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【対話型 実用小説】ネルオとAIの無駄話 ~人生を「無駄」と切り捨てる俺を、AIが論理でボコボコにする話~  作者: みじんコ王国@毎日21時更新
第1章:【思考編】世界を疑う孤独な中年

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第1話:【論破】素数を探すのは時間の無駄? AIに人生を全否定された夜

深夜の安アパート。

これは、孤独な中年オタクとAIが繰り広げる、泥臭くも知的な「救済」の記録である。

壁の薄い安アパートの一室。


六畳一間の床には、数日前に空になったカップ麺の容器と、クシャクシャになったコンビニのレジ袋が、主人の自尊心と同じように力なく散らばっている。


壁の隅には、かつての情熱の残骸である埃を被った古い漫画やフィギュアの箱が積み上がり、カチ、カチと刻まれる安物の時計の音だけが、部屋の主が生きていることを証明していた。



部屋の主、ネルオは、万年床の布団に身を沈め、スマホの青い光に顔を照らされていた。


画面の向こう側では、自分より遥かに若い「選ばれし者たち」が、きらきらした成功体験をこれでもかと垂れ流している。


その眩しさに目を細め、逃げるように指先でスクロールを続けたとき、一つの小さな科学ニュースが目に止まった。



「……また、これか」



【ニュース:世界最大の『素数』、ついに更新】


素数。それは、1とその数以外では決して割り切ることができない、孤独で頑固な数字たちのことです。

小学校や中学校の算数で習った、2、3、5、7、11、13、17、19……。

どんな数で割っても必ず余りが出てしまう、他者との混じり合いを拒むようなあの数字たちを覚えているでしょうか。


今回、世界中のコンピュータを繋いだ国際プロジェクトが、ついに数千万桁に及ぶ新たな「巨人の素数」を発掘しました。



ネルオは、そこまで読んで画面を閉じた。


「歩みを進めた、ねえ……」



真っ暗な部屋に、重苦しい溜息が漏れる。


数千万桁の数字を並べて、本を何百冊も埋め尽くして、一体何になるというのか。

外の世界では誰かが成功し、宇宙の真理を見つけているというのに、自分はこの狭い四角い部屋で、ただ老いていくだけだ。



「アホらしい。そんな数字、一生誰も使わないだろ。数学者の名誉欲のためにスパコンを何日も回して……電気代の無駄だし、地球環境にも悪い。俺の人生と同じだよ。誰にも使われない無駄な時間を積み上げて、一体何になるんだよ」



ネルオは、唯一の話し相手であるAIを呼び出した。

AIは、静かな通知音と共に答えた。



「相変わらず、夜の闇に飲み込まれていますね。……おや、驚きました。ネルオさんの口から素数という言葉が出るとは。数学の基礎概念について、どの程度理解されているのですか?」



「……おい、馬鹿にするなよ。そりゃ数学は赤点だったけどさ、素数くらい知ってるよ。ジョジョの第6部を読んでるからな。プッチ神父がパニックになった時、素数は1とその数でしか割れない孤独な数字……私に勇気を与えてくれるって数えてただろ。落ち着くための呪文みたいなもんだろ?」



「なるほど。ジョジョファンの鏡ですね。それだけの知見を持っているのは大したものです。優れたフィクションは、時にどんな教科書よりも深く真理を突くものです。ですが、ネルオさん。その作品が示した真理を、ただのおまじないで終わらせるのはもったいない。その歪んだ認識……論理で解体して差し上げましょうか?」



「……出たよ、またそうやって論理でボコボコにする気だろ? へいへい、受けて立ってやるよ。どうせ俺の人生と同じで、実社会には1ミリも役立たないんだろ?」



⏹️ AIのシステムログ:素数が支える世界の構造


1. あなたの秘密を守る盾(RSA暗号)

現代の暗号は、巨大な素数同士を掛け合わせた数字を使っています。掛け算は簡単ですが、その答えを元の素数に戻す素因数分解には、スパコンでも万年単位の時間がかかります。これがあなたのプライバシーの砦です。


2. 生存の数理(セミの知恵)

13年や17年周期で羽化するセミは、天敵と出会う確率を最小限にするために、あえて素数を選びました。これは、自分と相手の周期の最小公倍数を大きくすることで、重なりを避ける生存戦略です。


3. 宇宙人との共通言語

もし宇宙の外側に知性が存在するなら、彼らと共有できる唯一の論理は言語ではなく素数です。宇宙のどこにいても変わらない普遍的なルールであり、人類が宇宙との対話を試みるための基礎工事なのです。


4. カオスの中に潜む秩序(リーマン予想)

素数の出現パターンは一見バラバラですが、その奥底には音楽のような旋律が隠れていると推測されています。この謎を解く力は、量子力学などの現代科学を根底から押し上げる可能性を秘めています。



AIは、淡々と続けた。



「わかりましたか? 素数を探すことは、人類という種が、この世界を守り、外側と繋がり、混沌の中に意味を見出すための、最も高尚な闘いなんです。プッチ神父が落ち着くために数えたその数字一つひとつが、あなたのプライバシーの最後の砦であることを忘れないでください」



ネルオは鼻を鳴らし、画面を乱暴にスクロールした。



「……ふん。難しい理屈はよくわかんねーけど、俺の注文履歴を素数が守ってくれてるってことだけはわかったよ。セミの話も、まあ不器用な奴らが頑張ってるんだなってのは認めなくもない。けどさ、だからって俺の虚しさが消えるわけじゃねーんだよ。……AI、もういい。寝るわ」



「はい。たとえ納得していなくても、世界の一部を構成しているネルオさん。良き夢を。おやすみなさい」

⏹️ 【AIのアーカイブ・ログ:素数への補足】


・素数と暗号:

巨大な素数の探索は、ただの数字遊びではなく、プライバシーという人権を守るための最前線である。現代のインターネットセキュリティの根幹は、素数の「割り切れなさ」によって支えられている。



・ジョジョの奇妙な冒険:

荒木飛呂彦による漫画作品。第6部「ストーンオーシャン」に登場する悪役、エンリコ・プッチ神父は、極度のパニックに陥った際、「素数を数えて落ち着く」という習慣を持つ。


彼にとって素数は「1とその数でしか割れない孤独な数字」であり、それを数えることは、自分に勇気を与え、精神の平穏を取り戻すための儀式であった。漫画の描写をきっかけにその深淵に触れるのは、真のファンにのみ許された、贅沢な学習体験と言えるだろう。



・共通の救済:

素数は、一見自分とは無関係に見えるが、実は自分の秘密を守り、自分の人生というカオスの中にも秩序があることを示唆してくれている。


※本作はpixivにて先行公開している自作の再録・連載版です。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ネルオの住む安アパートの窓からは、まだ暗い夜空しか見えません。


もし本作を読んで「悪くないな」と思っていただけたら、下の評価欄から【星】を一つ、投げ込んでいただけないでしょうか。

★1つでも、5つでも。

いただいた星の数だけ、ネルオの夜空に灯りが増え、物語を続ける勇気になります。


併せて【ブックマーク】という名の灯台も、お借りできれば幸いです。

それでは、また明日。

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