91.お着替えして準備するよ
今日はお菓子を作る日で、いつもより早く目が覚めた。まだパパの目は瞑ってる。だから僕も目を閉じるけど、そわそわしちゃう。
美味しいお菓子が作れるかな。失敗してセーレが呆れちゃったらどうしよう。パパやアガレスに届けるお菓子が焦げたら困る。あれこれ考えて、でも楽しみが勝った。僕はお菓子を食べたことはあるけど、作ったことがないから。
「おはよう、カリス。早いな」
くすくす笑うパパが僕の髪を撫でる。後ろのカーテンが勝手に開いて、お日様が入ってきた。この国のお日様は、前に住んでた地上とは違うけど暖かい。魔法で作ったお日様なんだって。
「うん! おはよう。楽しみでね、早く目が覚めたの」
パパが笑いながら僕を起こして、お洋服を手招きする。こういう魔法は、悪魔なら使えるって聞いたけど。僕はまだ使えない。子どもだからかな。いつか僕も魔法を使ってみたい。
「ほら着替えるぞ。手を上にあげろ」
両手を上に上げたら、パパがすぽんと僕の服を脱がせた。今日は着ぐるみじゃなくて、白い服だったの。お腹のところで縛る服じゃないから、手を上げると脱げるんだよ。
「これに袖を通して、留められるところまでボタンを」
「ここは出来るよ」
胸の真ん中を留める。パパが首を傾げた後、一度外しちゃった。せっかく留めたのに。
「こっちのボタンだな」
さっき僕が留めたボタンより一つ上のボタンへ、指を触れさせる。違うボタンだったの? ボタンを留めたら、さっきは襟がずれたけど、今回は大丈夫だった。その下ももう一つ下も、ゆっくり留めていく。その間にパパがさっと着替えた。
「ここ、お願い。パパ」
一番上は出来ないの。首のところは見えないから、パパがいつも留めてくれる。その上から柔らかい布を襟に回して、リボンに結んでもらった。下は青いスカートを履く。首の布も青なんだよ。スカートより少し色が薄いの。水色の鉛筆に近いかな。
「ありがとう」
「今日も可愛いぞ、カリス」
ご飯が運ばれて、僕はパパのお膝に座る。美味しそうな匂いがして、僕のお腹が「ぐうぅう」と鳴った。
「いただきます」
ちゃんと手を拭いて、パンを掴む。小さくして、口に入れた。千切ったパンをパパの口へ。その間にパパがスープを呼び寄せて、スプーンで「あーん」をしてくれる。パンを飲み込んでから口を開けた。温かくて美味しい。今日は緑色のお豆のスープだった。
パパがスープを飲んでから、僕の前で口を開けた。パンを千切って入れる。僕の倍くらいの大きさでも平気なんだよ。パンを千切るのは僕、スープやお肉をパパが運ぶの。野菜も魚もパパだから大変かなと思ったけど、大人は平気なんだと聞いた。
「カリス、野菜だ」
今日は温かいお野菜だ。お芋や南瓜、あとお馬さんの好きな人参もあった。甘くて美味しい。もぐもぐとよく噛んで飲み込んだ。甘いからお馬さんも好きなんだね。
パパの口にパンを入れて、残りを僕の口へ。いつも同じものを一緒に食べて、同じ時間に食べ終わるの。赤いジュースを飲む僕の隣で、パパは苦い黒いお湯を飲んだ。前にちょっとだけ舐めたけど、美味しくないと思う。正直に言ったら、パパもアガレスも笑ってた。
大人になると美味しくなるのかな。




