68話 スパイダーガーデン
後書き修正
ぼく達は、マクルリアの遺跡に続くダンジョンのボス部屋に入った。
「う、嘘!? あれって……イヤァァ!」
「冗談キツいぜ、ダンジョンボスってのはスパイダーガーデンだったのかよ!」
とっても広い部屋の真ん中辺りに白い巨大な繭みたいなものがある。ヒストリアで確認したら、ピポルが言うようにあれはスパイダーガーデンだけど、ダンジョンボスじゃない。
「ピポル違うよ。あれはダンジョンボスを守ってるだけで、あの奥にいるヒュージトライスパイダーがダンジョンボスだよ」
「ヒュージトライスパイダーですって!? もう駄目よ、スパイダーガーデンだけでも絶望的だっていうのに!」
エリンが冷静さを失ってる。
そりゃ、ちょっと面倒臭い状況かもしれないけど、絶望的ってのは言い過ぎだと思うな。
「に、逃げるか?でも脱出するには進むしか……」
マーティも凄く怯えてる。
「……あたいのパーフェクトコピーが成功するまで耐えるのは無理?」
「厳しいだろうな」
えー、どうしてこんな深刻になってるんだろう。スパイダーガーデンなんて時間をかければ何の問題も無いし、ヒュージトライスパイダーだってBランクの魔物だよ?
そこら辺にいる普通のちょっと強いくらいの魔物だと思うんだけど……
「全然問題ないよ。ちょっと面倒臭いけどスパイダーガーデンって雑魚ばっかりだもん」
「あれの大きさを見ろ! 雑魚だとしても数が半端じゃない!」
ダンテがスパイダーガーデンを指差して叫んだ。
「うん、雑魚。でも皆がやりたくないなら、ぼくとディオスだけで戦うよ。ちょっと時間がかかっちゃうけどね」
「……あたいも行く」
ぼくがディオスを連れて行こうとしたら、アネットも着いてきた。
「俺も手伝う。勝ち目があるんだろ、ヴァン?」
ピポルは少し冷や汗を流しながら、キリッとした顔でそう言いうと、ぼくの肩に乗ってきた。
「余裕だよ」
そんなピポルを掴んでアネットの方に放り投げながら、ぼくは答えた。
「投げる事ないだろ……」
アネットに受け止められたピポルが文句を言ってるけど、勝手にぼくに触らないでよね。エリンとマーティはガタガタ震えてるけど大丈夫かな……あ、そうか。2人とも蜘蛛が大嫌いなんだっけ。
確か、このダンジョンの最初の部屋でヒストリアを使ったときに見たような気がする。
「ダンテはエリンとマーティを守ってて。ぼくがスパイダーガーデンの中に入って蜘蛛を倒すから、ディオスとピポルとアネットは出てきたのをお願い。あとアネット、コピーするならディオスをコピーしてね。まだディオスの方がぼくより強いから」
「……分かった」
ぼくは簡単に指示をだすと、シャドーバットで蝙蝠をたくさん出して、ぼく自身も霧になってスパイダーガーデンに攻撃を始めた。
シャドーバットが当たって繭が破けた所から、色んな種類の蜘蛛型の魔物がどばどばっと出てきた。
「ひぃぃぃ!」
「いやぁぁぁ! むりぃぃぃぃ!!」
エリンとマーティが泣き叫んでる。分かるよ、すっごく気持ち悪い光景だよね。これが全部ゾンビだったら可愛くて良かったのにね。
中にいた蜘蛛は、思ったより強い種類だったけど、ぼくとディオスの敵じゃないや。
「……ディオス凄い」
アネットがレッドタランテラホークの力を使って戦ってる。けど、パーフェクトコピーを使うためにディオスとは距離をとって、片っ端から蜘蛛を倒していくディオスの観察もしてる。
ピポルは……あ、ちょうどキューティースレイショーを使ってくれたとこみたい。へぇ、あれがピポルの可愛いと思ってるものかぁ。何だか全部生意気そうな顔をしてるけど、どこが可愛いんだろう。
「あっ、ピポル! 俺には散々文句を言ってたくせに自分もじゃねーかよ!」
んー? ダンテが何か喚いてるけど、まぁダンジョンに入ってからずっとそうだったし気にしなくていっか。
よーし、ぼくも頑張るぞー!
「あの霧ってヴァン君よね!? スパイダーガーデンの中に入っていったわ……あ、あぁ……」
「おい、大丈夫か!?」
「蜘蛛怖い、蜘蛛怖い、蜘蛛怖い、蜘蛛怖い、蜘蛛怖い」
「ったく、エリンもマーティも情けねぇな」
なんか後がごちゃごちゃ煩かったけど無視だよ。スパイダーガーデンの中には蜘蛛がびっしりいて、蠢きながら糸や毒を飛ばしてくる。魔法も使ってくるけど、簡単に避けられるや。
「中は意外と明るいし、共食いしてるのも結構いるんだなぁ」
霧に触れる蜘蛛の血を全部奪いながら、スパイダーガーデンの真ん中辺りまで来た。なかなかの量の血が溜まったから、全部溶解液にして四方八方に撒き散らすと、蜘蛛達はぼくを警戒して少し距離を取り始める。
「まだまだ、一杯いるなぁ……そうだ、あれやってみようっと」
ぼくは母様のお稽古を思い出して、霧の一部を眠らないドラゴンに不完全変身させてみた。母様は眠らないドラゴンよりあれの方が強いって言うんだけど、あれはカッコ良くないから嫌い。
「うぅぅ、ちょっと大変だけどいい感じにできたかな」
背中と顔を眠らないドラゴンにしたから、それに合わせて他の部分は霧で形を作った。きっと今のぼくはすっごくカッコ良いと思う。
「グガァァァァァァァ!!!」
即死効果がある、眠らないドラゴンの咆哮っていうスキルを使うと、上から凄い数の蜘蛛が落ちてきた。
そういうのは全部霧の部分で血を奪っていくよ。今のでかなり数を減らせたかな。でも咆哮ばっかりじゃつまんないから、ぼくが使えない影魔法なんかも使ってみた。
「キシァーーーー!!」
ほとんどの蜘蛛を倒した頃に、漸くヒュージトライスパイダーが動き出した。スパイダーガーデンの壁を破って中に入ろうとしてるみたい。
「隙だらけだよー」
ぼくは眠らないドラゴンの影魔法、オンブラマイフを使ってあげた。空中の色んな場所に、たくさん木の形をした影が現れると、ヒュージトライスパイダー目掛けて伸びていく。影が当たった瞬間、ヒュージトライスパイダーは動かなくなった。
「やった、1発で倒しちゃった、わーい!」
ヴァロとミシアには全然通用しなかったけど、やっぱり眠らないドラゴンは強いなぁ!
「……あえ?」
ぼくは1発で倒せたのが嬉しくて、大きく口を空けて眠らないドラゴンの勝利のポーズを真似したんだ。そしたら口から信じられない高威力の何かが吹き出ていって、爆音が轟いた。
も、もしかして今のってドラゴンブレスなんじゃ……不完全変身じゃ固有スキルは再現できないはずなのに。さらにビックリだったのが、霧の色がさっき口から出ていったのと同じになったってこと。
「なんだったんだろ……」
ヒストリアで確認しようと思ったけど、先にもう1回できるか試してみてもいいよね。ちょっぴりだけワクワクしながら、今度は上を向いて真似をしてみると、ダンジョンの天井が崩れ落ちてきた。
「できた!」
嬉しすぎる。早くディオスに教えてあげなきゃ。え~っと、戻るの面倒だからスパイダーガーデンの壁を突き破っちゃえ。蜘蛛がいないからかな、けっこう脆いんだね。
「うわぁぁぁぁぁ!!?」
「……何あれ」
「お、おいディオス! そっちに行くな! あれはヤバい!」
ピポルたちは何かに怯えてるけど、どうしたのかな。まあいいか。
「ディオスー! ぼくね、ドラゴンブレスが使えたんだよ! 凄いよね、ぼく凄いよねー!!」
くふふふ、ディオスも喜んでくれてる。ヒストリアで確認したら不完全変身が成長してた。
「母様からはこれ以上成長しない固有スキルだって言われてたのに、なんでかなー」
そしたらディオスがぼくのネックレスを触り始めた。
「え、なぁにディオス? このネックレスがどうか……あ! そういうことか! くふふ、兄様にお礼しなきゃね。たくさん尻尾を触らせてあげようっと」
「お、お前……ヴァンなのか?」
ぼくがディオスと喜び合ってると、いつの間にか近くに来てたピポルが恐る恐る声をかけてきた。
「そうだよ?」
「よ、よかった……もう駄目かと思ったぜ」
ピポルは心底ホッとした顔すると、「安心させに行くって」アネットの方へ飛んで行っちゃった。
ぼくも、あっちに行こうっと。蜘蛛の数が凄かったからドロップ品もたくさんある。拾うの手伝わなきゃ。
「何やってる、逃げろピポル! 後ろから狙われてるぞ! なんで背を向けてるんだ!?」
ダンテがライトアンシェヌマンを使って光魔法を8つ同時に放ってきた。余裕で避けられたけど危ないな。
「何するんだよ! ダンテのバカ! 大っ嫌い!」
ぼくは光魔法が当たるとすっごく痛いんだからね。
「え? は? ヴァン?」
「ヴァン、今の姿を見てお前がヴァンだって分かるわけないだろう。さっさと元に戻ってくれ」
ピポルはぼくの所まで引き返してくると、呆れた顔で額にデコピンしてきた。
そして指を押さえると、めちゃくちゃ痛そうな顔をして、ダンテたちのところへ飛んで行った。
~入手情報~
【名前】コルキス・ウィルベオ・クランバイア
【種族】ヴァンパイアハーフ
【職業】王子/冒険者
【年齢】8歳
【レベル】37
【体 力】257
【攻撃力】524
【防御力】513
【素早さ】660
【精神力】192
【魔 力】3981
【通常スキル】
消費魔力減少/影魔法威力増/体術/我儘/甘える
【固有スキル】
吸血/霧化↑/飛行/癇癪/長寿/魅了/不完全変身/聖光被ダメージ増/影属性吸収/兄好き/ヒストリア/オーラ
【先天属性】
影
【適正魔法】
影魔法-特級
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【名 称】
スパイダーガーデン
【先天属性】
必発:-
偶発:-
【適正魔法】
必発:-
偶発:-
【魔核錬成】-
【初期スキル】-
【固有スキル】-
【通常ドロップ】-
【レアドロップ】-
【コルキスのヒストリア手帳】
複数種の蜘蛛型魔物の糸で作られた蜘蛛の巣。ようは魔物が引き起こす現象だね。主に狂暴な蜘蛛型魔物が住んでて、それを好む別の魔物も少しだけいるよ。自然界では深い森の中にあるんだけど、人里付近でも発生することがあるね。大きさにもよるけど、基本的に危険な物という認識だから、冒険者ギルドで駆除・討伐依頼が出たらB~Aランクの依頼になるかな。
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【種族名称】
ヒュージトライスパイダー
【先天属性】
必発:水
偶発:火/氷/土
【適正魔法】
必発:水
偶発:火/氷/土/雷/風
【魔核錬成】
詳細不明
【初期スキル】
蜘蛛使役/高速移動/トライショック/スリーアップ
【固有スキル】
消化液/麻痺糸/粘着糸/アシュラモード
【通常ドロップ】
麻痺糸/消化液/蜘蛛肉/目玉/牙/爪
【レアドロップ】
魔核/卵鞘/糸袋/アシュランプ/ミートスープ/マクルリアマップ
【コルキスのヒストリア手帳】
非常に大きな蜘蛛型の魔物。
頭部と胸頭部が3つずつある大変獰猛な蜘蛛だよ。トライスパイダーっているEランクの魔物が進化し続けた姿でBランク魔物なんだ。三種類の毒をもってるんだけど、糸にも毒が含まれてて触るだけで麻痺しちゃうよ。獲物の体内を消化液で溶かして、その溶けたものを吸う習性があるみたい。皆怖がってたけど弱かったよ。
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【種族名】レッドタランテラホーク
【形 状】大赤蜂型
【危険度】B
【進化率】-
【変異率】☆
【先天属性】
必発:火/風/雷
偶発:土/氷
【適正魔法】
必発:火/雷
偶発:風/氷/光
【魔力結晶体】
すべての個体に発生
【棲息地情報】
エデスタッツ樹海/ボア地底森/蜘蛛の多い地域
【魔物図鑑抜粋】
蜂型の魔物。
タランテラホークの最上位種であり、主に蜘蛛型の魔物を補食している魔物。蜘蛛型魔物の天敵と言っても過言ではなく、1対1ならSランクの魔物でさえ難なく倒せる。しかし、他の魔物と戦う場合はDランクのものにすら蹂躙されてしまう。
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【種族名】眠らないドラゴン
【形 状】メソロジー型
【危険度】SSS
【進化率】-
【変異率】-
【先天属性】
必発:闇
偶発:-
【適正魔法】
必発:闇
偶発:-
【魔力結晶体】
すべての個体に発生と考えられる
【棲息地情報】
アンドロミカ地方/モブル大溪谷/モーブモッブホール
【魔物図鑑抜粋】
厄災と呼ばれるSSSランクの魔物。ドラゴンの中でも最上位クラスの存在であり、大精霊に引けを取らない強さという。これまでに3体確認されているが、ここ2000年間は目撃情報が無く絶滅したのではないかと言われているが、それは誤った情報と当図鑑では断言する。詳細は伏せるが、とある国の王妃と親友関係の個体が現在もどこかで身を潜めているらしい。
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【名 称】オンブラマイフ
【分 類】種族固有魔法/上級闇魔法
【効 果】☆☆☆☆☆☆☆☆
【詠 唱】アフィロニタエウラ型魔法言語/乱文不可
【コルキスのヒストリア手帳】
眠らないドラゴンの闇魔法。
木の影を作って、その影でオーバーキル気味のダメージを与えたりる魔法だよ。ステータス値や寿命を大幅に吸収したり、削り落とすこともできるよ。ぼくが使うとどの効果になるのかはランダムだし、効果自体も半減しちゃうんだ。ちなみに、ダメージや状態異常を回復や治癒、能力上昇に錯覚させる効果もあってそれは確実に反映されるよ。この魔法で死ぬと、「かつて、これほどまでに、愛しく、優しく、心地の良い木々の陰はなかった」って思いながら死んでいくんだって。穏やかな死を与える良い魔法だって死の女神様に褒められたことあるって自慢してたよ。
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【名 称】ドラゴンブレス
【発 現】ドラゴン種
【属 性】ドラゴンの個体と同じ属性
【分 類】ドラゴンブレス型/固有スキル
【希 少】-
【コルキスのヒストリア手帳】
ドラゴン固有のブレスの総称。
種族によって効果や正式な名前は違うけど、どれも強力な威力を誇るんだって。ブレスを使えるドラゴンは強大な力を持ってる場合が多いからとっても危険だよ。
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【名 称】不完全変身
【属 性】影
【発 現】コルキス・ウィルベオ・クランバイア
【分 類】不完全型/固有スキル
【コルキスのヒストリア手帳】
これまで吸血したものに変身することができるよ。部分的にだけどね。体の機能とスキルも同じにできるよ。前まではぼくと同じ先天属性の魔法なら使えてたんだけど、成長したから固有スキルも使えるようになったよ。嬉しいなぁ。あとね、光と聖と聖光、影と闇は同属性として扱えるようになったよ。上位属性の魔法や固有スキルを無理して使うと威力や効果が大幅に減少しちゃうし、魔法の等級も下位属性扱いだけどすごいことだよね。
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【名 称】小さな木片のネックレス
【分 類】干渉具
【属 性】植物/運/愛/闇
【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【価 格】-
【コルキスのヒストリア手帳】
兄様の卵から出てきた、それぞれ効果の違う木片が4つ付いているネックレスだよ。兄様がぼくにプレゼントしてくれたよ。くふふふ。今度会ったらジル姉様に自慢しちゃおうっと。
~1枚目~
『断絶を願われし木片』
他者に認知されないようにできるよ。でもぼくが知っててぼくより高いレベルのものだと、ぼくもそれを認知できなっちゃうよ。
~2枚目~
『成長を願われし木片』
身に付けるとぼくの全部が成長期になるよ。でも肉体は対象外みたい。ん? よく見たら脳みそはそうじゃいないみたいだね。効果は死ぬまで続く、か……。
~3枚目~
『再会を願われし木片』
ぼくの記憶や感情を木片に記憶できるよ。好きなときにいつでも記憶を映像化して感情も追体験できるんだ。でもね、使いすぎると過去に縛られちゃうんだって。う~ん、どういうことなのかな。
~4枚目~
『冀求の木片』
誰かの願いを叶える木片に変化する木片だよ。でも願いを完璧に叶える木片になるかは分からないんだって。困ったね。




