18 JOKER
荒川のアパートをあとにした三人は、岸本氏の運転で市営団地へ戻った。
編集長に簡単な状況報告と東風の勤務評価を伝え、しばしの休憩とレポート作成を挟んで、三人は再びこたつ机を囲んだ。
「荒川の話を信じるとすれば、やはり砂場重三が同窓会の計画に関わっている可能性が高いな」
岸本氏は砂場重三の付箋が付いた【♠K】を【JOKER】の右に置いた。
「管理者の仲達夫と日雇いの婆さんはどうでしょう?」
腕を組んで岸本氏に目を合わせると、黒レザーの手帳をめくった。
「同窓会翌日の七月二十一日明け方に、別荘の様子がおかしいと警察に通報があった。仲達夫からの連絡だ」
「タイミングが良すぎる。それに『ある囚人の独白』には、スピーカーの取り外しとドアノブの付け替えが書かれています。管理者なら、普段から付け替えの練習も出来るし、館内部の状況把握もお手の物じゃないですか?」
東風と岸本氏はゆっくりと頷いた。
「お婆さんについてはどう?」
東風が仲達夫の付箋が付いた【♠J】を【JOKER】の左に置いて、尋ねた。
「共犯の可能性もあるが、この際除外してもいいだろう。仲達夫の方が比重が大きい。加えて、荒川も同窓会当日のアリバイがあるから外しておく」
岸本氏は付箋を外し【♦Q】と【♣K】を箱に仕舞った。
「アリバイと言えば、砂場重三にも当時の警察が探りを入れている。事件当日は、会社の社長室から退社時刻の午後七時過ぎまで、一歩も外に出ていなかった」
「電話で指示は出来ますよね。立山に罪を被せるなら、むしろ現場にいないほうが自然です」
荒川と同様に砂場重三にもアリバイがあるが、黎明館の前所有者であり、仲達夫の雇い主という立場の違いがあった。
しばらく黙っていた東風が疑問の声を挟んだ。
「素朴な質問だけどいい?」
岸本氏と目を合わせ、同時に頷く。
「そもそも、恨みを持ったからって九人も人を殺す? 失敗する可能性が高いし、リスクが大き過ぎないかな?」
東風は砂場重三の付箋が付いた【♠K】を持ち上げ、眺めた。
「わしはこう考えている。同窓会の参加者たちは大親友の生贄にされた。
荒川の言った言葉を借りると、砂場重三は報復の舞台を設定したに過ぎない」
岸本氏は【♠K】から砂場重三の付箋を外して、【JOKER】の上に貼った。




