77話 遥の決意
出迎えてくれた時、何だかいつもの遥と様子が違うなって感じたのはこの事だったのか。そう言えばアルバムは、ダンボール箱に1つにまとめていたからなぁ。
僕は一瞬戸惑ったものの、遥の問い掛けに対して素直に答える事にした。
「若しかして、アルバム見たから?」
『うん』と彼女は頷く。
「う~ん、そうだなぁ。性格は積極的で直ぐ誰とでも打ち解け合うし、上手い事いかなかったとしても、前向きに考えるプラス思考だったね、麻衣は」
体の向きを変え、右腕を枕にしながら、大学時代の頃の麻衣とのやりとりを思い出して答えた。
「そんな感じしました。亜季さんもそうですけど、写真を見てると元気一杯って言うか、どれも笑顔でした」
「僕とは正反対だからね」
『そんな事ないです!!だって私を助けてくれたじゃないですか』
「それは、麻衣の影響かも。僕は元々、学生の頃から人前に出るのが苦手だし」
『でも、皆んなの前に立って、学科やってらっしゃるじゃないですか』
「それは、事故があってからこの仕事を選んだし、皆んなに聞いてもらいたいと思ってるからね」
寝転がっている遥の顔を見ると、何だか浮かない表情をしているのが見てとれた。
「気になる?」
『少し』
「でも、遥は遥で良い所もあるし。麻衣は麻衣で良い所もあったし、もっとこうしたらって所もあったよ。僕だって。ましてや長谷川さんなんて特にね」
最後の長谷川さんの所で僕は苦笑いすると、それを見た彼女も微笑んでくれた。
「だから遥は、周りの事は気にせずに、遥なりにやっていけば良いんじゃない?」
遥は、横にしてた体を上に向け、ぼんやりと天井を眺めていた。
そうですよね。他の人がどう思われようとも、自分は自分だし。声が出ないからといって後ろめたい気持ちにならずに、声が出てた頃の自分にもう1度戻ろう。そして又いつか声が戻ったら、私なりのやり方で麻衣さんの事を想っている片瀬さんと向き合っていきます。それで良いですよね、麻衣さん。
写真に写っていた麻衣の事を思い出して、そう自分に語り掛けた。それから、もう1度片瀬の方に体を向けてみる。片瀬は持っていたスマホを落とし、右腕を枕代わりにして、いつの間にか気持ちよさそうに眠りについていた。
あらあら、疲れてたんですね。それでも話しを合わせてくれて、ありがとうございます。
布団から出た遥は、腰まで掛けてあった片瀬の掛け布団を、上半身を覆う様に引っ張った。
おやすみなさい、片瀬さん。また明日。
そう言って、片瀬の頬に軽くキスをし、電気を消して遥も自分の布団に入って眠りについた。




