第20話・盗賊退治とお姫様
遅くなりました!
いっけね、やっちゃった(棒)
今の突進で盗賊の半分を戦闘不能にすることができた。
俺は馬車から降りる。
とある理由からカエデとモミには中に残るように言ってある。
「なんだぁ、てめぇは!!!?」
悪運はあるらしく、吹っ飛ばされても立ち上がった盗賊のリーダーの男が叫ぶ。
「まぁ、通りすがりの旅人ですよ?」
「ふざけてんじゃねえよ!おい、こっちは後回しだ!お前ら、やっちまえ!!」
俺の返答が気に食わなかったらしく、リーダーの指示で4人が俺のもとに斬りかかってくる。
さて……。人をあんまり殺したくはないんだけどなぁ……。どうしようか。
だからといって、魔法で無力化しようにも、まだそういう魔法を見たことがないから、イメージがわかないんだよね……。
「死ねぇっ!」
「おっと!!」
正面からきた1人の斬撃をバックステップで躱す。
と、両サイドから2人、そして躱した男の背後からもう1人、3方向から斬撃がやってくる。
お、いいこと思いついた。
『大水環!!』
俺の周りに、躱した男もまとめて全員射程範囲内の大きな水環を落とす。
わからないなら、知ってるやつを使うだけだ。
「これは『水環』か……?それにしては大きすぎやしねぇか!?」
リーダーの男が叫ぶのを尻目に、水の中でモガモガしていた4人が気絶したのを確認するとその水の環を消す。
よし、殺さずに無力化することができたぞ。
「一瞬で4人とは……。なんとお強い方なのか……」
傍で執事がそうボソボソ言っている。
「後はお前だけだよ。」
俺はそう言ってリーダーの男を指差す。
「そんな言葉で屈するとでも思ったか!?そもそも、俺たちだってここで成功させなきゃやべぇんだよ!!その犠牲になってくれや!」
そう言って振り下ろされた大剣を間一髪俺は躱す。
「おいおい、その腰にぶら下げているのは飾りなのかぁ?さっきみたいにまぐれで魔法がうまくいっても、俺を倒すことはできないぜぇ!?」
そう言って嘲笑するリーダーの男。
「それはどうかなっと!『透水枷』!」
俺はまた魔法を唱える。
「また魔法か……うがっ!?」
リーダーの男が前につんのめって倒れる。
今使ったのは、『水環』の応用で、足に水の枷をつける魔法だ。
これで相手を殺さずにいれるし、しかも、
「さて……どうして襲ってたのか、洗いざらい話してもらいましょうかね?」
俺はそうにこやかにリーダーの男に話しかけた。
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「本当にありがとうございます!このご恩をどう返したらいいのか……。」
初老の執事がそう涙ぐみながら話す。
あれから数分後。
どれだけ尋問しても結局口を割らないリーダーの男を仕方なく縄で拘束し、近くの木に括り付けておいた。
王都からあとで警察みたいな人たちでもよんでおこう。
「それで、どうしてこんな危ない道のりを護衛をつけずお2人で…?」
俺はそう執事に尋ねる。
「本当は言いたくないんですが……。助けて頂いた方に義理は果たしたいと思います。とりあえずまずは自己紹介をさせてください。私は執事のグラムウェル。そして、」
その執事の言葉を受けて、馬車の中から1人の少女が降りる。
金色の長い髪に理知的な瞳。
服は上質な生地を使ったと思われる薄い水色のドレス。
見るからにお嬢様然としたその少女は、しかし芯の通った声音で自ら名乗る。
「マリア・サフィールと申します。このミラドリア王国第3王女をしております。この度は危険なところを助けていただき、誠にありがとうございました。」
そう言って、その少女、マリアは品良くお辞儀をした。
お、王女様でしたか……。
せいぜい貴族くらいだろうとの予想を遥かに超えてきたその発言に一瞬たじろぐが、俺は体勢を整えて質問をする。
「お、王女様がどうしてまた護衛もつけず?……あ、私の名前はき、キョウといいます。し、しがない旅の者です。」
って、全然体勢整ってなかった。
「キョウ様……。名前から察するに、おそらくニャホン出身の方でしょうか……。あぁ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。王女といっても、第3ですから。」
すっとマリア王女の目に暗い影がさす。
「質問の答えは……、我が国では私のような者は異端ということでしょうか……。そういう意味であまり大事にされておりませんし、今回はそもそも秘密の訪問でした。護衛の者にも知って欲しくなかったため、唯一信用できるグラムウェルを連れていっていたのです。」
「……秘密の訪問とはどちらへ?」
「内容は言えませんが、とある用で北の隣国、レングマーレ山岳国を極秘で訪問していました。」
「まぁまぁ、とにかく、その辺はいいじゃないですか。」
パンパンとそこで執事のグラムウェルが話を切る。
どうやらそこから先は話したくないらしい。
彼女が異端な存在であるということにも何か関係があるのか?
「ねーウキョウまだぁ?そもそも、なんで隠れなきゃいけないのー?」
「モミ!だめだって!!」
と、そこで俺の馬車からモミと、それを止めようとするカエデが転がり出てくる。
まずい。
非常にまずい。
なにがまずいかって、ここに俺以外の人間がいることだ。
獣人は被差別種族。
その話を聞いていた俺は、だから2人に隠れていてもらったのだ。
カエデはそれを知っているから、素直に俺の言うことに従ってくれたが、行動派へとチェンジしたモミには、それを知らないので待機をつまらなく感じていたようだ。
それが今、しかも国の偉い人、さらにしかも王族に見られるのは非常にまずい。
最悪、この場で即刻捕らえられることもありうる。
「あ、あのー、えっとー、」
俺はマリア王女にどうやって説明しようか悩みながら振り向くと、そこには目を目一杯見開いた王女の姿があった。
「まさか……。この国のトゥンク外で獣人の方に会えるとは……。なんて運命的なんでしょう!」
感動したようにマリア王女が叫ぶ。
あれー?なんか雲行きが変だぞ?
マリア王女は俺の手をガバッと握る。
「え?え?」
しどろもどろになる俺を尻目に、彼女は真剣な目で俺を見つめてくる。
「助けて頂いた上で恐縮なんですが……。キョウ様、私に協力してください!!」
その目には、揺るぎない決意がみなぎっていた。
「へ?」
俺は、間抜けな声を返すのがやっとであった。




