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波乱のはじまり

  お隣りは極道さん 第一部


「なんか騒がしいね」キーをたたくのをやめて聡史が言った。


「お隣の空き部屋、今日入居で引越しだって」桃子は洗濯物を干しながら答えた。


聡史と桃子は結婚2年。大学の先輩後輩で付き合って3年で結婚した。


夫の聡史は31歳、大学に残って講師をしている。専門は古代ローマ史。


妻の桃子は28歳、アパレル関係で企画の仕事に慣れてきたところだ。


頭はいいけど、ちょっと頼りない感じの聡史と、少し天然だが、あっけらかんとした桃子は

仲がよく、それなりに普通の新婚生活を送っていた。


そのベルが鳴るまでは・・・



ピンポーーン♪


「どなたですか?」

「今日となりに越してきたもんですが・・」

桃子がドアを開けると


そこには3人の男が立っていた。


首に金のネックレス、腕にロレックスのダイヤ入り時計、派手な柄の赤シャツに黄色の

ネクタイ、紫のスーツ、エナメルの靴という、どこのパーツをとっても間違えようも

ないほど完璧に


それは極道さんだった。


そして格好も容姿も違うが、いずれもパーフェクトな極道さん2号3号が


その背後に立っていた。


(あぁ、よくVシネマに出てくるような極道さんたちだわ。○川翔とか竹○力とか。

どうしよう、はじめて見ちゃった、こういうときそれ流の挨拶のやり方とかあるんだよね、

こんなことなら仁義なき戦いシリーズとか見ておけばよかったわ、レンタル半額デーに)


桃子が固まりながらも頭でこんなことを考えているうちに、男の手が桃子の

前に差し出された。


「な、な、な、なにをするんですかっ!僕らは善良な市民です、その道の方々にいちゃもん

をつけてこられす筋合いはありません!!」と後ろの部屋から飛び出して桃子の前に立ち

はだかり聡史は叫んだが、その声は蚊取り線香でへろへろになった蚊の飛ぶ音より小さく

弱弱しかった。


「今日隣りに越してきました。これ、引越しそばの代わりっす。今度ともよろしく、

それじゃまた」


極道1号(桃子命名)が聡史に渡したものは「ピヨコちゃんの天使の入浴剤 森の香りと

グレープフルーツの香り&お肌に優しい天然素材のタオルセット」だった。


「わー、これほしかったんだよね、人気があってどこでも売り切れなんだよ」

桃子はセットに入っていたピヨコの浮きおもちゃのおなかをプクプク押しながら喜んだが、

聡史は妻のように気楽には考えられなかった。


「・・・どうしよう、もし洗濯物が風で隣のベランダに飛んでいったら、僕に取りにいく

勇気があるんだろうか・・」


かくして二人の平穏な生活はこの日から波乱の日々へと変わったのである。


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