追放
夜雀族の長の背中が徐々に遠退く様を
女はただただ歯を食い縛りながら
眺めていた。
完全に長の姿が見えなくなると、
女は感情を爆発させた。
「何故!?
何故お止めになられたのです!!」
女は今にも掴み掛かろうとする
自分を必死に律した。
もしそのような事をした暁には、
自分の頭と胴は永劫に離れ離れに
なってしまうからだ。
女に食って掛かられた男は、
相変わらず不敵な笑みを浮かべている。
「お前は夜雀を取り逃した。」
事実を女に告げる。
「ッ!それはあなた様が!」
「"俺が止めなければ、
確実に捕まえられた。"
お前はそう言いたいのだな?」
出かけた言葉を女は慌てて飲み込む。
確実に捕まえれる・・・?
奴の術中に嵌まってしまったのに?
私は本当に捕まえられただろうか?
「・・・ふっ。」
男は黙った女を一瞥し、
洞窟へ足を戻す。
「・・・お、お待ち下さい!」
慌てて後を追う女。
だが、彼女が洞窟に戻る事は
叶わなかった。
洞窟の入り口を
大勢の仲間・・が塞ぐように
現れたからだ。
「二度も取り逃がして、
貴様はまだここに居座るつもりか?」
振り向かずに男が言い放った言葉に、
女は足を止める。
いや、止めなければならなかった。
「お前は取り返しの
つかない失敗をした。」
淡々と述べる男の言葉に
女の顔から血の気が失せていく。
「そ、そんな!
アンタに捨てられたら、
アタイはどうすればいいのさ!?」
「そんなことは知らん。」
ーーーー!?
「い、一族を差し出してまで
貴方に仕たのさ!
アタイには!アタイにはもうここしか・・・!」
「くどい!」
威圧的な声。
男の声を聞いて、
配下の鬼達が下卑た笑みを浮かべた。
「おい、好きにしていいぞ。」
歓喜の声を上げた鬼共が
一斉に女に飛びかかる。
「そ、そんなのって・・・・っ!?」
女は必死に逃げた。
特に行く宛は無い。
だがここにはもう居れない。
「・・・・畜生!」
畜生畜生畜生畜生畜生
畜生畜生畜生畜生畜生!
「殺してやる!殺してやるっ!」
歯をギリギリと噛み締める。
じわりと口の中に血の味が広がった。
塞がりかけていた口の中の傷が
また開いたからか。
それとも屈辱を噛み締めているからか。
「殺せェ!」
「ガアアアアァァァァァッッ!」
今まで自分の配下だった
鬼達が恐ろしい形相で
追いかけてきた!
「くっっっっっっっそおおおおお!」
女は必死に迎え撃つ。
幹部を張っていただけあり、
彼女には"生き残る為の力"があった。
迫り来る鬼どもを殺しても、殺しても、
次から次へと鬼が迫る。
死なない!
あの男を殺すまでは!
あの人を助け出すまではッ!!
「うおおおおお!」
女は雄叫びを上げる。
こんな所で死ぬわけにはいかなかった。
覚えていろッ!!
どんな手を使っても、
アタイはお前を追い詰めるっ!
鬼の反り血を浴び、
真っ赤に染まってゆく視界の中、
女は復讐に燃えた。




