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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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50話  河川敷にて

 それから僕等は、再び車に乗り込みショッピングセンターを後にすると、遥の運転で教習所の近くにある河川敷の駐車場で車庫入れの練習を繰り返し行った。


 夕方の17時に駐車場の出入り口の門が閉まるので、その近くに車を止めて彼女とひと時の会話を楽しんだ。


「遥、凄い上手になったね。もう横で黙ってても大丈夫じゃないか。帰ったらお母さんに褒められたって言ってみたら」


 彼女は、スマホを取り出し文字を入力する。


『いえいえ、まだまだですよ。自転車の側を通る時なんて、「お願いだから、右に出てこないで」とか、「急に右折して来る車があれば、直進優先!!って1人で焦ってましたし』


「うん、しってる」と、僕は笑って答えると、彼女は、パシッと僕の腕を軽く叩いた。


 僕は叩かれた腕を擦りながら、「ねぇ、ちょっと外に出て見ない?」と誘ってみると、彼女は、「うん」と頷いた。


 車から降りた僕等は、2人並んで堤防沿いの綺麗に刈られた後の芝生の上に腰を下ろす事にした。

 

 土日は、バーベキューや、スポーツを楽しんでいる人でごったがえしているのに、今日は平日の夕方もあって、ランニングをしている人や、犬の散歩をしている人、壁打ちのテニスをしている人が疎らにいてるだけだった。


「ここから座って夕日が沈んでいく景色、好きなんだぁ」


 空には淡い水色が広がっているけれど、太陽が沈もうとする場所は、オレンジ色に染まりかけている。

 空中では、2羽の鳥がさえずりながら飛んでいて、心地よい風が僕等の間を、ふわぁ~と通過した。


『綺麗ですね』


「うん」と、僕は静かに頷く。


 沈んでいく夕日を見ながら、少しの間沈黙が続いた。


『片瀬さん、1つ聞いて良いですか?』


「なに?」と首を傾げた。


『片瀬さん、一緒に居てくれるのは嬉しいんですけど、喋る事が出来ない私といて楽しいですか?』


「あ~、その事。う~ん、これは僕の考えだけど、人は誰しも何らかのコンプレックスを持ってると思うんだよね。他の人からすると「えっ~、そんな事」って思うかもしれないけど。でも、その人からすると重要で、他の人からはあまり触れられたくない部分なんだよね」


『うん』と、遥は頷く。


「だから人間は、お互い助け合って生きていかなければならないし、僕は、遥とそう言う関係、お互いの欠点を補っていける人と僕はいたい」


 膝を抱えて僕の方を見ながら、遥は黙って聞いていた。


「もちろん、あれだよ。遥の容姿も好きだよ」と、彼女の顔を見て微笑んだ。


 遥は、少し照れた顔で頷く。


「遥の声がこのまま聞けなくても良いって言ったら嘘になるけど、でも僕はこれから遥と一緒に生きて行こうって思えた人だから・・・。だから、それは気にしなくても良いんじゃない」


 彼女は僕の身体に静かに寄り添い、そして、右肩に頭をのせた。


 いつしか僕等の目の前には、真っ赤な夕日が街に溶け込んで行く光景が見てとれた。





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