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第31話・渾身と危機

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします!



キンッ!!


火花を散らしながら互いの刃が触れ合う。


「いいね、その意気だよ!」


剣を抜いて俺に対応しつつ、タクミはその眼前で俺を挑発する。


「っく!」


『宵斬り(ラズヴェート)』を振り払われて、一旦俺は退く。


それを許さずタクミが追撃を仕掛けてくる。


「この『狩猟者(ベナティオ)』は、ミラドリア王国に代々伝わる国宝でね。いつまでもこの国の礎を築いた者たちを忘れないようにこの名前がついたらしいよっと!」


無駄口を叩きながらも、タクミの追撃は止まらない。


上下左右、あらゆる方向から斬撃が襲ってくる。



……まずい。


タクミの方が、剣の腕前は確実に上だ。


このまま持久戦に持ち込まれると、カエデの命はおろか、俺までやられてしまう。



「ほらほら、もう1分経っちゃったよ。急がないと。」


煽るタクミの剣技に懸命に俺はついていく。



どうやってタクミを倒すか……?

正攻法ではだめだ……。





「キョウ君、危ないわん!」



「!!?」


カミュの叫び声ですぐに全神経を呼び戻すが、それは少し遅かった。


俺の脇腹を『狩猟者(ベナティオ)』の焦茶色に光る刃がかする。


「どう?そろそろ疲れてきたんじゃない?少し動きが鈍ってるよ。アルザーヴの時から闘いっぱなしだしね。……だけどこんなんじゃまだまだだよ。もっと……もっと僕を楽しませてくれ!!」


声とともに襲ってきた横薙ぎをかろうじてかがんで避け、すぐに距離をとる。



ジンジンとかすったところが痛む。


それに、アルザーヴのときにくらったあの花の嵐の傷もまた開いてきた。


一時的に治したように見せかけてはいるが、ただの応急処置しか実際のところ施してはいない。



「得意の魔法でも使ったらどうだい?さっきから使ってないみたいだけど。まさかもう魔力切れなわけないよね?」


タクミがせせら笑う。


「……!そんなに使って欲しけりゃ使ってやるよ!!『煙擬(フォッグ)』!!」


俺の言葉とともに、闘技場のフィールドに白煙が充満し始め、そしてすぐに真っ白に空気が染まった。


「なるほど、まずは目くらましってことかな?」


充満した煙の中で、タクミが暢気に呟く。


「言ってろ、お前はもう少しでそこに倒れることになるんだからな!」


俺はそう言いながらタクミの背後に回り込む。



よし……!!


俺は音を立てないように気をつけながら、小さくガッツポーズをする。


タクミは俺のことが無論見えていないが、俺は『探索(サーチ)』でタクミの位置を把握している。


これで背後に回り込んで、あの火石巨人(マグナゴライアント)を倒した『破裂(バースト)』をタクミにぶっぱなせれば、流石のタクミも膝をつくはず……!



「うーん、どこにいるかな……、って教えてくれるわけないか。こう煙が多いと、距離感も掴めないね……。」


タクミがいまだ軽い口調で言っているうちに、俺は無事タクミの背後に回り終える。


タクミはまだ俺が後ろをとったことに気づいていないようだ。



カエデのためにも、これで終わらせる……!!!



「『破裂(バースト)』!!!」



タクミの背中に手を置くと同時に、俺は渾身の一撃を放った。



破裂音が闘技場に轟く。



よっしゃ、決まった!!



「な、何が起きたんですかっ!?ばば、爆弾はまだですよねっ!?」



カエデの混乱の声とともに、俺たちの周囲を覆っていた煙が吹き飛ぶ。



俺は立っているタクミの脇をすり抜け、すぐさまカエデの元へ駆け寄る。



急いで爆弾を止めないと、もう後時間は半分ほどしかないはずだ。



「キョウさん!!」


恐怖と驚愕と困惑からか、カエデの目に涙が浮かんでいる。


「もう大丈夫だ!!」


俺はそう言いながら急いで爆弾の装置の仕組みを探る。



うーん、なんだこの爆弾は……?


手枷はまだ何とかなるが、首から伸びた鎖には、よく見ると色々な導線が繋がれており、迂闊に手を出すことは出来そうにもない。


……そもそも、俺は爆弾なんて見るのは初めてだ。



考えろ、考えろ……。



俺が読んでたラノベでは……、





……だめだ、爆弾なんて一回も出てこなかった。

くっそ、こんな時にそういう話さえ読んでおけば、対処の仕方もわかったかもしれないのに……。


推理小説なら爆弾は何回か出てきたけど、何しろ爆弾処理班が大体片付けてたしなぁ……。



……落ち着け、こうしているうちにも爆弾が爆発する時間が迫ってきているんだ、慌てちゃだめだ……。




……そうだ、タクミを拘束した上で意識を取り戻させよう!

そうすれば、タクミに解除方法を吐かせることができる……!



……いや、だめだ。


タクミは死んでもいいようなことを言っていた。

なら起こしても絶対に吐くまい。


そもそも、『破裂(バースト)』をくらったんだ。

立っていたけど、当分動くことはないだろう。










……立っていた(・・・・・)?








「キョウさん、危ない!!!!!!!」



プスリ。



カエデの叫び声が耳に届くと同時に、俺は脇腹に何かが刺さる感覚を覚える。


下に顔を向けると、自分の脇腹から焦茶に光る何かが出ていることに気づく。



剣先……?



そう認識した瞬間、猛烈な痛みが俺を襲う。



「ぐぅう!!!!!?」



灼けつくような痛みを堪えながら俺は後ろを振り向く。




そこには、変わらず穏やかに佇む青年の姿があった。



「いやぁ、結構効いたよ。」



タクミは、そう言ってニッコリと微笑んだ。




--------------------




「さぁ、後2分くらいだね。ぶっ飛ばすって言ってた割に、案外呆気なかったなぁ……。僕の方が全然強いじゃん。」



タクミの声が闘技場に響く。


体には、擦り傷が何本かあるだけで他に目立った傷は見当たらない。


両手両足を壁に磔にされた俺は動くことができない。


「急がないと、充分に楽しめなくなっちゃう。」


そう呟くと、タクミはペロリと唇を舌で舐める。


そして、俺の目の前に立って剣を構える。



「それ以上は……やめて下さい!!!」


「そう慌てなくても、あと2分でみんな死ぬんだ。……って、喋ってる暇はないね。僕の最期にして最大のお楽しみなんだから、もう少し黙っててね。」


カエデの必死の叫びもタクミの耳には届かない。


「痛むよね?痛いよね?ほら、もっと苦しんだ顔を見せてもらえるかな?」


そう言ってタクミが俺の脇腹を剣の腹でパンパンと叩く。


その度に、俺を激痛が襲う。



「この……サディストが……。……はぁ、はぁ……。お前、は……ここに残る必要は……、ない……だろ……?」


「何度も言わせないで欲しいね。こんな楽しいことさえできるなら、僕はもうこんな異世界未練はないよ。ま、またどこかの世界にどうせ転生するしね。」


微笑みながらタクミが言って、視線を上に向ける。


「上の2人も、巻き込んじゃったみたいだけどごめんね。まぁ、僕がいなくなるから、東街もそれなりに良くなるんじゃない?」


「おぬし……、部下を道連れにする気か……!?」


ピリオン東街長が怒鳴る。


フィールドの端には、いまだ意識を失ったままのアルザーヴが転がっていた。


「んー、まあしょうがないでしょ。」


「しょうがない、じゃと……!?」


その気の無い物言いに呆気にとられるピリオン東街長からタクミは俺の方に顔を戻す。


「うーん、剣じゃあすぐに死んじゃうからなぁ……、やっぱり素手でいこうかな。」


タクミがずっと付き合ってきたはずの『狩猟者(ベナティオ)』をいとも簡単に放り投げる。


「まずは一発っ!!」


タクミの右ストレートは、的確に俺の脇腹をえぐる。


俺は激痛に耐え、必死に唇を噛む。


「そんな無駄な抵抗しないでさ、もっと苦しむ声を聞かせてよ。」


2発、3発と打ち込まれて意識が飛びそうになるが、俺は意地でも声を出さないよう唇を噛み続ける。


拘束をされてしまった今、俺にできることはタクミを楽しませないようにすることだけだった。



せめてお前の好きにはさせない。


その気持ちを込めて。



「うーん、面白くないなぁ……。君が声を出さないなら、しょうがないけどこっちにするか。」


と、タクミがくるりと振り向き、カエデの方に近づく。


「え、え、」


「おい、やめろ……!!」


「まあそこでゆっくり見てて。……そうか、こういう精神的にダメージを与えるのもいいかも。」


『狩猟者(ベナティオ)』を拾って一歩、また一歩とカエデの方にタクミは近づく。


カエデは顔を真っ青にしてもはや意味をなす言葉が口から出てきていない。


「おい……、俺にしろ!!カエデにはやめるんだ!!!」


俺の言葉を無視して、タクミはカエデの前で剣を構える。



「それじゃ、いくよ。」



「カエデ!!!!!!!」




剣が、カエデに振り下ろされた______________













「『雷白光(トニアルバス)』!!!」



と、その時闘技場に閃光が走る。



タクミはその眩しさに思わず目を瞑る。


そのまま振り下ろされた剣は、カエデの数cm横を通り抜けた。


俺もその光に思わず目を瞑るが、聞き覚えのある声に目を必死に開ける。



そこには、見慣れたシルエットがあった。




「2人とも、一人で責任を背負いこみ過ぎなの!!!!!!!」




光の中で、モミはそう叫んだ。

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