83話 11月7日(2)
玄関を開けて遥が姿を現した。
ふぅ~、何だ遥か。
遥は、スマホに文字を入力して送信してきた。
『遅かったですね、片瀬さん』
「うん、近道しようとしたら道を間違えちゃって」と、照れながら僕は言うと、『あらら~』と、遥も苦笑いして答えた。
「所で、車は家の前に置いといて良いのかな?」
『あっ、駐車場に入れて下さい。今、シャッターを開けてきますから』
そう言って遥は、家の中にまた戻って行ったかと思うと、掘り込み式の駐車場のシャッターがひとりでにゆっくりと上がっていった。
へぇ~、自動か。便利だな。と変な所に関心をしながら、その中に車を入れさしてもらった。
車から降りて駐車場を出ようとした途端、その物陰から遥が急にパッと顔を出して僕を驚かせた。
「わっ!!」と僕が声を上げると、彼女は、「やったぁ~」と言う感じで、手を叩いて喜んでいた。
「もう、遥~」
僕は胸を撫で下ろした。
『昨日のビックリキスのお返しです(笑) (#^.^#)』と、両手を頬に当てて照れながら答えた。
「はいはい。あっ、そうだこれ。手ぶらじゃなんだから」と、ケーキが入っている箱を彼女に手渡した。
『ありがとうございます。何が入ってるのか楽しみ~ ♪( ´▽`)』
それから彼女に、「どうぞ~」と言われてその後を付いて行くと、20段ぐらいある階段を上ったその先に玄関があるみたいだった。
「駐車場に車を入れたけど、良いの?」
『はい、今はもう使ってないので』
「ふ~ん、所で遥の家って大きいね」
『そんな事ないですよ』
「そ、そう?でもまぁ、僕が住んでいるハイツに比べたらね」
階段を上りきると、遥が玄関のドアを開けてくれた。
『どうぞ、上がって下さい』
「お邪魔します」と、そう言って僕は玄関に1歩足を踏み入れた時、彼女が僕の背後の誰かに手を振った。
手を振る先に僕も目を向けると、見た事のある女性が階段を上がってきた。
『あっ、母です』
お母さん?えっ、嘘。さっき道を尋ねた時の女性・・・だよな。
その女性は、買い物をしてきた食料品を重たそうに両手に持ち、階段を1歩1歩踏みしめるように上って来た。




