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黎明館殺人事件  作者: シッポキャット


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21/45

●砂場の報復『ある囚人の独白』⑩

――――――――――――

 ●砂場(すなば)報復(ほうふく)


 大きく深呼吸をして、沸き立つ鼓動が(おさ)まるのを待った。もう一度背後を確認したあと、廊下の左右に並んだ部屋を、一つずつ確認する事にした。

まずは向かって右のドアから。目線の位置には【101】と表示されている。ドアレバーを下げると、抵抗なく()いた。半身になり右手にナイフを持って、ゆっくりとドアを(ひら)く。


 部屋はワンルームで、室内を一望できた。雨戸が閉まっているのか、ガラス窓の向こうには茶褐色の板が張られている。電灯のスイッチを入れ、警戒しながら壁づたいに室内に入った。


 部屋は()き板の床に、小さなテーブルとシングルベッドが設置されていた。人が寝ている気配は無かったが、念のため掛け布団をめくった。嫌な予感は外れ、ため息を漏らす。

呼吸を整え、洗面所へと()り足で進んだ。洗面台の向かいには、中折れ式の浴室ドアがあった。

半透明の樹脂パネルの向こうに、ぼんやりと人影が映っていた。息を呑んで数秒待ったが、人影はぴくりとも動かない。私は意を決して浴室のドアを開けた。


目一杯(めいっぱい)水が溜められた浴槽に、立膝(たてひざ)をついて頭を(しず)めている人物がいた。後ろ手はビニールテープで雁字搦(がんじがら)めに(しば)られている。長い髪は水面に広がり、ドアを開けた時の振動で、不気味に()らめいていた。

 現実離れした目の前の光景に、一瞬意識を失いそうになった。人が現実に殺されているのだ。あまりのショックに、ついさっき死んだ水元悟(みずもとさとる)の事を忘れていたほどだ。


 大きく息を吐き、冷静さと警戒を取り戻す。体形や服装から、死体は洲崎倫子(すざきりんこ)と判断した。下手(へた)にいじると、私に容疑が掛かる恐れもある。手を合わせて足早(あしばや)に部屋を出た。

 続いて向かいの【102】のドアレバーに手を掛けた。またもや抵抗なくドアが開く。


 砂場の()()()は、報復の結果を私に確認させていくつもりなのだろうか? 一体何のために? それが砂場秀樹の遺言(ゆいごん)なのだろうか。

 理由はどうあれ、加害者は人を(あや)める事に躊躇(ためら)いが無い事を理解した。


 息を潜めて部屋に入った。先程の部屋と同じ間取(まど)りだが、ガラス窓から月明かりが差している。窓の外には鉄の格子が()め込まれていた。

 ベッドには女性ものと思われるパジャマが几帳面にたたまれていて、掛け布団には人が横たわっているような(ふく)らみがあった。

 部屋の状況から、先乗(さきの)りした服部紹子(はっとりしょうこ)(あて)がわれた部屋だと思った。ボストンバッグの中を見ると、着替えや頭痛薬などがあったが、人物を特定する物は何も無い。


 恐る恐る掛け布団をめくった。

目隠しと猿轡(さるぐつわ)をされた女性が横たわっていて、口元から酒の臭いが(ただよ)って来る。さらに布団をめくると、先程と同じように後ろ手に縛られていて、胸から腹にかけて無数に刺された痕があった。アイスピックのような鋭いもので刺されたのか、血はじわじわと広がり、服や布団をゆっくりと、赤く染め続けていた。

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