10 F
岸本氏は取り出した付箋に名前を書いた後、並べたトランプに貼っていった。
「マークの色は、黒が男で赤が女。スペードとハートは先に到着していた者たち。クローバーとダイヤは後から来た者たち。数字は招待状に記されていた数字と名前に一致する、というわけだな」
机に並べたカードを整理すると、
【♠A】水元悟 ○✓
【♠2】中塚尚樹 ×
【♣3】岡林祐一 ○
【♣4】八木芳和 ×
【♥5】服部紹子 ○
【♦6】町田真衣 ×
【♦7】東原由夏 ○
【♦8】福本郁実 F
【♦9】洲崎倫子 ○
【♣10】立山紘一 ○
となった。
「JOKERの?は一先ず置いといて、あとは○と×とFと✓の解釈ですね」
「Fは福本のF、✓は死亡か報復済み、と言ったところか」
岸本氏はグビリと缶コーヒーを飲んだ。
「○と×は何なんでしょう? 敵・味方? 好き・嫌い?」
最近は、勝手な決めつけはやめようと心掛けているので、全く見当がつかなかった。
「根本的な質問をするが、いいかな?」
岸本氏は煙草の封を切り、火をつけて言った。
頷いてから、一服するのを待った。
「黎明館事件の被害者は何人だ?」
「同窓会の招待客十人のうち、立山紘一を除いた九人ですよね?」
「確かに『ある囚人の独白』には、九人の死体を立山紘一は目の当たりにしている。だが調書によると、招待客の死体は五人しか発見されていない。残りの四人は別人だった」
「え? ……おっしゃっている意味がわかりません。嚙み砕いて教えてくれませんか?」
混乱した頭で問うと、岸本氏は缶コーヒーを勧めて言った。
「黎明館事件で発見された九人の死体のうち、五人は立山を除く○印の付いた招待客だ。残りの四人、×印が付いた招待客三人とFは、死体と名前が一致していない」
「じゃあ、その四人は何者なんですか? 赤の他人がクラスメートでもない同窓会に出て何が楽しいんですかね?!」
ほとんどやけくそになって叫んでいた。
「まぁまぁ、落ち着いて冷静にな。恐らくだが、幹事の水元はクラスメートを集める事が出来ずに替玉を雇ったか、知り合いにタダで宿泊できると誘ったかだろう。ただ、死んだ四人の中にFが含まれているかはわからない」
「Fは生きていて、身代わりの死体を用意したって事ですか? 話がややこし過ぎませんかね」
こめかみを押さえて岸本氏に訴えかけると、くゆる煙草の煙をじっと見つめて答えた。
「立山の自宅のポストに招待状を投函したのがFだと仮定すると、いろいろな繋がりが見えて来ないか?」




