10話目
メリルとクロ、そして今回メリルの獣魔になったスラリンと共に街へ入る門まで戻ってきた。街へ入るにはまずスラリンにタグをつけて貰わないといけない。
「やぁウォードくん、早かったね。目的は果たせたのかい?」
「ただいま!バッチリだよ!今回はメリルが大活躍だったからね」
親指を立て成功だと告げる。
「それはよかったね!じゃあ身分証の提示とスライムにタグを付けるから銀貨1枚をもらえるかな?」
「はい。これが俺の身分証のギルドカードね。それと銀貨1枚」
「わたしの身分証は市民証でお願いします」
メリルはこの街に住んでいるから市民証が発行されるんだ。出るときに木札を貰っていたからそれが市民証だったんだな。
「確かに。ではこれが獣魔のタグです。知っていると思うけど街で自分の獣魔が問題を起こしたら主人の責任になるから気をつけるんだよ?」
「はい!わかりました。ありがとうございます!」
メリルが元気に返事をしてからスラリンにタグをつけようとしたけれど、どこに着ければいいのか迷っていたがスラリンはタグを身体の中に取り込むような形で飲み込んだ。外から見ると透けてタグが見えるようだ。
「よし!じゃあ教会へ戻ろう」
「はい!スラリンおいで!」
メリルはスラリンを抱きかかえるとプルプルと嬉しそうに震えている。
教会に到着するとシスターが出迎えてくれた。
「メリル!ウォードさん!」
やっぱりメリルの事が心配だったんだろうなぁ。それもそうか?俺がいると言っても魔物が出る森に行かせたわけだからね。
「メリル!大丈夫だった?!怪我はない?」
「シスター、わたしは大丈夫よ!それにほら!この子がわたしの獣魔のスライムで名前はスラリンってつけたんだよ!かわいいでしょ?」
「そう。怪我が無くて本当に良かったわ。それに魔物だから怖いと思って居たけどプヨプヨしてて可愛らしいわね///」
シスターもスラリンの可愛さに魔物とは違った見方をしてくるみたいだな。これなら街の人が見ても問題は無さそうだね。
「じゃあ帰って来たばかりだけど次の計画を教えるから教会裏庭の広いところに行こうか?ここからはシスターの協力が必要になると思うんで一緒に来てくれる?」
「はい!頑張ります!」
「わかりました。ご指導お願い致します」
指導ってほどでもないんだけどシスターに覚えて貰えれば後々に自分たちでできるしね。
2人と一緒に教会の裏手の広場へ移動して薬草栽培に適した場所を確認した。
「この辺でいいかな?ちょっと危ないから離れててね?いくよー?土魔法<アースクエイク>さらに構築魔法<コンストラクションフェンス>」
ウォードが魔法を唱えると硬かった地面が掘り起こされ柔らかくなり、さらに頑丈なフェンスが一瞬で出来上がった。
「ウォードお兄ちゃん!すごい!」
「一瞬でこんな魔法を唱えるなんて......」
「こんなのは魔法使える人なら普通なんじゃないかな?」
「これが?ふつう?!」
「へー魔法ってすごいんだね〜」
「いえいえ?!普通演唱にもっと時間がかかるものですし、2つ同時になんて聞いたこともありません!そんな事ができるのはごく一部の限られた才能を持っているひとだけですよ?!例えば魔神様とか王都のS級魔道士様とか!」
「そういうもんかね?まぁ細かいことは置いといて、メリルここの柵の中にこの薬草を9本位植えてくれる?植えたらスラリンをそこに放しておいてね」
「はい!」
メリルは薬草を等間隔の距離に植えてスラリンをそこに放してくれた。
「よし!そしたら水を汲んできて1日1回少量を与えればあとは勝手に育ってくれると思うよ?1週間もすれば十分な量に増えてると思うから余計な雑草を抜いたりしてくれれば大丈夫。スラリンも雑草は食べていいからね」
「わかりました!頑張ります!」
「ウォードさん。薬草をここで育てているのがわかったりしたら問題が起こったりはしませんか?夜に盗られたり......」
シスターの心配も最もな意見だな?その辺までは考えていなかったけどどうしよう?うーん。ギルマスに相談してみようかな?
「そうだね。ちょっと考えがあるから心配しなくていいよ。1週間後に様子を見に来るからそれまでよろしくね」
「まかせて!スラリンも一緒に頑張ってくれるしね!」
スラリンもプルプルと体を震わせて任せろと言っているようだった。
ウォードは場所を冒険者ギルドへと移しギルドマスターへ面会を申し込もうとミミルを訪ねた。
「ミミルさんこんにちは!」
「ウォードくん、こんにちは!今日はクエスト?」
「いや、ギルマスに相談があるんだけど居るかな?」
「えぇ、ギルマスなら部屋に居ると思うけど、例の件?」
「うん、計画が進んだからそれの報告と今後の対策を相談したいんだ」
「わかったわ、一緒に来て」
ミミルに連れられギルドマスターの部屋の前にやって来た。
コンコン
「ミミルです、ウォードくんがいらっしゃっています」
「入りなさい」
「失礼します」
俺もペコリと会釈しながらついて行く。
「それで?相談というと薬草の事かしら?でもまだエッジワース公爵様から許可を頂けるように面会を申し込んでもいないのよ?」
「あぁそれはもう貰ったから大丈夫だよ?」
「「はぁ?」」
またしてもギルドマスターとミミルはハモりながらどうやって貰ったのか問いただすように慌てて聞いてきた。
「あれ?言ってなかったっけ?俺が今住んでいるところが公爵家なんだけど、昨日帰った後にカイゼルおじ......公爵様からこれを貰ったんだ」
ウォードはついついおじさんと言ってしまう所を正しながら公爵家の許可書を取り出しギルドマスターに手渡した。
危ないあぶない、こういう所ではちゃんと公爵様って言わないといけないんだったっけ?家じゃ優しいおじさんって感じだからつい忘れちゃうな。
「確かにこれはカイゼル公爵様のサインね。間違いないわ」
ギルドマスターは許可書を隅々まで確認したところでため息が出ていた。
「はぁ〜もう驚くのにも疲れちゃったから先に全部説明してちょうだい」
「わかった、もうスライムもテイムして場所も確保して薬草を植えたんだけどね?街中だから何が起こるかわからないじゃん?だから24時間体制で警備をお願いしたいんだ。信頼できる人にね。それをギルドマスターにお願いしようかと思ってさ」
ギルドマスターは頭を抱えながら今後起こりうる事態を想像し適任を選出していた。
「こんな大事業をおいそれとやってしまう辺り、本当に貴方が10歳かどうか疑いたくなるわね」
ウォードは言っている意味がわからなかったが子供扱いされている事だけはわかり少しムッとしていた。
そんな言い方しなくてもいいのに。
どうせ俺はまだ10歳ですよ!
ツーン
「何をムクれているのよ。そういうところを見るとまだまだ子供って感じで安心するわね」
ミミルもクスクスと少しほっとしたような笑顔を見せた。
「警備の件はわかったわ。一応教会周辺も視野に入れて警備に当たらせます。とりあえず1週間を目処にしていいのね?」
「うん。1週間後に栽培可能かどうか確認するのと栽培が可能であれば薬草の魔力量の確認をして西の平原で採取するものと比べてみようと思うんだ」
ギルドマスターに警備の依頼をしてから屋敷に戻りカイゼル公爵へと今日の成果報告を済ませる。
「ほぉ、スライムを獣魔にできる者が本当に教会の孤児院にいるとはな。それで?1週間後には成果が確認できるのだね?」
「うん!メリルはテイマーとしての素質があったからね。1週間もあれば必要十分量の薬草が栽培出来てると思うよ。それで〜......もう一個お願いがあるんだけど」
ウォードが言い出しにくいように頭を掻きながら言い淀んでいる。
「ふふふ、ウォードくんのそういうところは新鮮で可愛いわね。なにか頼みごとならなんでも言っていいのよ?」
体調もすっかり回復したミレーヌが言い淀んでいるウォードを見て笑顔になる。
「大丈夫だ、昨日も言っただろう?ウォードくんからの頼みなら無下にはできんとな。いいから言ってみなさい」
「うんありがとう。えっとさ、そのメリルが居る孤児院なんだけど子供が多くてさ。確かシスターが言うには20人くらい居るって言ってたかな?だからごはんを食べるのにも毎日苦労してるみたいなんだ。だからさ、毎日ご飯に困らないようにしてあげたいんだけど方法がわからなくって。カイゼルおじさんならいい方法が思いつくんじゃないなかって」
「なるほどな、確かに孤児院への援助金だけでその人数を養って行くのは無理がありそうだな。ならば援助金の増額を検討してみるか?」
「いやお金で解決できるんだったら俺が出しても一緒でしょ?だからお金よりも自分達で生き抜く方法がないかなって。メリルへは薬草栽培の報酬があるけど、栽培の成功で今後生活に苦労しなくてもいいようにしてあげたいんだ」
「ウォードくんは先を見据えて孤児の子供達だけでもお金を稼げる方法を模索しようとしているのね?素晴らしい事だわ!ね、あなた!何かいい方法はないかしら?」
「むむむ。そうだなー。栽培が成功すれば定期的に薬草を買い取り金にする事は可能だが量産となるとスライムが1匹だけでは難しいだろうな。他にスライムをテイムできるような人材がいれば別だがさすがにすぐに見つける事はできんだろうしな」
「そうなんだよね。ぱっと見た感じではメリル意外に素質がある子は居なかったからどうしようかと思ってさ」
「当面は資金援助ではなくても物資援助だけでもしたらどうかしら?時間が経てばメリルさん意外にもスライムに嫌悪感が無くなりテイマーとして目覚める子も出てくるかもしれませんしね」
「そうだな。まぁまずは1週間後に儂も教会へ出向き検分させてもらおう。孤児院へは当面の物資を届けさせると言う事でどうかな?」
「うん!カイゼルおじさんありがとう!物資だけでも子供達が喜ぶよ!ミレーヌおばさんもありがとう!」
書斎のドアからノックする音が聞こえエリアルが入ってきた。
「もう!お父様もお母様もズルいですわ!ウォード様と楽しくお話しているなら呼んでくれてもいいではありませんか!」
そんなエリアルの言葉に部屋からは笑い声が聞こえる。そんな楽しい団欒だった。




