65話 2人の対面 パート2(2)
「おはよう、遥さん」と、亜季はおしとやかな声で挨拶してから軽く会釈をし、遥も目の前の亜季に深々と頭を下げた。
僕は亜季の直ぐ後から玄関まで来て、遥の荷物を受け取り、彼女を部屋に招き入れた。
「道分かった?」って僕が聞くと、遥はコクっと頭を下げた。
亜季は、部屋が綺麗なのと、遥の荷物の多さで何となく察しがついた。
う~ん。2、3歩リードされてるってとこかな?て言うか、間が悪いタイミングで来ちゃたわね~。
「いや~、片瀬さんの体調の様子も兼ねて、この前の風邪のお世話として、ランチを奢ってもらおうかなぁ~なんて思って、夜勤明けに来たんだけど・・・、お邪魔だった?」
遥は、話したい内容を素早くスマホに文字を入力する。
「良いですね。私も朝ご飯食べずに自転車をこいで来たのでお腹ペコペコです。行きましょう、亜季さん」
遥と亜季は、お互い目を合わせてから頷き、僕の方を向いて、頭を下げたと同時に「ご馳走になりま~す」と言って、2人はケラケラと笑いだした。
あれ?この2人、今日初めてに近いぐらいのはずなのに何でこんな仲が良いんだろ。
この前の風邪で、僕が寝ている時に2人がお互いの事を話していた事については、後で知る事となる。
昼ご飯を食べるには少し時間が早いきもしたが、開店時にはいつも行列が出来るラーメン屋さんに、亜季が1度は行ってみたいと言うので、それから僕等は、直ぐに出掛ける準備をして車で行く事にした。
今は話す事が出来ない遥を気遣ってか、車の中では亜季が独演会みたいにずっ~と話しをしていた。
緊急治療で酷い人もくれば、救急車をタクシーと勘違いしている人もいるのよって怒りながら言う時もあった。
「その他には欠伸をしたら顎が外れてしまって、そのまま治療したら痛いって言うもんだから、部分麻酔して痛みを取り除いたんだけど、顎が入った瞬間ホッとしたんでしょうね、急に寝出したし。その人」
僕は、信号待ちで「大変だね」って亜季に言うと、「あっ、そうそう。極めつけ面白い話しがあるんだけど聞いてくれる、遥ちゃん」
「うん」と遥は頷くと、興味津々で亜季の次の言葉を待っていた。
「この前ね、凄い熱でうなされていた人がいたの。熱で汗だくだし、シーツも変えて身体もお湯で絞ったタオルで拭いて、服も着替えさしてあげたの。私は、汗だくでお世話してるのにその人は「スゥ~スゥ~」と寝息をたてて気持ち良く寝てるもんだから、つい悪戯心が出てしまって・・・」
そこまで亜季は言うと、「クックックックッ」と笑いを堪えて次の言葉を遥に話した。
「人差指でその人のあそこを「ピンッ」と弾いたの」
亜季は、その後お腹を抱えて笑いだした。
遥は、まだ分からなかったらしく「うん?」と首を傾げた。
目に涙を浮かべながら亜季は、人差指を下半身向けて弾く真似をした。
遥は両手を口に当てて、「えっ~」と言う表情をした。
「そしたらその人、『う~ん』と言って寝返りしたのよ~」
今度は足をバタバタして「もうげんか~い」と言って大笑いしだした。
若しかしてその話し・・・と思い、亜季の方を向くと、彼女は、「片瀬さん、信号青、青」と言われたので慌てて車を動かした。
ルームミラー越しに亜季を見ると、彼女もルームミラーを見て勝ち誇ったかの様に「ウシシシシ」と笑っていた。
それから彼女は、ルームミラーから目をそらすと外の景色を見ながらニヤッと微笑んで、「ウッソピョン」と小声で呟いた。




