19 大親友
机の上には、嘗て福本郁実が所持していたトランプが並んでいる。
参加者を表すそれぞれのカードには、彼女が書き込んだと思われる記号が記されていた。
立山の残した『ある囚人の独白』の内容と岸本氏の閲覧した事件調書を照らし合わせた結果、○がクラスメート、×が部外者である事がほぼ濃厚。Fと?に関しては、はっきりとした答えは見つかっていない。
カードには名前を記した付箋が貼られ、行方不明の砂場信子を除き、全員が死亡していた。
「訳が分かんない。【JOKER】は大親友じゃないの? どうして重三?」
【JOKER】に砂場重三の付箋を貼った岸本氏に、東風が食いついた。
「こんな風に、机の真上からトランプを俯瞰して見た場合、ダイニングルームの外で画策している【JOKER】が、いかにも大親友に見える。だが、このトランプはFの視点から見た人物たちだ」
岸本氏は、大親友と書いた付箋を【♦8】Fと走り書きされたカードに貼った。
「Fが大親友だと仮定すると、砂場重三との関係性が見えてくる。
恐らくFと砂場重三はネットでのやり取りはあっても、直接顔を合わせた事が無い。だからFは砂場重三を?と記したのだろう」
岸本氏は煙草に火を着け、煙を吐き出した。
「ノートパソコンのメッセージに、少しは真実が混じっていたという事ですか。でも、大親友の目的は何なんでしょう? 殺戮が趣味? そんなバカげた事を度々していたら本当に恐ろしいですよ」
大親友をサイコパスの枠にはめて、簡単に締めくくるのは間違っている。
「意見をつけ足してもいいですか?」
岸本氏と東風に目を合わせ、ゆっくりとした口調で言った。二人は無言で頷く。
「とらえ方の違いですが、【JOKER】は砂場重三ではなく、替玉の事だと思います」
そう言って砂場重三の付箋を剥がし、代わりに首無し死体と書いた付箋を貼った。
それを見て、岸本氏と東風はギョッとした。
「福本郁実が○と×の判断が出来たのは、彼女が元クラスメートで、十数年経って姿が変わっても見分けがつくほど、相手に執念深い恨みを持っていたからではないでしょうか?
立山を殺さなかったのは、罪を擦り付ける理由もあったでしょうが、他の者ほど恨みが薄かったのかも知れません」
言葉を切ると、時が止まったかのように三人の沈黙が続いた。




