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9話目

「おぉウォードくんか。おかえり」


「ウォード様!お帰りなさいませ。冒険者ギルドはいかがでしたか?」


カイゼルとエリアルが部屋でソファに座りながら迎えてくれた。


「カイゼルおじさん、エリアル、ただいま。ちゃんとギルドに登録できたよ。その事じゃないんだけどカイゼルおじさんに相談したい事があるんだけどいいかな?」


「相談?わたしに出来る事があればなんでも言ってくれていいんだよ。それで?」


ウォードは今日あった出来事を事細かにカイゼルへ話した。


「なんと!!スライムにそんな活用法があったとはな......しかし魔物は魔物だ。おいそれと許可はできんが、うーむ」


カイゼルは話を聞きどうすれば民衆を説得できるかを必死に考えている。


「お父様。スライムは魔物ですが力も弱く街の子供でも討伐が可能な魔物ですわ。薬草を育てるのに役立つのであればウォード様のいう通りにしてみるのも民衆の為です」


「それはわかっているのだがなぁ」


「じゃあさ?スライムが誰かの獣魔だったらどうかな?」


「それですわ!さすがはウォード様!獣魔であれば街中に居てもおかしくないですものね」


「おいおい、テイマーは希少なスキルだぞ?そんな希少スキルを持っている者がスライムなど相手にせんだろう。それにこの街でテイマースキルを持っている人間がいるかどうか......」


「居なければ育てればいいよ。希少スキルって言ってもスライムと友達になってくれればいいんだしね。俺に考えがあるから試してみようと思うんだ」


「考えとは?どうやるんだい?」


「それはね......」


ウォードはカイゼルより許可を貰ったので早速翌日の朝から実行に移す事にした。カイゼルは何か問題が起こった時に直ぐに動けるように手配し許可書を作成してウォードに持たせてくれた。



「ここが教会かな?」


翌日、ウォードは西の外れにある教会へと足を運んで居た。この教会で昨日花の露店をしていたメリルに会うためだ。


静かな所だけどなんか喧嘩してる声が聞こえる?なんだろ?


「ですから!お金はお返ししたと言っているではありませんか!」


「ふざけんじゃねぇ!返したのは利息分だろうが!契約であと金貨1枚返す事になっているだよ!」


「金貨1枚なんて借りていません!お借りしたのは銀貨10枚です!」


「何度も言わせんじゃねぇよ!払えないんだったらてめぇが身売りでもして返すんだな!こっちに来やがれ!」


金貸しっぽい奴が女性の腕を強引に引っ張り引きずるようにして出てきた。


「ちょっとまった、女性に暴力を振っちゃダメだってばーちゃんが言ってたよ。その手を放してあげて」


「なんだクソガキ!邪魔すんじゃねぇ!」


男は女性の腕を掴みながらウォードに蹴りを放って来た。

ウォードは蹴りを軽くいなすと女性を掴んでいた手を持ち軽く握り返す。


「いったたたたた!!何しやがるてめぇ!」


「何って軽く腕を握っただけだよ?」


「くっそ!こいつはな!借りた金を返さないような女なんだよ!代わりにてめぇが払ってくれるってんなら別だがな!」


「そうなの?」


「いいえ!借りたお金は銀貨10枚です!利子も倍の銀貨10枚も返し終わってますからそんな事を言われても困ります!」


「ここにしっかりと証文もあるんだ!言い逃れはできねえんだよ!」


「そんな?!証文はしっかりと確認したのに!どういう事ですか?!」


「そんな事は関係ねぇんだよ!こうやって証文にも書かれている以上きっちりと返済はしてもらうからな!残りの金貨1枚!今日中に返せねぇんだったらてめぇは奴隷行きだ!さっさとしやがれ!」


う〜ん。こういう時はどうしようか?証文とかよくわかんないからな。じーちゃんならどうするだろ?うん。ぶん殴れって言うな。ぶん殴っちゃおうかな?めんどくさいし。いやダメだろ。ばーちゃんならどうする?うん。ぶん殴れって言うかも?


「えい」


「ぶふぇぉあ」


ウォードは金貸しの男をぶん殴り吹っ飛ばした。


「ななななにをしているのですか?!」


女性は吹っ飛ばされた男に駆け寄りヒールを唱えて治療しだした。


なぜだ!!悪はこの男の人じゃなかったのか?!間違いだったのかな?


「なぜ暴力で解決しようとしたのですか?!話せばわかってくれるかもしれないではありませんか!」


「えー?でも話して分からない相手ならどうすればいいのさ」


「それでもです!」


うーん難しいな。話しても分からない相手って魔物と一緒じゃん?それを討伐して怒られるってどうなのかね?


腕を組み首を傾げながら頭をひねるがウォードには理解できなかった。


「いっつつつ。やりやがったな!」


「まぁいいや。よく分からないけどお金を返せば納得なんでしょ?はい金貨1枚」


ウォードはポケットに入れてあった金貨を出し男に差し出した。


「ぉおう。わかればいいんだよわかれば」


金貸しの男は金貨を握りその場を立ち去ろうと立ち上がった。


「ちょっと待ってよ。その証文は置いてってもらえる?」


「ちっほらよ!」


投げ捨てるように証文を置いて男は足早に去っていった。


「どういう事ですか?!あなたが金貨を払う理由はなんなんですか!?あなたは一体?」


女性はウォードを見やると驚き戸惑いつつも奴隷にされる寸前だった事を思い出し腰を抜かしていた。


「俺の名前はウォードです。10歳の普通の男の子です。どうぞよろしく」


「10歳の普通の男の子は金貨など持ってはいません!殴ったりもです!」


そりゃそうだわ

聞くとこの女性はこの教会のシスターで裏の土地に小屋を建て子供達と暮らしているそうだ。借金も小屋に住んでいる子供達の為に借りたみたいであった。


「えっとこの教会にメリルって子がいますか?その子に用事があったんだ」


「メリルのお友達?そのお友達がメリルに会いに来てくれただけなんですか?」


「うーん。ここだと話しずらいから落ち着いて話せる場所がいいんですけど」


「それもそうですね、では教会の中でお話しをお聞きいたします。メリルもお呼びしますね」


教会の奥の部屋に通されたが決して綺麗な教会とは言えない内装だった。床は抜け椅子は壊れ内壁も所々ヒビが入っていた。


「オンボロでびっくりしたでしょう?これでも多少はお祈りに来てくださる方もいらっしゃるんですよ?」

シスターは苦笑いをしながら案内してくれた。


お茶を出され口を付けたが水を温めただけの白湯だった。


「ウォードお兄ちゃん!!」


扉をあけ放ちメリルが飛び込んできた。


「やぁメリル。昨日ぶりだね」


「お兄ちゃんがシスターを助けてくれたんでしょ?!ありがとう!」


「こら!メリル!お客様に失礼でしょ!」


「いいですよ。メリルは友達だからね」


メリルも落ち着いたところで本題を切り出す事にした。


「俺がここに来たのはメリルに仕事を頼もうと思って来たんだ」


「仕事?」


「ちょ、ちょっと待ってください......メリルはまだ6歳ですよ?仕事をするには10歳位にならなければお役にたてるかどうか」


「その辺は大丈夫だと思いますよ?」


「お兄ちゃん!私どんな仕事でもするよ!シスターとみんなのためだもん!なんだってできるよ!」


メリルは小さい手を握り気合十分だとウォードに告げている。


「うん、これはメリルにしかできない事だと思うんだ。メリルが花を育てている場所があるだろ?そこで育てて欲しい物があるんだ」


ウォードは魔法鞄鞄マジックバックから薬草を取り出し机の上に置き計画を説明した。


「メリルがスライムを?!無理に決まってます!そんな危険な事をメリルにさせる訳にはいきません!」


少し悩んでからメリルは決心したように言葉を発した。


「お兄ちゃん。わたしやってみたい。成功すればここのみんなだけじゃなくて街の人達も助かるんでしょ?だったらやってみたい!」


「メリル......これはとても危険な事なのよ?それでもやるって言うの?」


「シスター。こんなわたしでもお兄ちゃんみたいに役にたつならやってみたいよ」


「うん。メリルならきっと成功するよ」


確信があるわけでは無いけれど、ウォードには自信があった。メリルの優しさはきっと役に立つと。


決心したメリルと共に東の森へとやって来た。

メリルはクロの上に跨らせその横を走りながら今回の計画の第一段階を説明した。


クロにも怖がらないで乗ってくれたから問題なさそうだね。


「いいかいメリル?スライムを見つけるまでは決してクロから降りちゃダメだよ?クロもメリルの事頼んだよ」


「わかったよお兄ちゃん!クロちゃんもよろしくね」


「がう!」


クロもメリルの事が気にいったみたいだ。


「じゃあ森に入ろう。スライムは気配を消すのが得意だからゆっくり探すよ」


「おー!」

「がーぅ!」


森に入るとすぐに魔物が襲ってきたが底LVのものばかりで魔の森とは大違いだった。

水場に行けば居ると思ったけど見つからないな?


「ちょっとこの辺で休憩しとこうか」

川辺でクロからメリルを下ろし水を飲んでいるとガサゴソと木陰から魔物が現れた。念願のスライムだ。


「メリル。あれがスライムだ。危険は無いからゆっくりと近づいてこの餌をあげてみて」


「う、うん。わかった。やってみる」


メリルに魔物の肉を手渡しゆっくりと近づいていく。


「えっと......おいで?怖く無いよ。ほらこれ食べていいよ?」


プルプル


よし。スライムがメリルに興味を持ってくれたみたいだな。その調子ならすぐに友達になれるだろう。


しかし、その後方から別の魔物が現れた。カエルを大きくしたようなエッジフロッグだ。


「スライムちゃん!危ない!」


メリルはスライムに覆いかぶさるように抱きかかえ自分よりもスライムを助けようとした。


「良いところを邪魔しやがって!火球剛乱<ファイヤーボール>」


ウォードの手のひらから無数の火の球をが生まれエッジフロッグに襲いかかり焼き尽くした。


「メリル!大丈夫?!」


「うん!スライムちゃんも無事だよ!」


スライムよりも自分の事を考えて欲しいんだけどね。まぁメリルらしいか。


メリルの腕の中でスライムはプルプルと揺れておりメリルの肩に乗って頬ずりをしだした。


「きゃ、くすぐったいよ!あはは!」


「うん、成功だね!メリルその子に名前を付けてあげてごらん?」


「名前?うーん。じゃあ今日からあなたはスラリンね!」


名前をつけるとスライムが光り出し獣魔の契約が成された。


「これで問題はクリアだ!さぁ街へ帰ろう!」


ウォードとメリルはクロに跨り、颯爽と森を抜け街へ戻った。


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