47話 さぁ、練習開始!!(1)
僕は、運転する前に遥が免許証を携帯しているのか、初心者マークも持ってきたのかを確認した。
彼女は『あっ、忘れた』と言う表情をして、家に取りに帰ろうとした時、玄関から出て来た40代半ばの女性が初心者マークを持って石段を下りて来た。
「もう、玄関に置きっぱなしだったわよ、遥」
初心者マークを貰おうと手を差し伸べた遥に対して、その女性は、遥の頭の上にポンッと初心者マークをのせた。遥は、頭の上に置かれた初心者マークを受け取り、その女性に苦笑いを浮かべて『ありがとう』と口を動かした。
「もう、おっちょこちょいなんだから~、遥は。事故無い様にね」
その女性は、僕の方を見て「片瀬さんですね、娘がお世話になっています」
「はい、いえ、こちらの方こそ、お世話になっています」
遥のお母さんにお辞儀をして顔を上げると、右目の泣きぼくろに目がいった。
あれ、何だろう。初対面の筈なのに、どこかで会った事があるような?
う~ん、気のせいかな。1年間で教習生を大体2400名くらい担当するんだから、他人のそら似かな。
「この子どんくさいから、厳しく教えてやって下さい」
はにかんだ表情を見せてた遥は、『大丈夫だからあっちに行ってて』と、言いたげにお母さんの両肩を持って玄関の方に向きを向かせた。
お母さんはあんな事言ってるけど、遥の事、心配してるんだなぁ。2人を見てると何だか微笑ましい。
そう思いつつも、遥に長谷川さんの喋り方を真似して、「厳しくやんで~」と、握りこぶしを見せ、ふざけて言うと、彼女も負けじと「ベェ~」と、ちょびっと舌を出して対抗してきた。
はははは、うん、そうそう。遥とボチボチだけど、何か良い感じになってきた。と、そんな事を実感しながら、僕等は車に乗り込み練習を開始した。




