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プロローグ 封印の亀裂

――堕ちた天使と蘇る悪魔――


あの事件から、三か月が経った。

ひかるとアリヤは、以前と変わらない穏やかな日々を過ごしていた。

学校帰りに寄り道をしたり、一緒にお菓子を食べたり。

ときには、守護天使のセラとレオンが姿を現し、二人をからかうこともあった。

あの恐ろしい悪魔は封印された。

もう二度と、命を狙われることはない。

二人はそう信じていた。

しかし――。

ある雨の夜。

街外れにある、廃墟となった質屋。

かつてひかるが悪魔と初めて出会った場所に、一人の人物が立っていた。

黒い外套をまとった、見知らぬ青年だった。

青年は店の奥へ進むと、床に刻まれた古い魔法陣を見下ろした。

「……ずいぶん無様な姿になったものだな」

青年が呟く。

すると、床の下から低い声が響いた。

『……誰だ』

「忘れたのか? かつて、お前に力を与えた者を」

『まさか……お前は……!』

青年は微笑んだ。

「人間の少女二人と、守護天使ごときに負けるとはな」

『黙れ……!』

「だが、まだ利用価値はある」

青年が指を鳴らすと、床の魔法陣に黒い亀裂が走った。

封印の奥から、苦しげな叫び声が響く。

『何をするつもりだ……!』

「お前を解放してやる」

『本当か……?』

「ただし、条件がある」

青年の瞳が、赤く輝いた。

「今度こそ、あの少女たちを絶望させろ」

封印が砕け散った。

黒い霧が噴き出し、やがて人の姿を形作る。

それは、ひかるとアリヤが倒したはずの悪魔だった。

「……戻ってきたぞ」

悪魔は、自分の手を見つめた。

以前よりも強い力が、身体の中を巡っている。

「ひかる……アリヤ……」

悪魔の口元が歪んだ。

「今度こそ、お前たちを逃がさない」

青年は静かに笑った。

「勘違いするな。お前の目的は、少女たちを殺すことではない」

「……何?」

「二人の守護天使を引きずり出すことだ」

悪魔は怪訝そうに青年を見た。

「天使を……?」

「ああ。特に、あの銀髪の天使……レオン」

青年は自分の背中に手を伸ばした。

その瞬間、黒く染まった片翼が広がった。

「私は、あいつに借りがある」

悪魔は目を見開いた。

「お前……まさか……」

青年は冷たく微笑んだ。

「かつて天界を追放された者、と言えばわかるか?」

雷鳴が響いた。

漆黒の翼が、闇の中で大きく広がる。

「さあ、始めよう」

青年は悪魔に命じた。

「天使たちの大切なものを、すべて奪うんだ」

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