第八章 祈りの光
ひかるとアリヤは、目を閉じた。
悪魔の叫び声が響いている。
天使たちが戦う音が聞こえる。
怖かった。
今すぐ逃げ出したかった。
それでも、二人は手を離さなかった。
アリヤは祖母のことを思い出した。
優しく笑う顔。
温かな手。
一緒に過ごした日々。
「……おばあちゃん」
指輪がかすかに光る。
「私、もう悪魔の言葉に惑わされない」
金色の光が、少しずつ強くなっていく。
「寂しい気持ちは、きっとこれからも消えないと思う」
アリヤの頬を涙が伝った。
「でも、それでも私は生きていく」
ひかるも静かに呟いた。
「私も、みんなと一緒に生きたい」
二人の手が、強く握り合わされた。
「誰かを守りたい。でも、自分のことも大切にしたい」
その瞬間。
指輪から、まばゆい金色の光が溢れ出した。
「……何だ!?」
悪魔が叫んだ。
黒い霧が、光に押し返されていく。
セラが目を見開いた。
「指輪の力が……戻った!」
レオンも振り返った。
「ひかる! アリヤ!」
金色の光は、レオンとカインを包み込んだ。
カインの胸に刻まれた黒い紋章が、少しずつ薄れていく。
「……これは……」
カインは自分の手を見つめた。
長い間感じることのなかった、温かな光。
それは、誰かを救いたいと願っていた、かつての自分の心を思い出させるものだった。
「……私は……」
カインの目から、涙がこぼれた。
「ただ……あの子に、生きていてほしかった……」
レオンは静かに頷いた。
「うん」
「誰かを犠牲にしたかったわけじゃない……」
「わかっている」
カインはゆっくりと立ち上がった。
「……もう、悪魔には従わない」
その背中の黒い翼に、白い光が差し始めた。
悪魔が怒りの声を上げる。
「裏切るつもりか!」
カインは静かに答えた。
「裏切ったのは、お前だ」
レオンが隣に立った。
「一緒に戦えるか?」
カインは小さく笑った。
「……ああ。今度こそ」
二人の天使は、並んで剣を構えた。




