第一話 「宿題の葛藤」
…チリン。
夏の縁側に吊るされた風鈴が涼やかな笑い声を上げる。
「麟りん、お前は…あいつと仲良くやっていけるだろうか……。」
碧に染まった空の下、ある日のおじいさんは小さくため息をついた。夏の蝉の声、揺らめく陽炎、流れる雲。すべてはおじいさんを置き去り、今日も時は流れてゆく。そんな情景を破って無邪気な声が割って入ってきた。
「おじいちゃん見て!すいか!食べよう!」
「食べようか。」
「うん!!」
あの夏はもう夢
あの夢はもう過去で
あの過去は夏だったくせに、暖かい。
チリン。
「はっ……!!」
風鈴の音で目を覚ました私は飛び起きた。
「またあの夢…私、何回あれ見れば気が済むんだろう…」
チリリン。
あの時と同じ風鈴、同じ場所、同じ蝉時雨せみしぐれ、同じ雲、同じ陽炎かげろう、同じ時の流れ。しかし、今はおじいちゃんがどにも見当たらない。たったそれしか違わないのに酷く悲しく感じる。
ボーーっといつものようにあさっての方向を眺めるが、父親がきた。
「麟りん、父さんゴルフ行ってくるから留守番よろしくなーー!」
「んー。」
「知らない人がきても玄関の扉は開け―」
「んー。」
遠くから聞こえる声になんとなく返事を返した。話し相手が親だから、喋るのがめんどくさい。「高校生なんてそんなもん。」と自分に言い訳をする。
「夏休みの宿題やりたくない…けどやらないと…」
私は宿題のことを考えるうちにどんどん憂鬱な気持ちになっていった。
面倒臭くてゴロゴロするけど、それをしている自分に罪悪感を感じる。そして、せめて違うことでもやろう!と考えるが、それも面倒でまたループしていく。
「あっ…!」
そんなループ中に私は名案を思いついた。
「やらない理由つければ罪悪感無くなるかも?」
案の定、とてもくだらない思いつきだった。しかしこの無限ループに入ったからにはこのを実行するしか抜け道はない。
私は宿題の言い訳を探すための『宿題』に取り掛ろうとあの夢の縁側で立ち上がった。
今日も時は流れてゆく。
今回はこの作品を手に取ってくださり、ありがとうございます。
この作品は小説投稿サイトカクヨムでも投稿を行っております。
これからこの作品を大切に紡いでいくので見守ってくださると幸いです。




