第343話 聖国アディグラト家令嬢、神罰の第二段階を見届ける
(聖国アディグラト家令嬢視点)
聖国アディグラト家令嬢は、神罰の第二段階を見届けます。
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「“Execute batch for Stop-LocalTime-Instance-for-AllActors except whitelist.dat within 1,000 m radius”」
元使徒ファウレーナ様=メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下が、メルー・サンクタ・ヴァイクグラフォ・ダーナン聖女猊下、ハードリー・サンクタ・プレフェレ・ハラウェイン聖女猊下、メグウィン・レガー・ミスラク第一王女殿下らと手を重ねられて、聖なるご命令をご執行される光景を、わたしはサラマ・サンクタ・プレフェレ・セレンジェイ聖女猊下、マルカ・マルグラフォ・ゴーテ様、そして、アファベトと一緒に拝見していた。
ご神罰の第二段階。
それはオドウェイン帝国の帝城にいる多くの者たちが『時』を止められ、物言わぬ像へと変えられることを意味していた。
『鳥船』を見せ付け、更には『エレヴェイティング・プレーン』で使徒様のお姿のメリユ様がご降臨され、そして『バリア』の力により主城門を容易に突破してみせたというのに、未だ優位にあると思い続けていたオドウェイン帝国の帝室、高位貴族の者たち。
『人』は何と愚かなのだろうと、わたしは思う。
聖都ケレンでのご警告で、神がこの世=エルゲーナを容易に終わらせられることを知り、王国との境にある砦で、神が全ての『人』を物言わぬ像へと変え、この世を『人』のいない世界へと変えることすらも容易くできることを知った。
『人』が忘れかけていただけで、神は、愚かな『人間』を罰する超常的なお力をお持ちで、エルゲーナが聖なる秩序を見失った際には、ご神罰をくだされるというのは今も昔も変わっていなかったのだ。
聖職貴族でありながら、罪を犯した我がアディグラト家。
本来であれば、連座で裁かれるべきだったわたしは、愚か過ぎる帝国の『人々』の姿に胸が痛んだ。
聖職者は、神の聖なる秩序を世に説き、それぞれの国の在り方に関わるべき立場であるのに……堕落し、欲に塗れ、自ら秩序を乱した。
本当に、聖教、聖職貴族、聖職者たちは、なぜこのようになることを止められなかったのか?
結果、神は元使徒ファウレーナ様=メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下をご神命の代行者と遣わされ、神のご警告とご神罰の代執行を任されたのだ。
「ルーファ様」
「ええ」
一度ご神託は受けられても、聖なるお力までは授かれなかったサラマ・サンクタ・プレフェレ・セレンジェイ聖女猊下と目を合わせ、これから起こるご神罰を目に焼き付けようと心に決める。
そして、マルカ・マルグラフォ・ゴーテ様とも手を重ね、そのときを待つ。
既に聖なるご命令=ご神罰は始まっているのだろう。
ほどなくして、『騒ぎ』は目に見えて分かるものとなった。
「何だ、どうした!?」
「ビルコット卿?」
先ほどは近衛騎士たちなど、限られた者たちが物言わぬ像に変えられた。
しかし、今度は高位貴族たちの中から身体を光らせ、物言わぬ像へと変えられ、倒れる者が現れ始めたのだ。
ダァンと硬質なものが床に叩き付けられる音が謁見の間に響く。
そして、一つ数えるごとに、一人、また一人と物言わぬ像へと変えられ、床へと倒れ伏していく光景が増えていくのだ。
「ハーマンレ卿!?」
「キャァァァ」
すぐ隣にいた高位貴族が突然固まり、口を半開きにしたまま、ゆらゆら揺れているのを見て、夫人らしき女性が悲鳴をあげる
「これは!?」
「一体どうなっているのだ!!」
一つ数えるごとに、『人』一人が物言わぬ像へと変じていく状況に、ようやく帝国の方々は危機感を抱いたらしい。
普段は農民などから徴用している兵士一人が命を落としても何も感じない者たちも、いざ自分たちが命を容易に奪われる側に立ってしまったのを(ようやく)理解すると、帝国の『余裕』は簡単に崩壊したのだ。
「第五皇女殿下!?」
「何だと!!」
「姉上!」
そして、ついに帝室からもご神罰を受けられる方が出てしまう。
第五皇女殿下が突然倒れられ(ドレス姿のまま)脚を斜め上にした不自然な姿で転がり、帝室の皇子殿下、皇女殿下らからも悲鳴があがる。
そこからはまさに地獄絵図となった。
「嫌だ、死にとうない!
誰か助けてくれ!」
「逃げろ、ここにいては危険だ」
「おお、神よ!」
太った高位貴族の者が傍にいた低位貴族の者を蹴飛ばすようにして謁見の間から逃げ出そうとしたり、泣き出す貴族令嬢を放置して親の貴族が駆け出したり、侍女を盾替わりにするように屈み込んだり、それはもう酷いものだった。
まだ、神に懺悔しようとする者はマシな方だろう。
皇帝陛下のお傍におられた大司教猊下は、真っ青な顔でその場で吐き始め、宰相閣下は腰が抜けたように座り込まれている。
一つ数えるごとに、床が僅かに揺れ、物言わぬ像へと変えられる者がどんどんと増えていくのが分かるのだ。
「うわぁぁ」
「た、助け……」
助けを求めながらに物言わぬ像へと変えられる者が増えてくると、第二皇女殿下のおっしゃられていた通り、『嘆きの立像』と言うのに相応しいものになってくるの。
その姿を見て、残った者たちの『騒ぎ』は更に大きくなっていく。
もはや、帝国には、冷静さを保てている帝室、貴族の関係者は残っていなかった。
己自身だけでも、ご神罰から逃れたい、タダその一心で我先にと謁見の間から逃げ出していく。
そして、その間にも、近衛騎士、衛士、侍従、侍女、聖職者たちも次々と物言わぬ像へと変えられ、残る全ての者たちが恐怖に取り付かれていた。
「テ、テーナ、これがそなたの言っていた『嘆きの立像』というものか!?」
「はい、お父様。
先遣軍は……先遣軍の騎士、兵士たちも同じようにご神罰への恐怖に慄きながら、『嘆きの立像』へと変えられてしまったのでございます」
「何ということだ、神は我が帝国を滅ぼすおつもりか!?」
ついに、玉座に座されていた皇帝陛下も、お身体、いや、お声すらも震わせられて、第二皇女殿下に尋ねられ、遅過ぎる後悔をされたようだ。
「アレム、テーナ、わたしを、わたしを中に入れてくれぇ」
そして、バリアへの攻撃を指揮された第一皇子殿下はバリアに張りついて、第二皇子殿下、第二皇女殿下に助けを求めてられている。
「殿下、わた……」
その間にも、近傍警護の近衛騎士が物言わぬ像に変えられ、第一皇子殿下に向かって倒れ込まれ、殿下もまた大理石の床に倒れられるのだ。
そして、殿下の足元に、水が広がっていき、殿下が失禁されたのが分かってしまった。
これがご神罰。
サラマ・サンクタ・プレフェレ・セレンジェイ聖女猊下の御手にお力が込められるのが分かる。
わたしたちは、『人』の弱さ、愚かさゆえにご神罰をくだされたこの光景を後々に伝えていかなくはならない。
そう、猊下もわたしもそう心に強くそう思ったの。
間もなく、オドウェイン帝国は実質的な崩壊を起こすことになるのだろう。
政務、軍務、家政に関わる者たちのほとんどが物言わぬ像に変えられてしまうのだ。
政務に関わる文官たちがいなくなれば、行政や司法ももはや成り立たなくなる。
食膳官や侍女たちもいなくなれば、食事すら出なくなるだろう。
先に身体を光らせられ、おそらくご神罰を逃れた皇帝陛下や宰相閣下が残ったところで、書類仕事をする者たちはもういない。
動かすべき近衛騎士、騎士、衛士、兵士たちもいない。
このただっ広い帝城は、物言わぬ像が大量に転がり、誰にも管理のできない廃城となってしまうのは明らかだ。
「へ、陛下、このままでは、帝城が……」
「分かっておる!」
そのことは、宰相閣下や皇帝陛下にも分かったらしい。
新たに徴用しようにも徴用できる者がいない。
元々貴族令息、令嬢たちのように、子供時代にしっかりとした教育を受けた者たちが皆物言わぬ像に変えられてしまえば、もはや帝国に必要な人材がなくなったも同然なのだ。
「嫌だ、嫌だ!」
「お母様ぁ」
まだ精神的に幼い皇子殿下、皇女殿下らは、涙と鼻水だらけの酷いご尊顔で、その場で怯え、泣き続けることしかできない。
そして、皇帝陛下はついに玉座から立ち上がられて、口を開かれる。
「使徒殿っ、これが神罰だと!?
一体、神は何をお考えなのだっ!」
逆恨みも甚だしいと思う。
大勢の『人々』の命を奪い、己の欲望でこのエルゲーナで好き勝手しようとしていたというのに、神のお怒りを未だに理解できないとは……本当に救いようがない。
「陛下は、命奪われる者の痛みがまだお分かりになられないようでございますね」
「当たり前だ。
国を統括する者として、兵一人の命になど構っておられるか!
全体として国が富めばそれで良いに決まっておろうが」
「では、神からすれば、陛下もその兵と同じタダ一人分のお命であるのをご理解されておられますか?」
「世迷言を!
余の命が兵一人の命と同じ訳がなかろう?」
「いいえ、聖なる秩序を乱す者として、ご神罰をくだすべき者と神にご認識されたならば、陛下もタダお一人のお命でしかないのですわ」
その、メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下のお声は、今まで拝聴してきた中で一番冷たいお声に聞こえた。
「使徒殿は、余に、神罰をくだすと申すか?」
「はい、ご神命の代行者として、ご神罰を与えます。
“Set transparency of avatar-of-emperor to 0”
“Execute batch for Activating-Physical-Disabilities for avatar-of-emperor”」
時間的猶予を与えられることなく、猊下は皇帝陛下に次なるご神罰をくだされたのだ。
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ルーファちゃん視点、久しぶりでございますね!




