10/14
10
あのね、とひげの男が、いらいら口をはさんだ。
「イノシシやクマとは違うんです。イノシシやクマなら、おたがいこの地球に住む者同士、なんとかうまくやっていかにゃなりません。しかし、あれはちがう。あの化け物は、この世には存在してはならない生き物なんです。だいたい別の次元だかなんだかに、どうやって帰すんですか? むちゃ云わんでください」
「化け物という、その先入観は、たいへん問題ですよ」
派手なネクタイの男が、声をうわずらせた。
「牧野富太郎は云いましたよ、雑草という名の草はない、と。化け物なんて、生き物はいないんです。どんなに醜悪な生き物にだって、生きる権利はあるんです。醜いからって、われわれには彼らを殺す権利なんてない。だいたい美醜なんて、その時代時代のわれわれの、くだらない価値観の押しつけです。太っている人がもてる国だって、この世界のどこかにあるんだから」
司会者が、体をのけぞらせて笑った。
「太ってる方から苦情がきますよ」




