むやみに女性と争いをするような男とも思えない。
まあ、幼馴染みという特別な関係なら口喧嘩が当たり前というのもあるかもしれないが…』
――グロリオーサという男は、カリスマ性はあるし、鬼神と呼ばれる程の力も相当なものがあるのだろう。
だが、彼が個人の感情での口喧嘩となった場合、とてもではないが弁がたって言い負かすというキャラクターではないとピーンには思えた。
(大雑把で武骨ではあるのだろうが、それに負けないくらいと言える優しさも、持っているグロリオーサが、どんな言葉で人を泣かせてしまうと言うんだ。
しかも、女性だものなぁ…)
『…それでは、グロー様はトレニア様を泣かせてしまった事を、反省するために、お一人になられて…そのまま逸れたというわけですか?』
領主夫妻が何やら"魔女"という言葉で、蟠りが出来るかもしれないと感じた執事が、気を効かせて"グロリオーサとトレニアの喧嘩話"を進める。
本当ならグロリオーサと口も利きたくはないが、"領主夫妻の円満を保つのも、ビネガー家の執事である自分の仕事の内"と自分に言い聞かせてながら、ロックが尋ねる。
『いや、反省したくて一人になったわけじゃない。
トレニアが泣くとは、予想外だったし、それ以上に予想外の事が起きてしまって』
『予想外とは、なんですか?』
これはロブロウ側3人とも同じ気持ちを、ロックが代表して尋ねる。
日頃なら束になった敵を見ても怯まないグロリオーサも、この時は3人からの視線で口元を「うっ」とした形にしながらも、覚悟は決めているように口を開く。
『トレニアは泣いたと…いいや、紫の瞳に涙を溜めて零れる直前に、俺の前から走り出した。
走り出して決起軍…と言っても仲間4人のテントだけど、そこから駆け出したんだ。
ついでに、馬にまで乗って行ってしまって…』
『グロー、いやグロリオーサ…いったい何を言ったんだ?』
"賢者"でも、グロリオーサが何を言ったのかが解らなかった。
『―――もしかして、喧嘩の原因というのは』
夫が本当に不可解だと思った、"涙"の理由に妻は確信は持てないが反応する。
賢者ですら見当がつかない様子なのに、人の悩み事や不満や、特に"女性ならでは"の不安を聞き取る事に長けている領主夫人は、それとなくだが、グロリオーサに聞いたトレニアという女性の話を思い出して、察する。
察してしまったが、グロリオーサや、もしこの場にトレニアがいたとしても、どう言葉をかけた方が良いのかカリンには解らない。
それ程"トレニアが涙を溜めて、駆け出すような悩みと不安"は、繊細なものだと、領主夫人には思えたのだった。
『話の最初に、俺がトレニアに関して言いかけた事、覚えてくれてるか?』
しかし、腹を据えた男は訊ねられた"トレニアの泣き出した"理由を―――自分が仲間と逸れて1人になった理由の説明を、世話になっているロブロウの人達に続ける。
『最初の言葉…?』
ピーンは傍らにいる執事をチラリと見ると、ロックは静かに頷いた。
頷いた後に、カリンを見れば彼女は自分が考えていた事があたっていたらしい事に胸を痛め、黒の目なかに濃い緑がある可憐な瞳をふせている。
ロックは領主夫妻の様子を確認してから、徐に口を開いた。
『…"トレニアが子どもや赤ん坊が好きなのに、それを得る機会を奪ってしまっているんじゃないかって、最近、気がついたんだ"でございましょうか』
ロックが一言一句間違わず、グロリオーサのイントネーションも真似して、この部屋に入ったばかりの頃に言った台詞を口にした。
『…凄いなぁ…ロック君は』
グロリオーサは純粋に驚いた顔をした後に、苦しそうに顔を歪めた。
『俺は、自分が男だからとかを理由にしたくないんだけれど、女性が子どもを産むのに"期限"があるなんて考えた事もなかったんだ。
で、多分、それに加えて、とっても無神経な事を、トレニアに言ってしまったんだと思うんだ』
――何気無く、最初は話しをしていたと思う。
アングレカムが神父バロータに、体術の事や精霊術の事を尋ねていたりして、グロリオーサとトレニアは久しぶりに2人きりになっていた。
"国を平定する為の"下準備"は今は6割くらいで、それまでにどのくらいの時間がかかった"
確か、そんな他愛のない話をしていた筈だった。
"始めた頃は、互いにまだ成人もしていなかったのに、今は成人して数年が過ぎた"
"決起軍の当初は、成人してないのに成人した振りをするために、オモチャの付け髭をしたりした"
他愛のない話から、笑い話に変わった筈だった。
"トレニアはさ、平定が終わったら子どもを産んだりするんだろ?"
赤ちゃんが大好きな女だから、グロリオーサは当たり前の事を言っただけのつもりだった。
その事を言うと、トレニアは紫の瞳を丸くしてから苦笑いを浮かべて、いつも明快な事ばかり言う口を閉じてしまう。
そしてグロリオーサの心にも小さな痛みが走る。
(あれ?何か俺は変なことを言ったかな?)
小さな痛みを感じながらも、本当に、"赤ん坊が大好きなトレニア"なら、平定をやりおえたならやりそうな事を、至極当然、当たり前の事を言ったつもりだった。
横に座る、男前だけど笑顔はたまに可愛いと思っている彼女から
"そうね、沢山子どもは欲しいなぁ"
そんな笑顔の返事が、返ってくるものとばかり考えていた。
『―――そうだよね、男の人は…グロリオーサは、まだどちらかと言えば"男の子"だもんね』
華麗に鞭を操る手に顎を乗せて、トレニアは静かに笑う。
かつて決起軍に入るきっかけとなった、子どもの事で力になれなかった事を謝るグロリオーサに、向けた慰めるにも似た優しい眼差しをトレニアはしていた。
『―――子どもとは失礼だな。毛だって髭だって生えてるぞ』
どうやらこの冗談は分かって貰ったらしく、トレニアは顎に当てていた手を口元に変えて、吹き出すのを抑える。
『ふふっ…いったい何処の毛よ…』
それから立ち上がり、うーんっと両手を上げて伸びをして、グロリオーサに背を向けた。
(笑いはしたが、まだ何かあるのかな?。子どもの話は、嫌いじゃないと思ったんだが…)
『ええ、子どもは大好きよ。
赤ちゃんなら、もう言うことなし!。
むっちむちなお肌に、可愛い声!。
何より、全てに一生懸命!』
グロリオーサの心の声をしっかりと聞き取り、トレニアはしっかりと応えてくれる。
そして胸の前で両手を祈るように重ねて、うっとりした声で赤ん坊の魅力を語った。
語り終えてから、少しだけ間をあけて肩を落とす。
胸の前で祈るように合わせていた手をほどき、腰に当てた。
『―――まあ、お医者さんになろうって男でもない限り、赤ん坊が好きだろうが、女の体の都合があるなんて知っているわけないわよねえ』
今度は声のトーンが一気に下がってはいるが、彼女が落ち着いているのがグロリオーサにでも解る。
先程のグロリオーサの心の声には、結局仕方無いか、とちいさく言って、また苦笑いを浮かべた。
腰に手をあてたまま、少しだけ振り返り先程まで隣に座っていた、黒い瞳のリーダーを一瞥した。
『―――女の…体の…都合?』
頭の中で考えるよりも先に、疑問に思った事を声を出し、それはトレニアに聞こえてしまっていた。
グロリオーサの露骨な疑問に、トレニアは大きく溜め息をついて、今度はしっかりと振り返り、グロリオーサと正面で向き合う。
『ああ、もう!落ち着いて、少しは自分の心の中で考えてから、そういった事は口に出しなさい!。
デリケートな問題かもしれないんだから、"失礼のないように"と考えて頭を整理しておかないと、今みたいに、そのまま口から出てしまったらデリカシーが無さすぎるわよ!』
グイッと耳をつまみ上げながら、トレニアはいずれ国を"率いて"くれるだろう男に忠告する。
『わかった、気を付けるから、スマン、トレニア!』
そこで漸く、耳を離して貰った。
稀にグロリオーサの単純さが、自動的に心の声を聞いてしまうトレニアが、一緒にいることで、聞こえる方は質問攻めにあっているような形になってしまう時があった。
それは軽く、彼女にとってストレスになってしまっているというのはグロリオーサは知っているのだが、気を抜いた時はよくやってしまう。
"トレニアの前では、取り繕っても無駄だから、逆に気が楽で良い"
グロリオーサはそんな言葉を言って、周りを呆れさせもしていたが、気持ちを楽にもさせていた。
だが、今回はそれは通用しなかったらしい。
『――それに、大体平定の下準備の6割りが済んでいると言っても、デッカイ要所の部分はまだ説得とか、協定とか、はたまた力技で決起軍側に付けるかどうかわかってもいないでしょう!』
『それはアングレカムが"脇と土台を固めてから"とか言っているから、仕方無いだろう?』
『そう、時間をかけてでも、なるべくなら人の犠牲が出ないようにして、みんなが公平に幸せになる為に決起軍は動かなければならない』
威勢よく"決起軍の理念"についてトレニアが言っているのは、解る。
しかしら不思議と苛ついているのもグロリオーサには伝わって来ていた。
(いや、苛ついているというよりは)
心の声を読まれているのなら、きっと声に出して伝えても構わないと思って口に出す。
『なあ、トレニア。何か不安な事でもあるのか?』
ピタリと、トレニアの動きが止まった。
『―――トレニアさ、人の気持ちを上手く聞いてくれるけれど、その分、自分の気持ちを出す時間とかあんまりないから…』
『―――ないから、なに?』
短く答えるトレニアに、いつものは男勝りで、それでいて優しい輝きが、紫の瞳の中に今はなかった。
(単細胞で単純な俺が言うのも、変かもしれないけれど)
心と言葉を繋げて、口下手な自分に代わって気持ちを拾い上げてくれる、優しく頼れる、"大切な仲間のトレニア"に気持ちを伝える。
『もし、この俺がやっている、今は4人の決起軍で不安や、不満に思っている事があったら教えてくれないか。
さっき言ったみたいに、お前は、人の気持ちを拾い読めるんでくれていて、決起軍というレジスタンスが凄く助けて貰っている所が沢山ある。
トレニアが敵対する代表格の心情や、思惑を拾い読んでくれるお陰で、無用な争いを避けて、無駄な血が流れずに済んだ事は数えきれないくらいだ』
(そして戦いを避けられない時も、"指揮者"の思惑を読み取ってくれるから、こちらは本当に少数の決起軍でやってこれた)
実際、表面上は友好的なフリをしておきながら、一夜の宿を用意しておいてグロリオーサ達、決起軍の"寝首を掻く"と言ったものは、悉くトレニアのお陰で防げていた。
中には友好的にしようと決起軍を受け入れると考えているのは、代表者一人だけで、後は代表者を贄にして、裏切ろうとするものもあって、トレニアとアングレカムは対処に少しばかりを困っている時もあった。
"本当にトレニアがいなかったら、平定する為とはいえ今以上の血が流れる事だったでしょう。
ゆっくりと心も身体も休むべき場所とタイミングなのかどうか見極める事ができるのも、トレニアのお陰ですね"
冷徹なアングレカムもトレニアのこの能には、本当に感謝をしていた。
『―――有難いって思うけれど、トレニアは自分の気持ちを自分の中に押し込んで、どうしても人の意見ばかりを、聞きたくもないのに聞かされる立場にさせてしまうわけだろ?』
(それは、きっと自分の言いたいことがあったとしても、後回しにされているのと同じだからさ)
言葉も心も、トレニアだけを今は思ってグロリオーサは、気持ちを拙くとも、伝える為に紡ぎ出す。
心も言葉も伝わっている筈なのだが、トレニアは唇を固く結んで黙ったままで、不動となる。
(いつも聞き手に回って、人の気持ちを優先させてしまう、"トレニア・ブバルディアの気持ち"を良かったら今、聴かせて欲しいんだ)
心にグロリオーサがそう気持ちを浮かべた瞬間、グっとトレニアが拳を握りしめる。
その反応で彼女が自分の気持ちを、確りと聞いていることが分かったから、更に言葉を続けた。
『一応俺は、決起軍の代表みたいな事をさせてもらっている。
だけどそれが出来るのは、トレニアは勿論、アングレカム、神父バロータ、今はいないけれど、ジュリアン。
その4人がいなかったらきっと、グロリオーサ・サンフラワーは力をもて余すだけの馬鹿野郎で、田舎で燻っていただけなはずなんだ。
馬鹿みたいに力はあるけれど、使いこなせなかった力を"人の役に立つ利用方法"を教えてくれた、仲間に感謝もしているんだ。
だから――――』
そこまで言った時、トレニアは頭を振って、グロリオーサの言葉が止まる。
『違うよ、グロリオーサは単純で馬鹿なところはあるけれど、人を引き付ける力がある。
いくら魔女が人の心を拾い読めても、頭の良いアングレカムがとても賢い策謀をめぐらせても、優しいジュリアンが魔法を凌駕する武器を扱えたとしても、敬虔な神父バロータが人の命の尊さを説いたとしても。
"国"っていう、化け物みたいな生き物は、グロリオーサみたいな、栄光を抱えられる人がいないと、保てない。
そして仲間の皆も、国で内々に6割方味方についてくれると約定を交わしてくれた人達も、"貴方がこのセリサンセウムという国の王になるのなら"として、力を貸そうとしてくれたに過ぎない。
そしてグロリオーサに新しいセリサンセウムの王様になって欲しいという希望は、どんなに沢山の"時間"を使ってでも叶えなければならない。
貴方がいなかったから、きっと緩やかで確実に国は駄目になっていったと思う。
だから、今は私の事はいいから国を―――』
『―――もしかしたら"時間"を気にしているのか、トレニア?』
グロリオーサがポツリと言った瞬間、紫の瞳が激しく動揺の為に揺れる。
単純ではあるが、"戦い"の際には凄まじく発揮されるグロリオーサの集中力と勘がこの時も恐ろしい程、働いていた。
"トレニア・ブバルディア"が何を気にしているのか、本心を隠すために言っていた、長い誤魔化しの言葉の中に混ぜていた"本音"をグロリオーサは見事に、拾い上げていた。
ただ"時間"と"子どもを持つ未来"をトレニアにどう結びつければいいのか、その知識がグロリオーサには足りない。
そして"読心する魔女"は、グロリオーサが結びつけられない事を、あっさりと見抜いた。
しかし、結びつけられない事に瞳からは動揺の色はあっさりときえて、優しい表情をつくり、また口を開く。
『…グロリオーサは、"攻撃"は、本当に上手だよね。
初対面でも慣れた仲間でも、的確ポイントを突いて攻め入れる。
これって才能なのかな』
未だに2つの言葉を結びつける何かを、グロリオーサがまだ解らないなりに懸命に考えている心を拾い読みながら、そう言った。
そして、続けて穏やかに口を開く。
『でも、グロリオーサ自身も"攻撃"の自分の力加減が判らなくて、困っている時もあるんだよね。
自分は普通に――相手が望む通りに本気で戦っていただけのつもりなのに、決着がついたのなら、相手の息の根を止まってしまう』
ただ"腕試し"を望まれて、希にはグロリオーサ・サンフラワーの"剣豪"の名前に、行く手阻まれて、仕方なく"本気"で剣を交えたことで、奪うつもりのなかった命を奪ってしまう。
戦った相手の骸の前で、太刀を鞘にしまいながら、その度にトレニアが直ぐに傍らに立って、グロリオーサの背中を強くパンっと叩いてくれた。
俯いてしまう幼馴染みの顔を、背中を叩き、"活"を入れる事で上に向けてくれる。
《相手から望まれた戦いだったのだから、グロリオーサが悪いわけじゃない。
グロリオーサに戦いを挑んだ相手の人も、本当に"強い人"と戦いをしたかったそれだけ。
そして、そんな生き方を――戦いに気持ちを向けていたから、いつか終わる自分の命が、戦って負けて命を落とす事も覚悟出来ていた。
貴方が倒した相手はもし死んだとしても、決して「死ぬつもりはなかった」なんて弱音吐くような人ではない。
"戦って死ぬ"事が、本望な人達だったのだから、グロリオーサが悔やんだら、逆にその人達の武人としての誇りを侮辱する事になる。
だから、グロリオーサの気持ちの分だけ気落ちしなさい。
もし、気落ちした事で貴方の太刀が鈍るような事になったなら、これも戦って命を落とした人には屈辱になるのだから》
紫の瞳に優しさ、厳しさを同時に浮かべて、グロリオーサに"戦った相手"の遺言を伝える。
それは強くはあるけれど、優しくもあるレジスタンスのリーダーが、過分に背負おうとしている"業"を選り分け、落としてくれる事に繋がっていた。
『俺は…その…トレニアを傷つけてしまっているのか?。
今まで、剣を交えた相手みたいに、ただ…今は口喧嘩をしていることになるのか?。
それをした事がその』
(大切な"親友"の心を傷つけてしまっているのか?)
グロリオーサのしどろもどろとした声と、真っ直ぐな心を聞いた魔女は、ゆっくりと頷いた。
『―――いつもは鈍感なのに、大事な時には気がついてくれるのも、グロリオーサだよね』
紫の瞳が少しだけ潤んでいた。
『―――人の恥とか聞かれたくない話を、聞いている私が言うのもなんだけれど。
だから私は、出来れば私の心を一番知られたくない、家族みたいに――弟みたいに世話のやけるグロリオーサに、正直に気持ちを話すね―――』
『―――時間と、子どもと、魔女か』
グロリオーサがトレニアがしたという話をする前に、賢者は"察し"がついたように口を挟んだ。
今度は"魔女"という言葉を聞いても、カリンは何も言わなかった。
妻が何も言わないのを確認してから、ピーンは続ける。
『私が調べた限りでは、決起軍が活動を始めてもうすぐ10年近くになる。
それでグローが言うには、"目標"まで6割をこなしたという。
現在決起軍で主に活動をするメンバーは、神父バロータを除けば年齢は20後半に差し掛かった所だな。
例え平定をこのペースでこなし、上手くいったとしても終わった頃には、決起軍の主要メンバーは不惑手前になる』
『―――』
ピーンがざっと言った内容でも、家族は持たないと決めている執事は、身近にいる"ビネガー家"を見ている事で何を言わんとしているかが分かった。
"カリンも30の半ばになろうとしていて、子どもは6人いる。
もう、跡継ぎである男児はバンを1人がいれば良いだろう"
古参のロブロウの領民たちが、"万が一の時の為に奥方様にもう1人男児を"と迫った時に、ピーンはピシャリと言って"進言"を払い除けていた。
"妊娠、出産は命懸けと言ってもよいもの。
それを6回もしてくれたカリンに、これ以上負担をかけたくない"
(旦那様は、奥様の"体"を思ってもう子どもをもうけるのを止めた。それに…)
茶を淹れる為の湯を沸かすために、薬罐の下に火の精霊をロックは呼び出す。
小さな炎見つめながら、名前だけしか知らないトレニアの立場を考える。
(更にトレニアという方には、旦那様と奥様のように最初から"伴侶"がいるわけではない)
まず"子どもが好きだから"と、さっと授かれる環境ではない。
仮に何らかの方法で、トレニアがその胎内の中に"赤ん坊"を授かったとしても、決起軍のレジスタンスの中では、胎児は何時命を落としても不思議はない。
だから、決起軍のレジスタンスにいるという時点で"子どもが欲しい"と考えている事が、"間違っている"のだろう。
"間違っている"、妊娠・出産に携わった経験のあるロブロウの3人は皆一様にそう思った。
だけれども、
(―――本当に、"間違っている"のか?)
という疑問も、同時に浮かんでいた。
身体は健康なのに、自分の夢である赤ん坊を抱く事を諦め、"成し遂げないといけない事"がある。
"成し遂げないといけない"事は、大好きな可愛い国中の子ども達の幸せに繋がる。
けれど、自分の子どもを授かることが出来るかもしれない時間を――叶える事が可能かもしれない"夢"をふいにする事は、トレニアにジレンマと葛藤を産み出すのには十分なものだろう。
ロックは自分がどうこう言えるような事ではないのだが、子どもが好きな"女性"には、覚悟を決めて決起軍というレジスタンスに入ったのだろうが、そこは辛い場所になっているのが容易にわかった。
ピーンが口を挟んだ事で、グロリオーサの"迷子になった"説明は中断の形となるが、誰からも文句は出て来ない。
領主夫人であるカリンは、自分が考えていた事とほぼ内容が当たっていたのと、やはり会ったことはないのだが、"赤ん坊を抱きたい"という夢を抱くトレニアという"魔女"を思って俯く。
《ロブロウ領主の跡継ぎを生むこと》
嫁ぐ前から散々実家の方には先代の領主の自称家臣という人々から何かと言われて、気の弱いカリンは気が滅入りそうになっていたのを思い出す。
しかし、自分の伴侶となる"跡継ぎ"から来る手紙は、自称家臣達の"お小言"を吹き飛ばすくらいの底抜けに明るさで、嫁ぐ事への不安は何とか拭えていた。
そしてやがて手紙には、"弟みたいな秘書を拾った"ときて、"秘書"という自分より年下の少年は、夫となる跡継ぎと共に作った草花を圧して作った栞を、手紙と一緒にカリンに贈ってくれたりもした。
"秘書からビネガー家の執事になった。カリンが嫁にきてくれた後も一緒だぞ、よろしく頼む"
よく便りに出てくる夫の秘書となる"少年"は、手紙を読む限りでも、優しい穏やかな性格が伝わってきていた。
だから彼が執事として嫁ぎ先に居ることとなったと知った時、カリンは純粋に嬉しい事だった。
そしていざ嫁いだ先にいた執事の少年は、領主の妻として、自分に足りない部分を優しく補ってくれる、夫とはまた違った意味で本当に有りがたい存在だった。
"奥様、大丈夫ですか?"
仕事でそれなりに忙しい夫が不在時に、嫁ぐ前に煩かった家臣達からも、執事の少年は優しい顔を浮かべながらしっかりと"主の妻"を守ってくれた。
(この人達がいてくれるのなら、大丈夫)
そう思えて、嫁いでからは先輩の婦人たちから、あれこれ吹き込まれた"妊娠"の不安を抱きながらも、カリンはピーンとの間に6人の命を胎内に宿して産んだ。
今でこそ、年頃の娘達の扱いに戸惑う事もあるけれど、赤ん坊や頑是無い時期、自分の子どもが、本当に可愛いらしくて、愛しくて仕方がなかった。
夫が活発なタイプの子どもを肩車をして中庭を走り回り、執事とカリンは絵本を読んだりして過ごした時間は、本当にカリンの人生の時間の中ではかけがえのない幸せな時間であると、はっきりいえる。
(きっと、トレニアという人は私より確りと自分を持っている強い人。
でも"強い"人だからこそ、叶えられそうな夢が側にあったのなら。
手を伸ばしていけない"時間"と知っていたのなら、とても苦しいでしょうね)
俯いたまま、もし自分の中から"幸せな時間"が切り取られたのなら、と考えると涙すら浮かびそうになる。
でも、もしも、自分がトレニアの立場なら、"国を平定するため"と言われたなら、カリンは"子どもを産む"という事の方をきっと諦めていたと考えもする。
『グロー、いや、グロリオーサ。
これ以上は話さなくてもいい、ロック、茶菓子もいいかな?』
『畏まりました、旦那様』
執事が静かに茶の支度をするなかで、話を止める事になったグロリオーサは、これから話そうとそうとしていたトレニアに言われた言葉を思い出していた。
"自分で決めた事なのに、子供達を助けたいって思っていたのに"
(でも、このままレジスタンスにいたらきっと"トレニアの夢"は叶う事はないよな)




