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マイペース令嬢、厄介な婚約者や突然の婚約破棄を気にせず好きを貫き歩み続けた結果成功を収める。  作者: 四季


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2/2

後編

 メリッサは冷たく対応するがエリオンはそのことに気づいていない。


「……それで、用事は何ですか」


 不快感を隠さないメリッサが一応確認すれば。


「俺とやり直さないカァ?」


 彼は平然とそんな提案を口にする。


「今の君となら上手くやっていける気がするんダァ。状況は変わったからサァ。鉱物の研究をしている女なんて本来無理でしかないんだけドゥ、それが金になったっていうなら話は別ダァ」

「お断りします」

「は、ははは、はああァァァ!?」

「貴方とはもう終わったはずです。今さらそのようなことを言われましても、こちらとしては困るだけです」


 はっきり言われたエリオンはカッとなり殴りかかろうと拳を振り上げる――が、その手を一人の青年が止めた。


 その青年というのは、メリッサの研究室でお手伝いをしている人物である。


「なんてことするんですか!」

「何だヨゥお前ハァ!」

「先生を殴ろうとする者を許すことはできません!」

「はああァァァ? うっぜぇナァ! 邪魔すんなヤァ!」


 荒々しい言葉を投げつけ続けるエリオンだったが、腕力があまり強くなかったため、あっという間に制圧されてしまった。

 青年によって床に押し付けられたエリオンはそれでもまだ反省していない様子で、じたばたしながら「俺は悪くなぁぁァイ!」「暴力反対ダァ!」などと叫んでいたが、通報を受けてやがて駆けつけた治安維持組織の人たちに引き渡された。


「ご無事ですか、先生」

「はい」

「良かった……。しかし、あれは一体何だったのです? 先生のお知り合いですか」


 直前まで不安に揺れていた青年の瞳にほんの少し安堵の色が滲み始める。


「元婚約者の男です」

「ええっ! ……ぁ、いや、すみません……派手に驚きすぎて」

「彼は私が鉱物の研究をすることを嫌がっていました。そして、それを理由に婚約破棄してきたのです」

「そうだったのですね……」

「しかし、私が裕福になったので、急にすり寄ろうとしてきたようでした」

「うわ……」


 その後メリッサは「騒ぎを起こしてしまってすみませんでした、皆さんに迷惑かけてしまいました」と謝罪したが、研究室内で働いている人たちは「先生は悪くありません!」と口を揃えて返していた。

 間接的に騒ぎの原因となってしまったメリッサ。しかし彼女を責める者はいなかった。絡んできたのはエリオンなのだから悪いのもエリオンだ、と、誰もがそう理解していた。メリッサは被害者なのだ、と、そこにいる誰もがそう思っていた。



 ◆



 あの後、拘束されている間もずっと反抗的な態度を取っていたエリオンは、反省しそうにないということで牢屋送りとなった。


「お前、元婚約者を殴ろうとしたんだってな?」

「女にしか勝てないからそういうことするんだろ。うわダッサ。男としてダサすぎるだろそれは」


 牢屋内で暮らすようになったエリオンは、そこでも周囲に対して悪い態度を取り続けていて、それによって周りから嫌われてしまう――そして、同じく収容されている屈強な男たちから虐められるようになっていった。


 取り囲まれ、殴られたり、引きずり回されたり……とにかく酷い目に遭わされ続けた彼は、やがて、そういった際に負った傷が原因となり命を落とすこととなる。


 エリオンの最期は孤独なものであった。



 ◆



 鉱物研究の第一人者メリッサは八十歳でこの世を去った。


 結局彼女は結婚することはなかった。


 ただひたすらに鉱物だけを愛する。

 そんな生き方を最期まで貫いたのだ。


 だが周囲の人たちから愛されていなかったかというとそうではない。


 研究の手伝いをしている者、取材などで交流があった者、時折行っていた喫茶店で働く者――関わりのある人たち、その大半から、メリッサは愛されていた。


 美しい容姿を持ちながらもそれだけを武器とはしない。研究者として凄まじい成功を収めていても偉そうぶることはない。そんな彼女は、誰からも愛され、また、多くの若者たちから尊敬の眼差しを向けられていた。

 加えて、女性でも研究者になれる可能性がある、といったメッセージを、彼女はその背中で語っていた。言葉には一切しなかったけれど。だがそれはとても偉大なことだった。そういったメッセージは、いずれそういう道に進みたいと考えている若い女性たちに勇気を与えていた。



◆終わり◆

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