第十章 堕ちた天使の帰る場所
戦いが終わったあと。
カインは教会の祭壇の前に立っていた。
黒かった翼は、完全には白く戻っていなかった。
けれど、もう以前のような不気味な闇は感じられなかった。
レオンが隣に立った。
「……カイン」
「何だ?」
「これから、どうする?」
カインはしばらく考えた。
「……わからない」
レオンは静かに頷いた。
「そうか」
「私は、たくさんの過ちを犯した」
カインは自分の手を見つめた。
「天界に戻れるとは思っていない」
「……うん」
「でも、もう誰かを傷つけるために力を使いたくない」
その言葉に、レオンは微笑んだ。
「それなら、きっと道は見つかるよ」
カインは少し驚いたようにレオンを見た。
「……お前は、相変わらず甘いな」
「君ほどじゃないよ」
二人は小さく笑った。
そのとき、ひかるが駆け寄ってきた。
「カインさん!」
カインは振り返った。
「……何だ、人間」
「これから、どうするんですか?」
「まだ決めていない」
「だったら、少し休んだらどうですか?」
カインは目を丸くした。
「……休む?」
「はい。ずっと苦しかったんでしょう?」
ひかるは微笑んだ。
「無理にすぐ答えを出さなくてもいいと思います」
カインはしばらく黙っていた。
そして、小さく笑った。
「……お前は、本当に変わった人間だな」
アリヤも近づいてきた。
「私も、そう思う」
「アリヤまで!」
ひかるが頬を膨らませる。
二人は笑い合った。
カインはそんな二人を見つめていた。
かつて、自分が守りたかった少女の姿が、ふと頭をよぎる。
「……あの子も、こんなふうに笑っていた」
レオンが静かに尋ねた。
「カイン。彼女のことを、まだ探したいか?」
カインは頷いた。
「ああ。でも、もう悪魔には頼らない」
「それなら、僕も手伝うよ」
カインは驚いたように顔を上げた。
「……いいのか?」
レオンは微笑んだ。
「今度は、一人で抱え込まないで」
カインはしばらく俯いていた。
そして、静かに答えた。
「……ありがとう」




