表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/90

第78話 境界を決める者

 会議室の椅子が、足りていなかった。


 それが、すべてを物語っている。


 いつもの長机では収まらない。

 追加された椅子。

 壁際に立つ者。

 扉の外にも人影。


 地方領主が、全員集められている。


(……重い)


 空気が違う。


 昨日までの議論ではない。

 今日は――決める。


 私は席に着いた。


 正面にアルヴェリック。

 隣にレオンハルト。

 上座にカイゼル。


 そして、周囲に領主たち。


 全員が、少しだけ疲れている顔をしていた。


 だが、目は鋭い。


「始めよう」


 カイゼルの一言で、ざわめきが止まる。


 誰も余計なことは言わない。


「議題は一つだ」


 彼は言った。


「境界」


 短い言葉。


 だが重い。


「どこまでを国家が決めるか」

「どこからを順番に任せるか」


 沈黙。


 アルヴェリックが立つ。


「提案を述べます」


 彼は、淡々とした声で言う。


「国家が決める範囲」


 紙を置く。


「資源配分」

「人員配置」

「優先順位」


 そして。


「緊急時対応」


 火災の記憶がよぎる。


「順番に任せる範囲」


 彼は続ける。


「現場運用」

「再訓練順序」

「物資配布の具体的流れ」


 一見――妥当。


 だが。


(違う)


 私は、ゆっくり息を吐いた。


「それでは」


 私は立ち上がる。


「順番は残りません」


 空気が張り詰める。


 アルヴェリックは動かない。


「なぜ」


「優先順位を国家が決めるからです」


 私ははっきり言った。


「優先が決まれば」

「順番は従うだけになる」


 沈黙。


 地方領主の一人が頷く。


「……確かに」


 アルヴェリックが言う。


「優先は必要です」


「ええ」


「ならば順番は従うべきだ」


「違います」


 私は一歩前に出る。


「優先は例外です」


 室内が揺れる。


「例外?」


 レオンハルトが問う。


「ええ」


 私は答える。


「順番が基本」


「優先は例外」


 カイゼルが、ゆっくり言った。


「逆ではないのか」


「逆です」


 私は首を振る。


「逆だから壊れる」


 沈黙。


 私は続ける。


「昨日の火災」


「順番で動いた」


「優先で動いたのではない」


 誰も反論しない。


 見ていたからだ。


「優先は必要です」


 私は認める。


「だが」


「優先が常になると」


「順番は消える」


 アルヴェリックが、低く言った。


「国家は常に優先を扱う」


「ええ」


「だから分ける」


 私は彼を見た。


「緊急時だけ」


 沈黙。


「平時は順番」


「緊急時は優先」


 空気が、変わる。


 シンプルだ。


 だが――重い。


 地方領主たちがざわめく。


「それなら……」

「分かる」


 少しずつ。


 傾く。


 アルヴェリックは黙っている。


 やがて言った。


「境界が曖昧だ」


「ええ」


 私は頷く。


「だから現場で決める」


「国家ではなく?」


「ええ」


 沈黙。


 ここが核心だ。


 誰が決めるか。


 国家か。

 現場か。


 レオンハルトが口を開く。


「国家が決めれば速い」


「ええ」


「だが現場は守る」


「ええ」


 彼は静かに言った。


「どちらを選ぶ」


 カイゼルが笑った。


「選ばない」


 彼は立ち上がる。


「任せる」


 全員が彼を見る。


「現場に」


 沈黙。


「国家は基準を示す」

「だが決めない」


 私は、わずかに息を吐いた。


 アルヴェリックが言う。


「責任は?」


「国家が持つ」


 カイゼルは即答する。


「だが判断は持たない」


 それは――


 新しい形だった。


 誰も経験していない。


 だが。


(……残る)


 順番が残る形。


 アルヴェリックは、長く黙った。


 やがて。


「……条件があります」


 彼は言った。


「何だ」


「監視」


 沈黙。


「順番が崩れた場合」

「即時介入」


 私は考えた。


 そして。


「いいでしょう」


 頷いた。


 カイゼルが言う。


「決まりだな」


 誰も反対しない。


 完全ではない。


 だが――


 一つ、形ができた。


 境界。


 国家と順番の。


 会議が終わる。


 人が動く。


 だが今度は――


 少しだけ静かだ。


 ミレイアが、小さく言った。


「……決まりました」


「ええ」


 私は頷く。


「一応は」


 廊下に出る。


 空気が軽い。


 だが。


 完全ではない。


 アルヴェリックが、隣に来た。


「あなたの勝ちですか」


「違います」


 私は言った。


「残っただけです」


 彼は少しだけ笑った。


「国家も残る」


「ええ」


 沈黙。


 そして彼は言った。


「試します」


 私は止まる。


「まだ?」


「ええ」


 彼は静かに言う。


「理想は、現実で崩れる」


 私は彼を見る。


 その通りだ。


 制度は。


 順番は。


 必ず崩れる。


「次は」


 彼が言った。


「地方です」


 沈黙。


 私は理解した。


 王都ではない。


 現場。


 本当の場所。


 そこで。


 この境界が試される。


 私は、ゆっくり息を吐いた。


 王都は終わりではない。


 ただの――


 始まりだ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


ついに「境界」が決まりましたが、これはゴールではなくスタートです。

次は実際の地方で、この制度が本当に機能するのかが試されます。


理想は現実で崩れるのか、それとも残るのか。


ここからが物語の本当のクライマックスです。


面白いと思っていただけたら、ぜひブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです。


次話もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ