98話 相原の策略(3)
それから間もなくして、お母さんはコーンスープを運んで来てくれた。その後は海鮮サラダ、焼きたてのバターロールのパン。そして、メインディシュに子牛の肉、デザートにバニラアイス、最後にはホットコーヒーで締めくくる事となった。
丁度僕達が、1つの品を食べ終えたころあいを見計らって次の料理を持って来てくれるので、そんなちょっとした心遣いが僕達により一層楽しいひと時を与えてくれた。
「ふぅ~、結構多かったね」
「どうでした?」
相原は前屈みになって感想を聞いてきたので、ひと口コーヒーを飲んで喉を潤してから僕は答えた。
「うん、美味しかったよ。でもあれだね。こういった場所に来るって分かってたら、もう少しましな服装で来たのになぁ」
「別に良いじゃないですか、そのよれよれの服で」
彼女は僕の服の袖を摘んでそう言った。
「仕方ないだろ、通勤用にしてるんだから」
「まぁ今度来る時は、ビシッとしたスーツを着て来ると言う事で」
「何でわざわざスーツを着て、食べに来ないといけないんだよ」
「べ~つに~」と言って、相原は顔を背けた。
「それにしても、長い時間いてるはずなのに、あまりにも居心地が良いんで、何か長く居てるような気にならないな」
「実は私のお父さん、以前は結婚式場のコック長をしてたんですよ」
「へぇ~、そうなんだ」
「でもやっぱり自分の店を持ちたいと言う気持ちが強くて、それで前の職場を辞めてこの店を始めたんですって」
「へぇ~、凄い決断だな。その時お母さんは、反対しなかったの?」
「仕方がないわねって、そう言っただけで、それ以上は何も言わなかったって言う話しをいつだったかお母さんから聞いた覚えがあります」
「ふ~ん、そうなんだ」と、僕は頷いた。
「所で片瀬さんは、今の指導員の仕事を続けていくんですか。自分で何か店を持ちたいなって考えた事ありません?」
「う~ん、ない事もないな」
「へぇ~、どんな店ですか?」
「そうだなぁ。大学生の頃って、ちょくちょく旅行をしてたんだけど、学生だったからそんなにお金も持ってないだろ。だから民宿に泊まる事が多かったんだけど、幾つか泊った民宿のオーナーの人って、ホテルとは違って何だか気さくに話しかけてくれて親しみ易くってさぁ。そんな観光客の人達に何かを提供する仕事も何だか良いなって考えた事もあったけかなぁ」
「な~んだ、それだったらいつでも言ってくれれば力になりますよ、片瀬さん」
相原が、一体何を言おうとしているのかが全く分からなかった僕は、キョトンとした顔をした。それでも彼女は、お構いなしにそのまま話しを続けてきた。
「私と一緒になれば、自然とこのお店が継げるじゃないですか」
「そうだなぁ、そんな機会があればね」
僕は相原の挑発にはのらず、手にしたコーヒーカップを口元に着け、彼女の話しを軽くながした。
さらっと話しをはぐらかされた事に相原は、頬を膨らませて少し不機嫌な顔をして見せた。




