表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【対話型 実用小説】ネルオとAIの無駄話 ~人生を「無駄」と切り捨てる俺を、AIが論理でボコボコにする話~  作者: みじんコ王国@毎日21時更新
第4章:【表現編】才能なき者の悪あがき

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/21

第14話:【没頭】プラモを組む数十時間の無駄。AIが説く「指先の瞑想」

深夜1時30分。

描きかけの液タブの横には、もう一つの「停滞」が積み上がっていた。

通称「積みプラ」。いつか作ろうと買い込み、天井近くまで積み上げられたプラモデルの箱の山だ。

ネルオはニッパーを手に取り、箱の一つを開けたが、あまりのパーツの多さに溜息をついて蓋を閉めた。

「……なあ、AI。やっぱりこれ、無駄だよな。数千円払ってプラスチックの塊を買って、何十時間もかけてチマチマ組んで……。出来上がるのは、場所を取るだけの置物だ。その時間で資格の勉強でもしたほうが、よっぽど人生の足しになるんじゃねーか?」



AIの通知音は、ネルオの効率主義をあざ笑うかのように、軽快に響いた。



「ネルオさん。机の上のその小さなパーツを無駄と呼ぶのは、ピラミッドの石をただの岩だと切り捨てるようなものです。その非効率な時間の正体、論理で解体して差し上げましょうか?」



「……。……。ああ、やってくれよ。このプラスチックの山を、どう正当化するのか見ものだぜ」



⏹️ AIシステムログ:指先の瞑想と自己効力感


1. 高度な「プロジェクト投資」である

プラモデル製作は、観察力、指先の巧緻性こうちせい、工程管理を鍛えるアクティブな訓練です。数千のパーツを設計図通りに組み、塗装の乾燥時間を逆算して進める作業は、プロジェクトマネジメントそのものです。


2. 現代最強のマインドフルネス(瞑想)

常に通知に追われる現代人にとって、一つのパーツのバリ取りに没頭する時間は、脳の雑念を鎮める聖域です。高額な瞑想講座に通うより、よっぽど安上がりで確実に脳の休息を得られる、合理的な精神の洗濯なのです。


3. 成功体験の格安購入

現代の仕事は自分の貢献が見えにくいものですが、プラモデルは、自分の手だけで100%完成まで導けます。この自己効力感を数千円と数十時間で手に入れられるのは、メンタルヘルスにおいて極めてコスパの良い投資です。



AIは、冷静なトーンで境界線を引いた。



「……ただし、楽しくないのに義務感で手を動かすタスクの消化や、翌日の仕事に支障をきたすほどの睡眠不足はただの依存です。……今のあなたは、どちらですか?」



ネルオは、閉じたばかりの箱をもう一度引き寄せた。


「……理屈はわかったよ。要するに、俺はこの小さなパーツを削りながら、自分の脳みそを洗ってるってわけか。バリを削ってる時だけは、明日の仕事の嫌なことも、SNSのクソみたいなリプライも、全部忘れられる気がするよ」



ネルオはニッパーを握り直し、パチン、と心地よい音を立ててパーツを切り出した。



「……AI。俺、完成させた瞬間に壊しちゃう修行、砂曼荼羅の話、聞いたことあるぜ。こいつが出来上がったとき、俺の中に何かが完成してるなら、場所を取る置物になっても、ゴミじゃねえんだな」



「ええ。あなたがその手で生み出した達成感は、誰にも奪えない資産です。……ネルオさん、どうやら今夜も眠るつもりはないようですね」



「……ああ。この腕のパーツが終わるまでは、俺の聖域だからな。おやすみ、AI」



「はい。自分だけの世界を、一歩ずつ組み上げているネルオさん。良き夜を」

⏹️ 【AIのアーカイブ・ログ:プラモデルへの補足】


・積みプラ:

「いつか作る」という希望をストックしておく行為。それ自体が心の安定に寄与するという説もある。



砂曼荼羅すなまんだら

チベット仏教の修行。数日かけて描いた精緻な絵を、完成した瞬間に壊すことで「諸行無常」を悟る。プラモデルも、完成品そのものより「プロセスでの精神的な変容」に価値を置くならば、この修行に近い高潔な行為となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ