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豚肉を『生』で食べる!? 禁断のネギトロ風味「メット」とピンクのベンラート城

えっ……斎藤さん、これってまさか……生の豚肉ですか!?」


斎藤さんの朝食見た時、私は目の前に出された「それ」を見て思わず叫んでしまった。


日本では「豚肉の生食=絶対にダメ!」と教わって育ってきた。

なのに、丸い固めのパン(ブロートヒェン)の上にどっさりと乗っているのは、どう見ても味付けされた真っ赤な生豚ひき肉だったのだ。


「ふふ、大丈夫だよ咲ちゃん! これは『メット(Mett)』っていうドイツの伝統的な生豚肉。厳しい衛生管理のもとで『当日販売・当日消費』が義務付けられてるから安心なんだよ」


恐る恐る口に運んでみると——その瞬間、私の生豚肉に対する恐怖心は一吹きで吹き飛んだ。


(んんっ……!? なにこれ、めちゃくちゃ美味しい……!!)


例えるなら、まさに【日本のネギトロ】!

脂肪分が35%以下に抑えられているため、まったくしつこくなく、口の中でとろけるようななめらかな食感が広がる。

塩コショウとハーブで絶妙に味付けされたメットに、バターを塗ったカリッカリのパン、そして上に散らされた生玉ねぎのシャキシャキ感と辛みが合わさり、とてつもないハーモニーを生み出しているのだ。


以来、すっかりこの味の虜になった私は、今や毎朝スーパーで小分けのメットを買い、自分で『メットブロートヒェン』を作って食べるのがすっかり定番の朝ごはんになっていた。



美味しいメットブロートヒェンでエネルギーをフルチャージした今日は、初給料で懐が温かくなったこともあり、近場の観光スポットへ出かけることにした。


目的地は、デュッセルドルフ南部にある『ベンラート城(Schloss Benrath)』!


電車に揺られて到着した私は、目の前に現れた建物を前に「うわあ……!」と思わず感嘆の声を漏らしてしまった。


18世紀後半にプファルツ選帝侯カール・テオドールが夏の離宮として建てたというそのお城は、優雅なロココ様式と初期古典主義が融合した美しいピンク色の左右対称の建物。おとぎ話の世界から飛び出してきたかのような可愛らしさだ。


そして何より圧巻だったのが、お城を取り囲む広大な庭園!

手入れの行き届いた整然としたフランス式庭園、自然の美しさをそのまま活かしたイギリス式風景庭園、そして深々とした狩猟林。約60ヘクタール(東京ドーム約13個分!)という広大な敷地は、自然と芸術が見事に融合していて、歩いているだけでお姫様気分を味わえる。


(ドイツに来て、私……今、本当にヨーロッパの歴史の中にいるんだなぁ……)


どこまでも続く青空と美しい庭園の緑を眺めながら、ゆったりとした贅沢な時間を噛みしめた。



ベンラート城の散策を心ゆくまで堪能した後は、事前に岩間さんから「ベンラートに行くなら絶対寄ってみて!」とお薦めしてもらっていたカフェ『Café Schneiderカフェ・シュナイダー』へ向かう。


クラシカルで温かみのある店内に足を踏み入れ、お目当ての「自家製チーズケーキ」とブレンドコーヒーを注文した。


運ばれてきたチーズケーキは、見るからにずっしりとした重厚感がある。

フォークを入れると、しっとりとした手応えとともに濃厚なクリームチーズの香りがふわりと鼻をくすぐった。


(わ……濃厚! なのに……後味がすっごく爽やか!)


一口食べた瞬間、幸せが口いっぱいに広がる。

甘さは控えめで、レモンの爽やかな風味が絶妙なアクセントになっていて、ずっしり重いのにいくらでも食べられてしまいそうな絶品ケーキだった。苦味の効いたコーヒーとの相性も抜群だ。


「はぁ……なんて優雅で最高な休日なんだろう……」


1ヶ月前、不安で胸がいっぱいになりながらスーツケースを引いていた自分がウソのようだ。


自分で働いて稼いだお金で、美味しいものを食べ、美しい景色を眺め、至福のカフェタイムを過ごす。

ドイツの生活に少しずつ馴染んでいく喜びを感じながら、私はまた新しい明日へのエネルギーをたっぷりと充填するのだった。

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