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婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


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第24話 助けすぎないという選択

 手引きが出回り始めてから、三日。

 辺境は、少しだけ騒がしくなった。


 市場の隅で、紙を読み込む者。

 執務室の前で、質問の順番を待つ者。

 そして――答えに納得できず、去っていく者。


(健全ね)


 私は、その様子を遠巻きに見ていた。

 全員が受け入れる必要はない。受け入れられない人がいることも、前提の一部だ。


「……また、受け入れ要請です」


 ミレイアが、少し疲れた声で言った。

 手には、別の領から届いた書簡。


「“帳簿改革に失敗したので、人を引き取ってほしい”と」

「人数は?」

「四十名ほど……」


 私は、すぐには答えなかった。


(来ると思っていた)

(でも、想定より早い)


 失敗は、必ず弱いところに流れ込む。

 そして、成功例は“受け皿”にされる。


「条件は、書いてある?」

「……ありません」


 それが、答えだ。


 午後、私はハロルドとミレイアを交え、小さな会議を開いた。

 議題は一つ。


「全員は、受け入れません」


 ミレイアが、はっと顔を上げる。

「……でも」

「ええ」

 私は頷く。

「助けたい気持ちは、あります」


 だからこそ、線を引く。


「無条件で受け入れれば」

「ここが壊れます」


 ハロルドは、苦い顔をした。

「……分かります」

「でも、言われるでしょうな」

「“冷たい”と」


「ええ」

 私は淡々と答える。

「それでいい」


 私は、一枚の紙を取り出した。

 そこには、簡潔な条件が書かれている。


 ――受け入れ条件(暫定)


 一、受け入れ人数は、現行人口の五%以内

 二、受け入れ前に、生活保障の目処が立つこと

 三、送り出し側が、失敗理由を文書で提出すること


「三つ目が……厳しいですね」

 ミレイアが言う。


「ええ」

 私は頷く。

「でも、これが一番大事」


 失敗を言語化できない改革は、必ず繰り返す。

 それは、前世でも、今でも同じだ。


 夕方、私は集まった人々の前に立った。

 外から来た者も、領民も、混じっている。


「ここは、逃げ場ではありません」

 私は、静かに言った。

「立て直す場所です」


 ざわめきが起こる。


「助けは、します」

「でも、全部はできません」


 誰かが、声を上げた。

「それでも、ここしか……」


「だから、条件を出します」

 私は遮らない。

「守れる人だけ、残ってください」


 沈黙。

 そして――半分ほどが、残った。


 去っていく背中を、誰も責めない。

 それが、この領地の選択だ。


 夜、ミレイアが小さく言った。

「……間違っていませんよね」


「ええ」

 私は答える。

「“助けすぎない”のも、責任よ」


 帳簿の端に、私は新しい項目を書き加えた。


 ――受け入れ上限

 ――失敗理由の共有


 数字は冷たい。

 だが、無限ではない。


 この領地を守るために、

 私は今日も、選ばなかった人を背負う。


 それでも。


(壊れるより、ずっといい)


 助けすぎないという選択は、

 誰にも褒められない。


 だが、長く続く場所には――

 必ず必要な選択だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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