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婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


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第40話 王にならなかった者の領地

 春が、遅れてやってきた。


 雪解け水が細い流れとなり、

 畑の土が柔らかさを取り戻している。


 辺境は、変わらない。


 速くもなく、

 遅れもせず、

 ただ、回っている。


 王都からの最終報告が届いたのは、その朝だった。


 ――ノルト西境改革、継続承認

 ――段階的移行制度、参考事例として登録

 ――グレイス辺境伯領、特例扱い維持


 特例。

 広げる対象ではない。

 だが、否定もしない。


 私は、書簡を閉じた。


「……結局」


 ハロルドが言う。


「王都は、速さを主軸に据えましたな」


「ええ」


「こちらは、例外のまま」


「ええ」


 私は、少しだけ笑う。


「例外は、消されにくい」


 主軸は、責任を取らされる。

 例外は、観察される。


 それだけの違いだ。


 午後、アデルハイトが最後の挨拶に来た。


「戻るわ」


 顔色は、以前より落ち着いている。


「段階制は、定着し始めた」

「暴動は、止まった」


「ええ」


「税収は、少し落ちたけど」


「ええ」


 彼女は、肩をすくめる。


「でも、戻せる」


「ええ」


 それが、全てだ。


「あなたは、選ばれなかった」


 彼女は、はっきり言った。


「王都に」

「改革の象徴に」


「ええ」


「悔しい?」


「少しは」


 私は正直に答える。


「でも、必要ありません」


 彼女は、しばらく私を見つめた。


「あなたは、王にならない」


「ええ」


「でも、王より長く残る」


 その言葉に、私は返さなかった。


 彼女が去った後、

 私は高台に立った。


 焚き火の数は、増えている。

 少しずつ。

 本当に、少しずつ。


 誰も、私を見ていない。

 誰も、私に期待していない。


 それでいい。


 制度は、私のものではない。

 私が去っても、回る。


 それが、完成だ。


 帳簿の最後のページに、私は書いた。


 ――第二期、開始


 王都は、速い方を選んだ。

 私は、選ばれなかった。


 だが――


 ここには、

 戻れる場所がある。


 王にならなかった者の領地。


 派手さはない。

 称賛もない。


 それでも。


 正しさは、いつも遅れてやってくる。


 そして一度来た正しさは、

 静かに、

 長く、

 残り続ける。


 物語は、まだ終わらない。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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