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残夏の園(改訂版)  作者: ずんだもち
一章 異世界
12/26

救助

荒い息を吐きながら、

私は先を急いでいた。


この先に一体何があるのか?

ある程度は想像できる。


・・・それに、

さっきの化け物がまだ残っている

可能性もある。


なら何故危険を犯してまで

私は現場に急行するのか。


こればかりは性としか言いようが無い。

元海軍将校の祖父や元警察官の父の

影響を受けてか、

私はこの手の事に関して

一切の妥協はしたくなかった。


人命がかかってるやも知れない未曾有の危機。


提灯は先程の場所に

置いてきてしまった。


しかし幸いにも

煌々と輝く見事な満月のお陰で

視界はほぼ昼間と同じぐらいに

確保されている。


嫌な予感と自分の取り越し苦労

であって欲しいと言う

微妙な感覚が胸を締め付ける。


進むにつれ、

どんどん血の臭いは濃くなり、

べっとりとした空気が

喉にへばりついた。


これは・・・関わら無い方が

良いかも知れない。


一瞬、そんな考えが頭を過った。


・・・糞ッ!!


自分の胸を何度も叩き、

その考えを振り払う。


どれぐらい走っただろうか、

息も絶え絶えになってきた頃。


目の前に大きな川が表れた。


"迷ったら川沿いに進め"


清瀬さんの言葉だ。


期せずして、

目的の川を発見してしまった。


・・・よし、ここで一息つこう。


私が倒れてしまっては元も子も無い。


連絡手段も無いし、

あったとしても

この世界に消防や救急が

あるとも考えにくい。


取り敢えず水分を補給せねば・・・。


私は汗を拭いながら

川の水を掬った。


「うぉっ?!」


私は驚いて尻餅をついてしまった。


今、私は確かに川の水を掬った。

なのに月明かりからでも判るぐらいに

私の手は真っ赤になっていたからだ。


恐る恐る手の臭いを嗅いでみる。


・・・血だ。


間違いない。


一体どこから・・・?


血は川の上流から

流れているようだった。


・・・ん?


「あれは・・・?」


目を細める。


ぼんやりうつる川面に、

何かが浮いている 。


・・・まさか!


私は川に飛び込んだ。


「わっぷ!?」


川は思いの他深く、

一瞬溺れそうになるが

なんとか体制を立て直す。


幼少時に水泳を習っててよかった。


そしてゆっくりと

川面に浮かぶ何かに近付いた。


あれは・・・動物か?


川面に浮かぶ"何か"に近づくにつれ、

段々川の水が赤みを帯びだし、

鉄のような臭いが鼻を刺激する。


そしてその辺り一面の水は

真っ赤に染まっていて、

少し粘り気が・・・。


「お!おい!大丈夫かっ!」


力の限り叫んだ。


川面に浮かぶ"何か"は人だった!


小柄な容姿から、

まだ年端もいかない、子供だ!


怪我をしているのか?!

この大量の血はこのこの子からか?!


「大丈夫か!おい!返事しろ!」


危険だ。

水に浸かっていては、

血は固まらない。


血液が凝固しなければ

血は止めどなく溢れてくる!


私は怪我人を抱えあげ、

岸へと上がった。


重っ!


外見からは想像できないぐらい重い。


岸に平な岩場があったので、

そこに寝かせることにした。


ゆっくり、

そろりと怪我人を下ろす。


患部を確認したいが、

怪我人の全身は血みどろで

何処を怪我しているかわから無い。


・・・服を脱がすか。


・・・ふむ。

顔付きは整っている。


胸が弱冠膨らんでいる。

どうやら女の子のようだ。


外見は・・・中学生ぐらいか?


前半身に傷は無い。


後半身は?


私は慎重に女の子の身体を

回転させ、うつ伏せに寝かせる。


・・・おお!

背中に翼がある!


コスプレか?

いや、この世界にそういう概念は無い。


ならばやはり・・・いや、

今はそんな事どうでもいい。


ところでコレは何だ?


私は彼女の翼についている

鉄の何かを手に取った。


鉄で出来た何かは

私の世界でも見た事のある代物だ。


虎ばさみ?


どうやら翼に食いついてるらしい。


「んっ・・・くっそ!固い!

~~~!おらぁ!」


渾身の力を込めて

虎ばさみをとる。


どうやら上手く取れたみたいだ。


怪我はこの虎ばさみによるもの

らしかった。


私は出血の酷い箇所に

この前人里で貰った

携帯していた薬草を擦り付ける。


万が一の時の為に、

持ってきておいてよかった。


「があぁぁ・・・!」


少女が呻き声をあげた。


傷口を擦られたのが痛かったのか、

苦しそうに寝返りを打とうとするが、

その力も残っていないようだ。


良かった!

意識はあるようだ!


口を大きく開けて、

首を嫌々と横に振る。


「すまん!痛いだろうが

我慢してくれ!」


所詮素人の荒療治。


こんなことで傷が治るとは思えない。


そもそも、

この子は清瀬さんから

前々から聞いていた

"妖怪"、それも"夜雀族"という

種族ではないだろうか?


妖怪に効率のいい応急処置なんて

私がわかるはずもない!


そもそも何故翼に虎ばさみが

ついてるんだ?


翼があると言うことは、

空を飛べるんじゃあないのか?


とりあえず私は簡単な止血を施し、

この子を治療してもらうため、

一緒に麓の人里まで

連れていくことにした。


確か人里には診療所が

あったはずだ!


彼女を背中に背負い、

私は今まで以上に急ぎ足で山を下った。


問題は彼女の体重だ。


見た目は中学生ぐらいなのに、

かなり重い。


ああ、腕がつってきた。

足が笑う。


正直休憩したいが、

そんなことをしたら

この娘は死んでしまうかもしれない。


「頑張れ!死ぬなよ!」


自分と女の子に檄を飛ばした。


結局、麓の里に着いたのは翌日の夕方

になってしまった。


第一章 異世界 【完】

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