18.エピローグ
遠方の空に、大きな朱い鳥が飛んでいた気がした。
そちらを向いても何もいないが、視線を反らすと、やはり視界の端にそのような生き物が見える、気がする。直視しようとすると消える。伊吹の鬼術ともまた違う、意識の端にのみ存在している。
烽州の地に降り立ったのは、朔也と近しい年齢に見える銀髪の青年だった。
「ご苦労。」
「相変わらず上からだねぇ、おっさん。年食ってりゃ偉いと思ってるんだから。」
「相変わらず口の減らないことだ。」
〈玉輪公〉の苛立ちが伝わる。
朔也は驚きが勝った。想像していた雰囲気とはかけ離れた青年だった。
なによりお供を誰も連れていない。一人だ。
「〈桐凰卿〉。客の管理くらいちゃんとできんもんか。」
「えー。いっぱいいたからね。蟻の管理しろって言われても無理でしょ。一緒一緒。あ、結構亡くなったんだっけ。どんまい!」
その場の空気が張り詰めた。
〈五光〉とわかっていても、無神経な言い回しに苛立たずにはいられない。
「我国の〈五光〉の威厳、しいては〈神器〉の存在価値に関わるぞ。」
「それって、ボクが困ること?」
挑発的な言い回し。
軍の人間の鋭い視線を十分に受け止めた後、〈桐凰卿〉はへらへらと笑った。
「なんて、じょーだんだよ!じょーだん!ごめんねぇ。これで許してくれる?」
これ以上話していたくなかった。
〈桐凰卿〉に異国人たちの遺体を引き渡した。どのように持ち帰るのかと不思議に思っていたが、側に控える見えない大きな鳥が飲み込んだようだった。ろくな挨拶も交わさず、〈桐凰卿〉は帰っていった。
瑤一が「今の〈桐凰卿〉は…」となにか言いたそうだったのは、こういうことだったか。
隣の〈桐凰卿〉はこの調子、〈桜姫〉は変わったばかり。
謎の異国人に、様子がおかしい〈仇鬼〉。
何も終わっていない。むしろこれからだと、気を引き締めざるを得なかった。




