第8話・後始末と炎龍石
俺は火石巨人を倒した後、カエデの指示でその残骸を集め始めた。
「火石巨人の体は、高純度のマグナ岩からできているんですよ。結構貴重な鉱石ですし、こんな機会滅多にありませんから、集めて素材として取っておきましょう。」
と言うことらしい。
ひとしきり集めた後、俺とカエデはアグリ山をおりることにした。
やはり、人の姿が見えない。
おそらく、さっきのやつにここら一帯の支配権を奪われてしまっていたのだろう。
と、下山しきったところで、岩陰から人がわらわらでてきた。
代表らしきやつが前に進み出て、俺に話しかけてくる。
「….あなた方、山の上の方で大きな音がしたと思うのですが、何かご存知ですか?」
「ご存知も何も、なんかでっかい赤いゴーレムが出てきて因縁つけてきたからぶっ飛ばしただけですが….。」
瞬間、代表らしき男の後ろに集まった屈強な男たちがざわめき始める。
「まさかあのヌシを倒したのか….!?」
「こんなやつ、ここら辺の冒険者では見かけたことがないぞ。さすらいの冒険者か?」
「でも、この男冒険者カードの表示がまだ見習いランクの緑だぞ….!?」
「そんなばかな!!あのヌシは金ランクの冒険者が3人集まってやっと倒せるレベルのやつなのに!ダイヤモンドより硬いと言われているあの体をそもそも見習いがどうやって砕くんだ!?」
「あの〜」
俺がこそこそ話すやつらに割ってはいる。
「魔法で砕いちゃいました。」
その一言が、男衆をさらにざわつかせる。
もはや収拾がつかないほどの騒がしさだ。
パンッ!
代表らしきやつが大きな音を出して手を一回叩く。
すると、潮が引くようにざわめきが消えていった。
「無礼をお許しください。何しろ私でさえ信じきることができていない状況でして….。あ、申し遅れました。私はこの鉱山の採掘長を務めているゴーリと申します。数ヶ月前にあのヌシがあそこに現れたせいで満足に採掘もできなかった状況で….。我々はただ指をくわえてみてるしかありませんでした。今回は、助けていただき本当にありがとうございます。」
そういうと、ゴーリ採掘長は頭を下げる。
「いえいえ、そんなことは….。私たちもギルドの認定依頼を行なっていた時に突然現れて….。倒せて幸いでした。」
「….疑うわけではないが、一応証拠を見せてもらえないだろうか。」
ゴーリ採掘長の後ろの屈強な男衆の1人がそう声を上げる。
「これでいいですか?」
俺はそう言うと、火石巨人を砕いたマグナ岩を見せる。
「これはかなり純度が高いマグナ岩….!あいつの中からしかとれないだろうものですね。….重ね重ねご無礼を詫びさせてください。皆苦しんでたもので、そう簡単に信じられないんですよ。」
ひたすら低姿勢のゴーリ採掘長。
「金ランク以上の冒険者はいないのか?」
ずっと気になっていた疑問を俺は呈する。
「いないことはないんですが、なにしろヌシの出現が突然で….。要請はしましたが、なにぶん金ランク以上の冒険者はこの国の王都を中心に活動しているのでまだこちらに辿り着いていなかったんです。」
「なるほど、そうですか。」
俺は納得する。それじゃあ、と一礼をしてそこを去っていこうとすると、ゴーリ採掘長に呼び止められる。
「お待ちを。これを持っていってください。」
そう言ったゴーリ採掘長の手には、とある鉱石が握られていた。
「これは、『炎龍石』といいます。マグナ岩が長い年月をかけてさらにエネルギーをもつようになったものです。この鉱山でも、数十年に一回程度しかこの炎龍石はとれません。まだ武器をおもちになっていないようですし、これで武器をおつくりになったらいかがでしょうか。」
その石は、マグナ岩よりもさらに深い神秘的な紅色をしていた。
ありがたくそれを受け取る。
「それではまたいつか。我々を助けていただき本当にありがとうございました!」
そう言って深くお辞儀をするゴーリ採掘長以下一同に見送られて、俺はアグリ山を発っていった。




