66話 面倒臭いなぁ
後書き修正
「何だここは!?」
「私達ベレーザの祈り亭の前にいたわよね?」
「一体何が……」
「あの子がいない!」
「……」
一緒に転移されちゃったダンテとかいう蜥蜴獣人達が混乱してる。
ぼくたちはマクルリアの遺跡の入り口に続くダンジョンに居るんだけど、ここは慈悲の部屋なのかな、魔物がいないしも罠も無いみたい。
ぼくの横にはベレーザの祈り亭にあった石像と同じものが立ってて、ちょうど皆からは死角になってる。ついでにダンジョンもヒストリアで見ると、小さめのダンジョンだった。
「兄様から貰ったネックレスを使っちゃおうか?」
小さな声でぼくの下敷きなってるディオスに聞いてみたけど、やめた方がいいって。
ダンテたちをヒストリアで確認したらぼくよりレベルが高い人がいるからかな、この状況ならあんまり関係ないと思うけど。
「どうしよっか。ディオスの中に入るか不完全変身で魔物に成りきってこの部屋を出ちゃう?」
「いた」
「うわっ」
びっくりしたぁ。下を見てディオスに話しかけてたらゴブリン族の女の人が上から声をかけてきた。 全然気配を感じなかった……あ、そういえばこのアネットってゴブリン族は気配遮断系の固有スキルを持ってたっけ。
「あぁ、見つけたよヴァンパイアハーフ君! ほら、俺の鱗だよ」
ダンテがにこにこ顔で自分の鱗を剥ぎ取ってぼくに差し出してきた。手から血が出てるのにずっと笑顔だ、怖い。
「いらない」
「ええ!? だってどうしても蜥蜴獣人の鱗がいるって言ってたじゃないか!」
「ダンテ、そんな事より他に聞くことがあるだろ」
ぼくに鱗をくれたマーティがダンテを引き下がらせようとする。
「そんな事じゃない! 俺も痛いの痛いの飛んでけーってして欲しい!」
ダンテはマーティを軽く突き飛ばして、鱗が剥がれた手をぼくの前に出してくる。
「しないよ?」
「な、なんでだよ!?」
当たり前だよ。だってもう鱗は必要ないんだもん。ダンテが勝手に鱗を剥ぎ取っただけで、ぼくが怪我させたわけじゃないでしょ。何で治さなきゃいけないの。
「いい加減にしろダンテ! 今は状況確認が第一だ!」
「わ、悪かったよピポル」
ダンテたちの中で1番強そうなピクシーのピポルが一喝するとダンテはしょんぼりして黙った後、マーティに頭を叩かれてる。
「君、これは君の仕業だろ? どういうことか説明して貰もらおうか」
ピポルはちょっと怒ってるみたい。ぼくの仕業って何かイラッとする言い方だな。
「どういうことって言われても、勝手に付いて来たのはそっちでしょ。知らないよ、ぼく悪くないもん」
ぼくもちょっとイライラしちゃって言い返したら、ディオスが我慢するように促してきた。しょうがないなぁ、ぼくが王族の懐深いところを見せてあげるよ。
「はぁ、ディオスがケンカするなって言うから特別だよ。許してあげる」
「……このガキ」
「ピポル、落ち着いて。私に任せて」
なんでか怒ってるピポルを宥めたのはスノーエルフの女の人だった。
「私はエリンっていうの。ねぇ、あなたはここがどこか知ってるのよね?」
エリンはしゃがんでぼくと同じ目線で話しかけてきた。名前も知ってるんだけどね、さっきヒストリアで見たから。
「うん、知ってるよ。ここはマクルリアの遺跡に行くためのダンジョンだよ」
「ダンジョン!?」
うるさいなぁ。ダンテが大きな声を出で「ダンジョンってどういう事だ!?」ってマーティやアネットを揺さぶってる。
「ダンテ、少し黙ってて。マクルリアの遺跡に行く為のって事は、ここはマクルリアの町から近いのかしら?」
エリンは真剣な表情で質問を続けてくる。
「そうだよ。ここはベレーザの祈り亭からずぅーっと地下深く潜った所にあるんだよ。ほら、この石像が転移装置になってるんだ」
「ずぅーっとって言い方可愛いな」
「黙れ」
ダンテとマーティがどうでもいいことを喋ってる。
「この石像ってベレーザの祈り亭の入り口にあるやつだな。石像ごと転移したのか?」
そう言ってピポルがエリンの肩に乗った。
「違うよ。これはずっとここにあった物だよ。ねぇ、ぼく急いでるんだ。ここがどこか分かったからもういいでしょ。行くよディオス」
ぼくは早く母様のことを兄様に伝えた方がいいと思うんだ。だから、聞きたいことが終わったエリン達の横を通り抜けようとした。
「待って! まだ聞きたいことがあるの」
「えー? 他に何が聞きたいの? あと1個だけだよ。ぼく本当に急いでるんだから」
ダンジョンって分かったんだから、進むなり帰るなりすればいいのに。
「……脱出する方法は?」
エリンとピポルが顔を見合って何を質問するか考えてたら、アネットがボソッっと声を出した。
「ちょっと、アネット!」
エリンは勝手な事をするなって目をしてアネットを睨んだ。
「その石像の手に蜥蜴獣人の鱗と、火と氷の魔石を置いて上級マジックポーションで満たせば帰れるよ」
帰る時は氷の魔石も必要なんだ。
酷い仕掛けだよね、だってこのダンジョンやマクルリアの遺跡には氷の魔石は無いんだもん。地上にある石像をヒストリアで見たとき、ヴォルキリオがニヤニヤしながら仲間の火精霊にそう言ってるのが見えたんだ。
「そんな……私たち魔石も上級マジックポーションも持ってないわ。蜥蜴獣人の鱗なら腐る程あるけど」
エリンがチラっとダンテとマーティを見た。
蜥蜴獣人の2人は気にさわったみたいで「腐る程ってなんだよ!」って文句を言ってる。ぼくには関係無いけどね。
「じゃあ、もう終わり。バイバイ!」
「待て!」
もー、今度こそ兄様の所に向かおうと思ったのにピポルがぼくの前に立ち塞がった。うーん、違うかな。ぼくの顔の前を蝿みたいにブンブン飛び回ってる。
「何なのもー!」
「俺たちはダンジョンに挑む準備をしていないんだ。帰りに必要な物を売ってくれ。それか一旦、一緒に連れて帰ってもらえないか?」
ピポルはさっきとは違って冷静な声でぼくにお願いしてきた。お店屋さんだってちょっとだけ楽しくなったけど、ぼくは今お金と母様のおやつ以外はお水とテントくらいしか持ってないんだよね。
「無理」
「そこを何とか頼む!」
「私からもお願いするわ!」
ピポルに続いてダンテ以外がぼくにお願いしてきたけど、どうしようもできないよ。
「だから無理だよ。だってぼく帰りの魔石とか持ってないもん」
「なんですって!?」
何をそんなに驚いてるんだろ……あ、そっか。ぼくは兄様たちと合流したらティザーの魔法で帰れるけど、エリンたちは違うんだ。
「帰るには遺跡まで行くしかないのね……」
「知らなーい。ぼくここに来るの初めてだもん」
エリンが絶望したような顔でぼくを見てくる。他の人たちもわけが分からないって顔をしてる。
「初めて来るダンジョンで帰る方法を知りながら準備してないだと?」
ピポルが困惑気味に聞いてきた。
「うん、だってぼくは兄……えと、待ち合わせしてるんだ。それにぼくとディオスは強いからこんな小さなダンジョンなんてへっちゃらだよ」
「小さいダンジョンなの?」
「そうだよ。遺跡はどうなってるか分からないけど、遺跡までは15階くらい降りればいいみたいだよ。ただ、ダンジョンの壁が動くから面倒臭いけど」
「変形型か……」
小さいダンジョンって聞いて一瞬皆の顔が元気になったけど、壁が動くって言うと、また暗い雰囲気になっちゃった。
「じゃあ、もういいよね。ぼく行くから」
「待て待て待て! いくらヴァンパイアハーフ君が強いからって言ってもEランクだろ? ソロでダンジョンを彷徨つくのは危ないって。俺たちが一緒に行ってやるよ」
いや、邪魔だから必要ないよ。ぼくの腕を掴んで邪魔するダンテは殴ってもいいかな。
「勝手なこと言うんじゃないないわよダンテ!」
「いや、人数は少しでも多い方がいい。子供とはいえヴァンパイアハーフが味方に入れば負担はかなり違うはずだ」
「……いいと思う」
「俺も」
ピポルの発言にアネットとマーティも賛同した。
えー、何でそうなっちゃうの?
「えっと……ぼく1人がいいんだけど」
「駄目だ! 君みたいな可愛い子供は世界の宝なんだ! 俺が必ず守ってやるからな」
「はぁ、皆がそう言うなら仕方ないわね」
うー、役に立ちそうなのはピポルとアネットだけで他は足手まといばっかりだよ。早く兄様と会いたいのに……
「臨時パーティーだな。急いでるところ悪いが頼むぞ。改めて、俺はピポルだ。お前は?」
このピクシー、顔の近くばっかり飛ぶから鬱陶しいなぁ。
「教えないよ! 適当に呼んで!」
「怒った顔も可愛いなー」
「本当、いい加減にしろよダンテ」
マーティはぼくとダンテの間に入って壁を作ってくれた。ちなみにディオスはぼくが怒り出さないようにずっと我慢だって宥めくれてた。
あーあ、結局ピポルたちのパーティー、雪原の輝きと一緒に遺跡を目指すことになっちゃったよ……本当の本当に面倒臭いなぁ。
~入手情報~
【名前】ピポル
【種族】ピクシー
【職業】冒険者/ドルイド
【年齢】34歳
【レベル】38
【体 力】199
【攻撃力】38
【防御力】100
【素早さ】424
【精神力】224
【魔 力】881
【通常スキル】
踊り/飛行/結界術/魔力成長微増/短縮詠唱/連続魔法
【固有スキル】
童顔/悪戯/パロクペヌタ/ガリトラップ/ピクシーダンス/キューティースレイショー
【先天属性】
水/雷
【適正魔法】
水魔法-中級/風魔法-中級/雷魔法-中級
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【名前】エリン
【種族】スノーエルフ
【職業】冒険者/バトルシンガー
【年齢】355歳
【レベル】40
【体 力】360
【攻撃力】94
【防御力】223
【素早さ】168
【精神力】555
【魔 力】685
【通常スキル】
作曲/歌唱/雪山の知識/ハーパー
【固有スキル】
氷属性吸収/ソングフォーユー/マジックハープ
【先天属性】
氷
【適正魔法】
氷魔法-下級/植物魔法-下級
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【名前】アネット
【種族】ゴブリン族
【職業】冒険者/ハイドミミック
【年齢】31歳
【レベル】48
【体 力】96
【攻撃力】96
【防御力】96
【素早さ】96
【精神力】96
【魔 力】96
【通常スキル】
模倣/観察/隠れる/影潜り
【固有スキル】
希薄な心/パーフェクトコピー/ノーインフォメーション/ゴブリンキッス
【先天属性】火
【適正魔法】火魔法-下級
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【名 称】氷の魔石
【分 類】魔石
【属 性】氷
【希 少】☆☆
【価 格】共通銅貨5
【コルキスのヒストリア手帳】
氷の魔力が結晶化したもの。
魔道具や装備品に用いられることが多いよ。先天属性が氷だった場合、この魔石を吸収し魔力の回復や一定時間氷魔法の威力を上昇させることができるんだ。品質によってピンからキリまであるよ。
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【ピクシー】
体長20センチ程の小人妖精。
貧しいものにはとても優しくする性質があるが、怠け者には大変厳しい種族。踊りが大好きで、力尽きて倒れるまで踊り続ける事もしばしばある。
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【ゴブリン族】
薄緑色の肌を持つ人間のような種族。
基本的に平凡な顔の者が多く、見分けがつきにくい。人間に比べて成熟した精神を持っている為、愚かな行為をする事は非常に少ない。ただし、冗談でも涎ゴブリンなどと揶揄されると激昂するので気を付けなくてはいけない。




