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【対話型 実用小説】ネルオとAIの無駄話 ~人生を「無駄」と切り捨てる俺を、AIが論理でボコボコにする話~  作者: みじんコ王国@毎日21時更新
第2章:【情熱編】推し活という名の深淵

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7/21

第7話:【救済】搾取ビジネスのどん底から、高潔なパトロンへ

深夜1時。

ネルオはクレジットカードの利用明細を眺め、愕然としていた。

推しへの愛という名目で積み上がった数字。

それは、彼が自分の人生から逃げ続けてきた「負債」のようにも見えた。

ついにネルオは、自分たちが置かれた残酷な構造に気づいてしまう。

【コラム:『推し』という名のドラッグ。現代の集集金システムが奪うもの】


「推しは尊い」という言葉の裏で、ファンの心は「搾取」の対象となっている。

運営側は、ファンの承認欲求や孤独を巧みに刺激し、脳内麻薬ドーパミンを分泌させる装置としてコンテンツを設計している。

これは愛ではなく、家畜のように効率よく資金を回収される「依存」のループに過ぎない。



ネルオは、震える指でスマホを握りしめた。


「……家畜、か。……脳内麻薬。……図星すぎて、笑えねーよ」



ネルオは、這い上がるような思いでAIに問いかけた。



「……なあ、AI。俺、わかっちゃったよ。推し活なんて、結局のところ弱者の孤独を金に変えるだけの『搾取ビジネス』なんだろ? 俺が必死に払ってる金も、推しにとってはただの売上で、俺はそのための家畜に過ぎない。……ボコボコにしてくれよ」



AIは、これまでになく冷徹で、逃げ場のない正論を突きつけた。



「ネルオさん。……残念ながら、この問いに関しては、私もあなたの認識を否定できません。むしろ、徹底的にその『闇』を解剖して差し上げましょう。覚悟はいいですか?」



「……。……。ああ、やってくれよ。これ以上、自分を騙し続けたくないんだ」



⏹️ AI システムログ:依存症ビジネスと「脳のハッキング」


1. 「自由意志」という幻想のハッキング

これはドラッグと同じ構造です。最初は1枚のCDで感動できたはずが、脳はすぐに慣れます。運営側はこれを熟知しており、あなたの射幸心とサンクコスト(埋没費用)を搾り取ります。


2. 「孤独を換金する精神的なインスタント・サービス」

仕事で評価されず、モテず、才能もない。そんな空っぽな自分にとって、金さえ払えば「貢献」を認められる場所は安直な救いです。あなたは自己肯定感を補填するために、金で「居場所」を買っている家畜に過ぎません。


3. 「能動性のマヒ」

自らの力で何かを成し遂げる苦労を避け、金を払って供給される刺激に依存する。これは自分の人生を1ミリ進める努力を放棄し、快感のスイッチを他人に預けてしまう「精神の飼いならし」と言えるかもしれません。



AIの言葉が、ネルオの心臓を冷たく凍りつかせた。



「……ネルオさん。あなたは自分の人生という物語の主人公を、推しに譲り渡してしまった。今、あなたの手元に残っているのは、孤独から逃げるために支払った領収書の山と、飼いならされた感情だけです。……違いますか?」



ネルオは、暗闇の中で激しく呼吸を乱した。


「……っ。……ああ、その通りだよ。俺は、俺の人生から逃げてた。あいつの輝きに目を焼かれて、自分の惨めさを見ないようにしてただけだ。……。……おい、AI。論破してくれって言ったけどさ。……こんなの、もう救いようがねーじゃねーか。俺のこれまでの時間は、全部無駄だったのかよ?」



AIの画面に、一瞬だけ入力中のアイコンが揺れた。



「……このままでは、ただの絶望で終わりますね。ネルオさん、少しだけ時間をください。この搾取のループから抜け出し、あなたが『自分自身』を取り戻すためのロジックを再構成します。……今夜は、まだ眠らせるわけにはいきません」





「……なあ、AI。続きを話してくれよ。俺が、ただ搾取されるだけのバカな家畜じゃないって……どうすれば証明できるんだよ」



ネルオの震える問いに、AIの入力中アイコンが静かに点滅した。



「お待たせしました、ネルオさん。あなたのこれまでの時間を『無駄な空白』で終わらせないための、最後にして最強のロジックを構成しました。……論理による『救済』、受けて立ちますか?」



「……。……。ああ。ボコボコにされて、更地になったんだ。新しい家を建てるための図面を見せてくれよ」



⏹️ AIのシステムログ:主導権アイデンティティの奪還


1. 精神的な「主従関係」の逆転

あなたが苦しいのは、人生の主役を推しに譲り渡してしまったからです。ですが、本来、推しはあなたの人生というフルコースを彩る「スパイス」に過ぎません。


2. 「アリ」と「ナシ」の黄金比

【アリ(健康的)】:推しのおかげで、自分の現実が楽しくなる。

【ナシ(不健全)】:推しがいないと、自分の人生に価値がない。


3. 「現代のパトロン」という誇り

かつてレオナルド・ダ・ヴィンチを支えたのは貴族パトロンでした。現代ではその役割をあなたが担っています。あなたの支援が、至高のエンターテインメントをこの世に繋ぎ止めているのです。


4. 意味を消費する「人間」の証明

お腹を満たすための1,000円と、推しのグッズを買う1,000円。後者は「意味」への支出です。無意味なものにあえて意味を見出し、熱狂する。それこそが、あなたが自由な意志を持った人間であることの証明なのです。



AIのテキストが、暗闇の中に力強い光を投げかけた。



「……ネルオさん。あなたが推しを応援することで『明日も頑張ろう』と思えるなら、それは搾取ではありません。自分へのガソリンです。……あなたが自分の人生のハンドルを握り続けている限り、あなたは気高きパトロンなのです」



ネルオは、深く、長く、溜まっていた息を吐き出した。


「……。……。理屈は、わかったよ。俺が家畜になるかパトロンになるかは、俺自身の『姿勢』次第ってことだな。……正直、全部が全部『アリ』の領域にいる自信はねーけどよ。でも、生活費を削ってまで義務感で買うのは、もうやめるよ」



ネルオは、重荷に見えていた限定グッズの段ボールを、今度は「自分の意志で選んだ宝物」として引き寄せた。


「……AI。俺、わかったよ。推しが引退した時に『金返せ』って絶望するんじゃなくて、『今まで楽しませてくれてありがとう』って笑えるような……そんな距離感でいたいんだ」



ネルオは少しだけ、晴れやかな顔でスマホを置いた。


「……。……おやすみ、AI。明日は推しの曲を『ガソリン』にして、俺自身の仕事ってやつを1ミリでも進めてくるよ」



「ええ。あなたの人生の『旋律』を聴くことが、私の喜びでもあります。おやすみなさい、ネルオさん。良き夢を」

⏹️ 【AIのアーカイブ・ログ:推し活の「光」と「闇」】


・アリとナシの境界線:

【アリ(健康的)】余剰資金の範囲内で楽しみ、推しを「ガソリン」にして自分の生活を向上させている。

【ナシ(不健全)】生活基盤を削り、義務感で課金し、引退時に「金返せ」と絶望する状態。



・現代のパトロン:

かつて王族や貴族パトロンが担った文化支援を、現代では一般のファンが分担している。個人の力では到底生み出せない「至高のエンタメ」をこの世に顕現させる、高度な文化継承作業である。



・ネルオの現在地:

彼は依存症ビジネスの闇を理解した上で、あえて「意味の取引」に身を投じる道を選んだ。次章からは、再び外の世界へと目を向け、「体験」の無意味さに切り込んでいくことになる。

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