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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
333/348

第332話 ロフェファイル騎士爵令嬢、エリガポ公爵家令嬢と共に悪役令嬢が主城門を崩壊させるのを見届ける

(ロフェファイル騎士爵令嬢視点)

ロフェファイル騎士爵令嬢は、エリガポ公爵家令嬢エリガポ公爵家令嬢と共に悪役令嬢が主城門を崩壊させるのを見届けます。


[『いいね』していただきました皆様方に深く感謝申し上げます]

「このまま押し通ります。

 アリッサさん、近衛騎士の方とすぐに避難を」


メリユ様のお言葉にわたしはベルベラ殿の手を取ると、すぐさま主城門から離れることにした。

 メリユ様が『押し通る』とおっしゃられたのだ。

 当然、バリアで主城門自体を弾かれ……いや、破壊して進まれるということになるのだろう。

 この巨大で立派な主城門が壊される光景など、わたしには到底想像もできないが、メリユ様が『できる』とおっしゃられるのならば、それは本当に『できる』のだ。


「き、貴殿、一体どうしたというのだっ?

 使徒様のお言葉は一体っ!?」


 ベルベラ殿は戸惑われながらも、わたしの手に引かれるがままに一緒に走って逃げてくれる。

 以前のベルベラ殿ならば、きっと『こっちの方が安全だ』と主城門内部にいるように言い張ったことだろう。

 一度目の弓の斉射と投石は(当然)完全に弾かれたとはいえ、主城門の上にいる連中もまだ諦めてはいないことだろう。

 そういう意味では、外に出てしまえば、(基本的にはメリユ様のバリアに弾かれるだろうが)外れた矢が飛んでくる可能性だってなくはないのだ。

 それでも、ベルベラ殿が従順にわたしの言葉に従ってくれているのが少しうれしかった。


「はぁ、はぁ、間もなく主城門が破壊されるかと」


「主城門がっ!?

 そんな馬鹿なことが、はぁ、いや、そんなことが、はぁ、起こり得ると言うのか!」


 『鳥船』により薄暗くなった主城門前の広場を駆けていくわたしたち。

 周囲には砕かれたばかりの投石の破片が散らばっていて、こんなことなら松明の一つでも拝借してくれば良かったと思ってしまう。


 足場が本当に酷いんだ!


 ベルベラ殿もわたしも、騎士として鍛えられているから良いようなものの、そこらの貴族令嬢ならすぐにすっ転んで、身動きが取れなくなってしまうのに違いないと思う。


「はぁ、まさか、投石器の石すらも容易に跳ね返されるとは!」


「いえ、そんなことに驚いている場合ではありませんよ?」


 そう、メリユ様のバリアは、投石機や破城槌で壊れないどころか、『人』の身では対処し得ない山崩れだろうが何だろうが、弾くことが可能なのだ。

 それをもし破壊行為にお使いになられるとしたら、きっと帝城すらも破壊し尽くすことが可能なことだろう。


 それをどのようにベルベラ殿に伝えようかと考えていると、急に追走してくれていたベルベラ殿の手に後ろに引っ張られるような力を感じる。


「ぁ、ああ、そうだな、はぁ、先ほどの矢と投石は、はぁ、第一皇子殿下のご指示によるものだとは、はぁっ、思うのだが。

 貴殿っ、本当にすまない! わたしの先導でこのようなことになり、はぁ、もはや、わたしの、首を差し出す以外に、はぁ、この責任を取る方法など、ないのだろうな」


 そして、急に顔を伏せて言い出したベルベラ殿のその言葉に、わたしはゾッとなった。


 何しろ、特使の先導をして欲しいと頼んだのはわたしなのだ。


 儀仗兵までは何とか用意できた。

 しかし、謁見の間まで先導することのできる近衛騎士が周囲にいなかったのだ。

 もちろん、ベルベラ殿だって近衛騎士なのだが、女性であるし(訊いてみても)今までに外交使節の先導を経験したことはないと言っていた。

 だから、ベルベラ殿にも最初は拒まれていたんだ。


 けれど、わたしが唯一信頼の置けるオドウェイン帝国の近衛騎士は貴女だけだと口説いて、ようやく、何とかやってもらえたというのに……まさか、このような事態になるとは思いもよらなかったんだ!


「な、何を言っているんですか!?

 ベルベラ殿、貴女のせいなどではないでしょう?」


「しかし、現に使徒様と、特使の方々に、我が帝国は、はぁ、矢の斉射と投石を行ってしまったのだぞ!?

 しかも、そこに誘導してしまったのはわたしなのだ!」


 何も貴女が責任を感じる必要なんてないだろうに、とわたしは自然にそう思ってしまっていた。

 毛嫌いしていた『帝国人』である彼女を、こんなにも好ましいと思ってしまうようになるだなんて。

 不思議なものだ。

 『帝国人』など、彼らが小王国と呼ぶミスラク王国の近衛騎士であるわたしなど、見下してくる傲慢な連中な奴らだと一緒くたに思っていたというのに。


「はぁ、もう、一体何を言い出すんですか、貴女は!

 わたしが依頼したことなのですから、貴女が責任など感じる必要はないでしょう?」


「いや、外交使節を先導する近衛騎士の責任を、はぁ、何だと思っているのだ!?

 最初は栄誉なことだと、はぁ、思ったが、うぅ、こんなことになり、誠にすまないっ!」


 ベルベラ殿は本当に責任を感じておられるのだろう。

 この暗がりでも、彼女の目に涙が光っているのが見え、彼女がいかに誠実な『人』であるのかが伝わってくる。


「はぁ、はぁ、もうここらで良いでしょうかね?

 ベルベラ殿、見ていてください。

 メリユ様は第一皇子殿下の攻撃など何とも思っておられませんから!」


 これ以上、ベルベラ殿を引っ張るのも無理そうだと判断し、わたしは振り返って松明の灯る主城門を振り返るんだ。


 (そこにいるのだろう)落とし格子を二重に落として行く手を阻んだ上で、矢と投石で攻撃した卑劣な第一皇子殿下と騎士たち。


 ご神命の代行者様としてメリユ様は、彼らに神の怒りの鉄槌をくだされることだろう。

 白きお翼から光を放たれ、宙を舞われるままに主城門へと近付いていかれるメリユ様は(『鳥船』による日食に襲われた)世界を聖なる光で照らされる(まさに)希望の星だった。

 その星が今まさに主城門へと近寄られ、正義による破壊を行われるんだ。


「おぉ」


「っ!?」


 落とし格子に当たったという反動すら感じられないほどそのままの速度で進まれるメリユ様を前に、落とし格子は悲鳴のような軋み音を立てると一気にへしゃげ、続いて主城門のアーチ自体に破壊が及び始める。

 メキメキ、バリバリというような音と共に、石の組合せで作られたアーチは砕けていき、まさにバリアが押し通るような形で主城門の破壊が行われるのだ。


 そう、お翼を広げられ、聖なる光を放たれる少女により、崩壊していく主城門。


 エルゲーナで最も立派と称えられた、オドウェイン帝国の主城門は子供の作った砂城のように簡単に崩されていく。

 そう、主従門に掲げられた松明の動きだけでも、その破壊の進行がはっきりと見えるのだ。

 それは、まさに神話のごとき光景だった。


「しゅ、主城門が使徒様の手により、破壊されていく……。

 はぁ、『鳥船』をお使いになられずとも、はぁ、使徒様お一人で、はぁ、これほどのお力をお持ちとは!」


「そうですとも。

 メリユ様がその気になられれば、このまま帝城を崩壊させることすら容易いのですよ?」


「そんな……こ、これが、神のご眷属のお力だと言うのか!」


 ベルベラ殿の手がまた震えているのが分かってしまう。

 お姿こそ使徒様とはいえ、見た目は十一歳の少女にしか見えないメリユ様が、帝城を滅ぼし得るお力を秘められているということに衝撃を受けられたのだろう。


 もちろん、メリユ様が『人』の命を奪われるようなことはなされないだろう。

 いや、なされる訳がない。


 主城門の破壊も、上にいる騎士たちが逃げられるよう、猶予を与えるような速度で行われ、今だって両翼の城壁の上を逃げていく騎士たちの松明の動きが(ここからも)手に取るように分かるのだから。


「お、おいっ、と、特使の方々は大丈夫なのか!?」


 突然手をギュッと握られて、わたしは暗がりの中もベルベラ殿の目を見る。

 なるほど……メリユ様に先導されるまま、崩れゆく主城門へと入っていかれる特使の皆の動きに驚かれたのだろう。


「大丈夫ですよ。

 特使の方々は、メリユ様にバリアで護られていますから。

 たとえ今ここに上空の『鳥船』が落ちてきても、特使の方々は無傷で済みますって」


「……それ、我々は無事では済まないのではないか?」


「あー……、確かにそうですね?」


「おい!」


 ベルベラ殿に軽く小突かれて、彼女にも以前と同じ調子が戻ってきたのを感じる。

 これなら、大丈夫だろうか?


 そんなことを思っている間にも、主城門はいよいよ形を保っていることができなくなったのだろう。


 いよいよ石の崩れる音が激しくなり、土煙が周囲に立ち昇っていくのが見えるのだ。

 このままだと、ここにも押し寄せるだろうか?


「さあ、安全なところまでまいりましょうか、お嬢様」


「お嬢様言うな、二度と言うなよ?」


 窘めるようにそう言うベルベラ殿にわたしは思わず笑ってしまったのだった。

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